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#うりさん
ろのみ🩵🫧
43
19
#年上彼氏
おうか

252
午前中に湊が作ってくれた弁当を持って、大きな公園の広場の芝生に、レジャーシートを広げた。
もう初夏を感じさせる陽気に、木陰でも暑いくらいだ。
木漏れ日で、顔がまばらになった湊が2人分にしては多い弁当を広げた。
色とりどりの……綺麗な……芸術作品みたいな。凄いな。売れるぞ、これ。
「得意じゃないって……」
「うん、得意じゃない。はい」
そう言って割り箸を渡される。
「頂きます」
……なるほど、うん。……なるほど。
湊を見ると、微妙な顔をゆっくりと上げ、みるみる眉が下がり出す。
「……見た目が、旨いな」
「そう、盛り付け、すっごい得意なの」
「味見は?」
「お腹いっぱいになるから、しない。食べるときの楽しみにしたいの」
「あ、これ旨い」
「ウインナー……」
彼女は食が細い。今度から、味見は俺がしよう。しかし、綺麗だな。見た目は。
「くっ」
我慢したけど、吹き出した。
「くっくっく……あはは! 」
もう、可愛い。可愛い過ぎるな。
あ、ヤバい。
涙目になってそっぽを向く湊に、フォローを入れる。
いや、時間も掛かってたし……。
「作ってくれて、嬉しい」
「得意じゃないって言った! 盛り付けが好きなの! 」
盛り付けはセンスってやつだろうな。家も統一感があって、それでいて動線も上手く考えられていた。独特の感性。
ただ、味付けは……うん、苦手なんだろう。
「あ、ほら、インスタ映えするよ」
そう言って、携帯で写真を撮った。
……あ、そういやイケメン眼鏡は元気かな。
「そんな、二宮くんみたいな事を」
ああ、二宮っていうんだ、あのインスタグラマー。
「はは! そうだな。フォローしてやるか? 」
「検索したら、出るかな」
「あー、どうかな? アカ名、本名かも分からんな」
「公式とかで出てたりして」
面白半分で検索しようかと尋ねる。
「下の名前は?」
「えーっと……」
湊が、スマホをスクロールして確認する。
「あ、孝之。案外、普通の名前」
「……」
間違いすぎだよな。たまたまにしても。
「いた? 」
「いや、探してない」
「なに、それー」
何だろう、今になって腹が立ってきた。無性に。
「湊、温泉でも行かないか? 」
あの日、湊が果たす気がなかった約束。
「……」
「海外とか、アクティブな旅は行くだろ? 」
「……」
「いや、だから……“そういう旅”じゃないだろ! 」
彼女の顔から何かを察する。
「……土日でもいいけど」
「いいの? 子供の運動会とか……」
「湊~……」
「冗談だってば」
湊の仕事が始まる前に……1日くらい休み取れるだろう。
「いつにしようか」
「生理かぶらない辺りで」
「ああ、じゃあ……排卵日狙うか」
「……」
物凄く睨まれて
「冗談だよ。怖いな」
と、言うしかなかった。と言っても、もう日にちはそんなになかった。
「あ、次の金曜くらいだな。湊、もう仕事だもんなぁ。生理は? 」
「大丈夫」
「そこ、何とかする。金土と行こう」
温泉といえば、冬の方が雰囲気は出るのだろうが。5月の末とあれば、宿も空いてるだろう。
……先に仕事休めるかだな。休むけど。
「いーよ、無理しなくて。忙しいでしょ」
まだそんな事を言う。
「取るから。休みも宿も。移動に時間かけたくないから、近場ね」
「遠くが定番じゃないの? 誰にも会わない」
流石に苛立ちを覚え、その場に押し倒す。
「……まだ言う? 」
湊を見下ろしてそう言った。
「……ごめんなさい」
そう言った湊の目に涙が溜まりだして、そのまま、そっと頬にキスして手を離す。そんなに力は入れてはいない。
けど……怖かった……か。
逃げるように引っ越しまでして、よっぽどだったのだと、思う。
だが、こうして、誤解も解けたのだし。
「行きたくないのか? 」
「忙しいの知ってるもん」
「行きたくないのか、聞いてる」
「……行きたい」
「ん、予約する」
「うん……」
傷は……深いな。
……真っ直ぐで綺麗な彼女を、こんなにも傷つけた過去の男達に憤りを感じる。自分にも。だから、早く彼女が本来の彼女に戻るように。甘やかすつもりだった。
「何、食べたい? 」
「出世……舟盛りとか? 」
出世?
「いいね」
「日本酒」
「いいね」
「浴衣」
「いいね」
「ぶはっ」
は?
「何だよ」
「似合うね」
「……絶対褒めてない」
「それも含めて、楽しみ」
……どれだよ。
「そうだな」
いいか、もう。先に宿を予約しよう。休もう。長らく有給も取っていなかった。何とか、なる。つか、何とかしろよ。
まだ、なのか、またなのか……涙目の湊を抱き寄せる。泣かせないって誓ったのになー。
「泣き虫」
「……だってさ、笑わすんだもの」
……そっちかよ。で、笑わしたつもりないけどな。
「露天風呂付きの部屋ね」
「うわー……」
「あんなこと、こんなこと、しような」
何を想像したのか、真っ赤になった湊に口を付ける。あちこちに……。
「したいなー……でもなー、会う度とか言われるしなぁー……」
「あのねぇ、その一人言……ってか心の声?」
「はは! 冗談だよ」
今日はこれくらいにしておこう。
身体だけ……そう思われるのは本望ではなかった。それに、なくったって構わない。
翌朝も、俺と居てくれるなら。
コメント
2件
第12話、めっちゃ良かったです…!😭💕 湊さんが作ったお弁当、見た目は芸術品なのに味付けが…っていうギャップがもう可愛すぎて!笑 「俺が味見しよう」って思う主人公の優しさにキュンとしました♡ それに温泉の約束、過去の傷を感じさせるシーンもあって切なかったけど、最後の「行きたい」が聞けて本当に良かった…!! 「泣き虫」って言いながら抱きしめるの、尊すぎて叫びましたわ…!!🌸