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「…」
「…」
眠そうな目の蛙を見つけた2人。
「え。なにあれ」
「あぁ…。なんでまた…」
ダインが後頭部を掻く。
「めんどくせぇ〜〜〜〜〜」
めちゃくちゃ伸ばした。
「なに?…なに?」
「あそこにいるやつ、あいつはヒノキエルガ。あいつもイグニルと同じで魔法を使える」
「マジか!?」
「しかもイグニルと共存関係にある」
「え。蛙なのに?」
「そ。ただカカシジのオスメスみたいに常に一緒じゃなくて
たまたまイグニルがオレたちリンピアドールと戦ってる場面に遭遇したらサポートするくらいの存在だ」
「え。じゃあ」
ダインが「やれやれ」という表情で頷き
「運がいいんだか悪いんだか」
と言う。
「マジかよ」
と少しガッカリしたヲノだったが、どこか心の中には逆境こそおもしろいという気持ちがあった。
ヒノキエルガがまた鳴き始める。すると上空を飛んでいるイグニルの翼の炎が倍ほどの幅に広がる。
「デカ!」
「あぁ…」
現実逃避するような目をするダイン。
「そんなんだったらあいつから先にやればいいんだよな!」
ヲノがブレードを持ってヒノキエルガに走っていく。
「あ!おい!」
ダインが声をかけるがもう遅い。
「悪いが容赦なくいかしてもらうぜ!」
ヲノはジャンプし、斬りつけようとする。そのヲノに気付き、そのヲノに向かってヒノキエルガが鳴く。
その鳴き声の直線上にいるヲノに空中で波動が襲った。ヲノが空中で後ろに吹っ飛ぶ。
「ヲノ!」
助けに行こうとしたダインだが、ダインの後ろからダインに向かってイグニルが滑空してきた。
なので、イグニルに対応しないといけない。しかもヒノキエルガによって強化されたイグニル。
翼の炎の横幅が倍になった、炎でできた翼がダインを通過する。
「あちいぃ!」
ヲノは空中でヒノキエルガの鳴き声の波動を喰らったが空中でバク宙し着地する。
「くっ…」
ヒノキエルガも自分が攻撃対象となったことに気付き、自分への魔法をかける。
まずは体を大きくする。体が小さければ攻撃が当たりづらいが、その分自身の攻撃範囲も狭い。
イグニルのように敵のいない空中に逃げられればいいがヒノキエルガはできない。
なので体を大きくし、物理攻撃の攻撃範囲を広げる。
「うわっ」
今までは見下げるくらいの大きさだったのが、ヲノの背丈と同じくらいに大きくなる。
「的がデカくなってか」
ヲノがブレードを構えてヒノキエルガに斬りかかる。
しかし物理攻撃も通用するようになったと考えたヒノキエルガは
右前脚を右斜めに上げて左斜めに振り下ろす。
ヒノキエルガの右前脚はヲノの左二の腕にあたり、右側へ吹っ飛ぶ。
しかし幸いなことに、ヒノキエルガは魔法を使うマナトリア。
物理攻撃の攻撃力は低い。すぐに立ち上がるヲノ。
「いってぇ」
その様子を見てまた自分に魔法を付与するヒノキエルガ。
「今度こそ1撃喰らわせてやる」
またヒノキエルガに向かって走り出すヲノ。
ヒノキエルガは今度は左前脚を左斜めに上げて右斜めに振り下ろす。
ヲノは右側にスライディングをしてその攻撃をかわし
ヒノキエルガのぷよぷよとした水っぽい左脇腹を斬りつける。ヒノキエルガが少し声を上げる。
「効いた…か?」
ヒノキエルガがその場で大きくジャンプした。ヲノが大きな影に包まれる。
「ヤベッ」
ヲノは右に飛んでローリングする。
ベチャッっというのか、グチョッっというのか、少し水っぽい音をさせ地面に落ちるヒノキエルガ。
手足を伸ばしたまましばらく動かないヒノキエルガ。
「…」
少し様子を見るヲノ。
「え。自爆?」
と思ったがしばらくしたら立ち上がった。
「え。今の攻撃チャンスだった?」
