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言いたいことは山ほどあるが、何から言うべきか決められないまま、教室の彼女の隣の席に座った。先に席に着いていた彼女の方から話しかけてきた。
「久しぶりだな。しばらく会えなくて寂しかった」
「会えなくて寂しかった? 友だちじゃあるまいし」
「友だちではないが、恋人だから友だち以上の関係のはずだ」
恋人になった話は無効だと言いたいのに、どうやら彼女は無効にする気はさらさらないようだ。リクという男につけられた心の傷を癒やすために、僕は彼女の恋人になるように強制された。恋人にならないなら二人で屋上から落下しようと脅されたのだから強制されたも同然だ。
そして脅されて強制された約束は無効。民法の90条にそう書いてある。学校を休んでいるあいだに調べておいた。契約書という書面があっても無効なのだから、今回のような恋人になるという口約束ならなおさらだ。
「そのことで話がある」
と僕が言いかけたところで、なぜかリョータが現れた。リョータは僕でなくなぜか彼女に話しかけた。
「め……霊山寺さん、夏梅の友だちとしてお願いがあるんだ」
女神と言いそうになったのを見て吹き出しそうになったが、すぐに笑えなくなった。