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あらやだっずいぶん積極的になったわね若井さぁん
💞第9話:特別な甘さの証明
涼架side
若井と「無条件の愛」という名の新しいおそろいを手に入れ、日が傾き始めた公園を後にした
繋いだ手は、どちらも汗ばんでいるけれど、離すのが惜しい。
若井は相変わらず照れくさそうにしているが、その表情は安堵と幸福感に満ちていた。
「ねぇ、涼ちゃん」
公園の出口付近、街灯が灯り始めたベンチの横で、若井が止まった。
「どうしたの?」
「いや、さっき涼ちゃんが言ってくれたこと、まだ信じられないっていうか……夢みたいだなって思って」
若井は照れ隠しのように、繋いでない方の手で頭を掻いた。
「僕の言葉は全部本心だよ。夢なんかじゃない。僕は若井のことが、誰よりも大切で、好きなんだ」
僕がまっすぐ伝えると、若井は頬を染めて、僕の目をじっと見つめ返した。
「うん……俺も。俺も、涼ちゃんが好きだよ」
彼の口から、改めて「好き」という言葉が出てくるだけで、胸が高鳴る。
「あのさ、正直言うと、俺、涼ちゃんがいちごミルクを飲まなくなった時、めちゃくちゃ焦ったんだよ」
「僕が飲まなくなった時?でも、僕、毎日飲んでたよ」
「え、そうなの?」
若井は目を丸くした。
「うん。だって、若井が飲まなくたって、僕の気持ちは変わらないから。僕が飲むのが若井への愛しさの証明だ、って元貴に言われたんだ」
若井は僕の言葉を聞き、少し目元を潤ませた。
「そっか……。涼ちゃんは、俺が逃げてる間もずっと『おそろい』を守ってくれてたんだね。ありがとう」
若井はそう言って、繋いでいた僕の手を、そっと自分の両手で包み込んだ。
「ねぇ、涼ちゃん。俺、今日、もう一度だけ、いちごミルクが飲みたい気分なんだ」
「え?コンビニまで行こうか?」
「ううん、違う」
若井は首を横に振った。街灯のオレンジの光が彼の横顔を優しく照らす。
「俺が飲みたいのは、コンビニの甘さじゃない。涼ちゃんのくれる、特別な甘さ」
若井はそう言うと、僕の顔に手を添え、優しくけれど躊躇なく、顔を近づけてきた。
僕の心臓が、耳元で響く。呼吸さえも忘れてしまいそうな、一瞬の静寂。
最初に触れた唇は、柔らかく、まるで挨拶のように軽い。
だが、若井はすぐに離れず、僕の顔をそっと包み直した。
「……涼ちゃん、もっと深く。俺が今まで逃げてた分、全部、返してほしい」
若井はそう囁くと、瞳を閉じ、再び僕の唇を探る。
今度は、僕の心の奥まで届くような、熱を帯びたキスだった。
彼の手が僕の頬を包み込み、引き寄せられる。
頭の中を占めていた全ての雑念が、彼のキスによって塗りつぶされていく。
僕は彼に応えるように、繋いでいない方の手をそっと彼の背中に回した。
「はぁ……っ、若井」
わずかに息を離した瞬間、僕は喘ぐように若井の名前を呼んだ。
若井は僕の額に自分の額をくっつけ、深く、深く、息を吐き出した。
「ダメだ、涼ちゃん。想像してたより、全然甘い」
彼の声は、熱っぽく、僕にしか聞こえないほどの囁きだった。
「僕だって、頭がくらくらする。これが、僕の無条件の愛の味だよ」
「無条件の愛の味……」
若井は僕の顔から手を離し、今度はそっと僕の指を絡め取った。
「涼ちゃんの優しさに甘えていいんだって、やっと心と体が理解できた。でも、一つだけ、俺のわがままを聞いてくれる?」
「何?」
「このキスが、俺たちの新しいルーティンになるのは、ダメかな。練習後のいちごミルクみたいに、毎日、涼ちゃんに俺の不安を全部消し去ってほしい」
僕の頬は、彼の言葉とまだ残るキスの熱で、火照っていた。
「ダメなわけないじゃないか。若井がそれを望んでくれるなら、僕にとってらこれ以上の愛の証明はないよ」
僕はそう言うと、自分から若井の頬に手を添え彼の唇に、もう一度、短いキスを落とした。
「これからも、ずっとおそろいだよ、若井」
若井も嬉しそうに目元を緩め、僕の頭を優しく抱き寄せた。
次回予告
[🌸甘さは、二人で育むもの]
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