絶好の攻撃チャンスを逃したヲノ。
一方ダインは苦手なイグニルと対峙している。
ただでさえ苦手なイグニルに加え、そのイグニルがヒノキエルガによって強化されている。
「最悪」
最悪である。しかし強化する魔法も永続ではない。
しばらくしたら幅が倍ほどになっていた翼を覆う炎が元の幅へと戻った。
「効果が切れたか」
しかしイグニルが苦手なことには変わらない。滑空してきたイグニルにハンマーを振り下ろしても
相変わらずハンマーの風圧を利用して、揶揄うように前中して、そのまま上空へ羽ばたくイグニル。
「くそっ!」
「もっかい!もっかいジャンプして」
バカな願いをするが、ヒノキエルガはヲノに向かって鳴き声を発する。その鳴き声が波動となってヲノを襲う。
ヲノはブレードでガードする。鳴き声の波動はヲノのブレードを震わせる。
波動によってのダメージを防ぐことに成功したヲノはガードの構えを解いて、ヒノキエルガに向かって走る。
ヒノキエルガが両前脚を振り上げ、走ってくるヲノに振り下ろした。
ダインがハンマーを振り上げたことによって
ヲノがヒノキエルガの両前脚に下敷きになって大ダメージを負うのを回避できた。
「…。サンキュダイン!」
「おう。でもイグニルの処理もまだだけどな」
と空を見上げる。翼に炎を纏ったイグニルが円を描きながら飛んでいる。
「とりあえずどうする?」
「イグニルに気を配りつつ、まずはこいつから」
とダインがヒノキエルガを見る。
「ま、そうだな」
ヲノもヒノキエルガを見る。ダインがハンマーを右から左にスイングする。
スイングした先はヒノキエルガの左前脚。
メチョッっというか、水っぽい音と共にヒノキエルガの左前脚が右側に流れる。
ヲノはヒノキエルガの右前脚を斬りつける。ブレードで斬りつけられた右前脚を動かそうとするが
左前脚が宙に浮いている状態だったのでバランスを崩して倒れた。
「もらい!」
ダインがハンマーを振り上げて思い切りヒノキエルガの頭に振り下ろす。
ドガーン!という音に少し水っぽい音が混じっていた。
相当なダメージを与えたはずだが、身を大きくしたというのに加え
防御力を上げる魔法を施していたので、致命傷という攻撃にはならなかった。
ヒノキエルガは両前脚を地面について体勢を立て直す。
ヒノキエルガが鳴く。ヒノキエルガが緑色の光に包まれる。
「ヤバい!回復してやがる!」
ダインが追撃をしようとしたが、イグニルが高度を落としてヲノとダインに向かって熱波を送った。
熱波攻撃を背中に受け、ダメージを喰らう2人。
「…っ。あじぃ」
「背中が焼ける…」
ヒノキエルガが右前脚を左にスイングする。ヲノとダインが飛ばされて転がる。
「めんどくせぇな」
「ほんとだよ」
「でも…いいな」
ヲノがニヤッっと笑う。そのヲノを見て
「ふっ」
っと鼻で笑い
「っしゃ。今日生き抜いて、おっちゃんと飲み明かすぞ」
とハンマーを担ぎ直す。
「おうよ」
ヲノもブレードを構える。ヒノキエルガが鳴く。
するとイグニルの翼に纏っていた炎の幅が倍ほどに広がる。ヒノキエルガがもう2回鳴く。
「黙らっしゃい!」
ヲノがヒノキエルガに向かって走る。ヒノキエルガはヲノに向かって左前脚を振り下ろす。
ヲノは振り下ろされた左前脚を華麗に交わし
その左前脚を蹴って飛び上がり、ヒノキエルガの脳天に向かってブレードを振り下ろす。
ヒノキエルガは鳴き声をあげる。そこそこのダメージを与えられたが、ヒノキエルガはまだ生きている。
ダインも追撃と思ったがイグニルの鳴き声に振り向く。イグニルがヲノダインに向かって滑空してきていた。
ヲノはブレードで、ダインはハンマーでガードの構えを取る。
しかし、あくまでも物理防御であって、魔法防御ではない。
イグニルの翼の炎の延長、炎でできた翼がヲノとダインを通り過ぎる。
「あっ!」
「っつっ!」
2人の防具に炎が燃え移る。2人は火を消すように踊る。
その炎を纏った2人にヒノキエルガが両前脚を振り上げ、叩き潰すように振り下ろす。
2人は交わすためにローリングする。するとローリングのお陰か
はたまたヒノキエルガが両前脚を振り下ろしたときの風のお陰か、2人の防具に燃え移った炎は消えた。
「え。バカじゃね?」
「なんか熱さ増してたな」
「わかる!」
「あいつ攻撃力も上げてたのか」
そこそこにダメージを負った2人。
「やっぱまずはヒノキエルガからだよな」
「ま、そうかな」
ということでヒノキエルガを先に浄めることに重きを置くことに。
ヒノキエルガは先程のヲノのブレード攻撃でだいぶダメージを負っていた。
ダインはまずヒノキエルガの右前脚をハンマーで叩き、ヲノは左前脚をブレードで斬る。
するとヒノキエルガはバランスを崩してベタンと前に倒れる。
「チャンス!」
ダインはヒノキエルガの顔に向かって右から左に思い切りスイングする。
するとヒノキエルガは思い切り回転する。
「タイミングを見計らって」
タイミングを見計らってダインは今度は左から右へスイングする。
するとヒノキエルガの顔にクリーンヒット。回転の勢いも相まって大ダメージ。
「トドメ!」
ヲノはヒノキエルガに乗っかり
「浄め、完了!」
と言いながらヒノキエルガの顔にブレードを突き刺した。
ヒノキエルガの後ろ脚も力を失い、まるでスライムのようにペタンと脱力した。
休む間も与えぬよう、イグニルがヲノとダインに向かって滑空してくる。
ヒノキエルガは浄化できたが、イグニルにかけられた魔法は持続時間が残っている限りは無くならない。
なのでイグニルの翼の炎も未だに大きいまま。ヲノもダインもガードの構えを取ったが、イグニルの炎は魔法。
物理防御では防御しきれず、同じように防具に燃え移り、その炎を消すために踊りまくる2人。
その間に羽を休めるために地上に降り立つイグニル。
通常時、翼を燃やしていないときは羽を休めるため、木の枝に留まったりするのだが
翼が燃えているときにそんなことをしたら大火事である。
防具に燃え移った炎を消し終わった2人。なかなかにダメージが蓄積している。
しかし、このまま尻尾を巻いて逃げるという選択肢はない2人。焦げ焦げになり、白い煙が上がっている2人が
「チャンス!」
「おう!」
と言いながら地上にいるイグニルに向かって走っていく。
空をメインのバトルフィールドとしているイグニルだが、地上で戦えないことはない。
地上で戦えなかったら、羽ばたくのに疲れて地上に降り立ったが最後になる。そんなことはない。
イグニルは走ってきた2人に対し、右の翼を振り上げて左斜め下に振り下ろす。
炎の剣がヲノとダインを襲う。これも物理攻撃ではないのでまた防具に炎が燃え移る。
炎を消したいが、地上に降り立っている今を逃したくない2人は攻撃をしかけようとする。
ダインがハンマー振り上げ、思い切り振り下ろす。ドゴーン!という轟音が響き、地面が揺れ、ヒビも入った。
イグニルがいた地面がボコンと凹んでいた。ヲノもダインも仕留めた。と思った。ダインがハンマーを上げる。
そこには翼で頭を覆っているイグニルがいた。その翼は未だ炎を纏っている。
「くそ!」
「マジか」
「たぶんヒノキエルガがイグニルの防御力も上げてたんだ」
イグニルがガードを解いた。イグニルがその場で翼を思い切り広げ、その場で回転を始める。
回転の速度がどんどん上げっていく。するとイグニルの翼の炎が回転によりどんどんと長く伸びていく。
その独楽のような攻撃を喰らうヲノとダイン。さらにイグニルは回転したまま羽根を放った。
ヲノとダインに突き刺さる。防具が燃えた2人がその場に膝をつく。
イグニルの回転が徐々に遅くなる。止まったと思いきや、その場にへたり込むイグニル。
それを見逃さなかったヲノ。ブレードを地面に突き刺し、杖のようにして立ち上がり、ダインを軽く蹴る。
「ダイン。イグニルに向かって走ってって、そのまま前に打ってくれ」
と言ったヲノはイグニルに向かって走っていったと思ったらイグニルを通り過ぎて奥まで走っていく。
そのヲノを見てダインも立ち上がり
「うっしゃー!」
ハンマーを構えてイグニルに向かって走っていく。
ダインはヲノに言われた通り、走った勢いのまま右後ろに構えたハンマーを左に向かってスイングする。
もちろんイグニルに向かって。回転でダウンしているイグニルはガードすることなく
まともにダインのハンマーを喰らい、後ろに吹き飛んだ。
「もらい!」
吹き飛んだ先には、イグニルに向かって走ってきているヲノが。
ヲノはブレードを立ててそのまま走り続け、立てたブレードにイグニルがあたるようにした。
ブレードがイグニルを貫通し、イグニルが地面に転がり落ちた。
そして2人とも走ったお陰で燃えていた防具は鎮火できていた。
そのまま歩き続けた2人はハイタッチしてから芝の上で仰向けで倒れた。
「…あぁ〜…。死ぬかと思った」
「ほんと…。体力ギリギリだろこれ」
「だな」
しばらく陽が落ちかけていた空を見ながら休憩し、ヒノキエルガとイグニルを抱えて城下町に戻った。
ヒノキエルガとイグニルを素材屋に卸して
2人は「Neutral Keeplay(ニュートラル キープレイ)」と書かれた看板の施設に入った。
「Neutral Keeplay」とはNeutral Keeperが働いている場所である。
主に街の秩序を守るために警邏にあたる部門、怪我をしたヒトたちを治療する部門がある。
ヲノとダインは治療してもらいにやってきた。治療は基本的に魔法が使えるエルフ族が担当する。
メモトゲ家の末っ子としてNeutral Keeperに知られているヲノは
バレないようにフードを深々と被り、目元を隠しながら治療してもらった。
その後いつも通り居酒屋へ行って、武器屋のおっちゃんと合流して
「「「かんぱーい!」」」
乾杯して夜ご飯を共に食べた。
「いやぁ〜そうか。ヒノキエルガがいたか!それはそれは運がいいな」
と笑いながらジョッキを置く武器屋のおっちゃん。
「運悪いだろ」
ダインが肉を食べながら言う。
「ま、実際今までで一番ピンチだったよな」
ヲノがお酒を飲みながら言う。
「ま、そんなピンチ切り抜けたんならもうある程度平気だろ。ダイン、明日からはどうすんだ?」
むしゃむしゃ肉を食べていて答えられないダイン。肉を飲み込んでから
「そうだなぁ〜」
と悩むダイン。
「もうちょっとムアニエル周辺で浄めるかな。まだ浄めてない種類もいるし。
んで…ま、大陸越えるのも考えてる」
「おぉ〜」
「ダインは別大陸行ったことあんの?」
「あぁ。1回だけな。別大陸にしかない素材を買いに行ったことがある。
でも、素材屋で買ったから、向こうのマナトリアとか知らないんだよな」
「知らないのか」
武器屋のおっちゃんが意外そうな顔をしてジョッキを持ってお酒を飲む。ジョッキを置いてニヤッっと笑うと
「じゃあヲノと同じで楽しめるかもな」
と言った。
「おぉ〜」
と楽しみさが漏れ出た声を出すヲノ。
「でも…あれだな。Neutral Keeperのエルフのお姉さんに治療されるのもいいな」
とヲノが呟く。
「ん!だろ!?」
ダインが激しく同意する。
「お前ら、下心でNeutral Keeplayに行ったな?」
「違う違う!ガチで火傷とかしてたから!」
「そうそう!」
「ほんとかよ」
と3人で楽しく飲み明かした。