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「……あいつから、聞いたんだろ? バンドをやめたいって……」
シュウが、見たこともないくらいに冷めた目を、こちらに向けてくる。
「どうして、それを……」
「ふん、やっぱりな…」
シュウがニヤリとした薄ら笑いを口元に浮かべた。
「……やめさせるわけが、ないだろう」
嫌らしい笑みを貼り付けたままで言うその男を、
「……あなたたち、カイを、どうしようとしてるの……」
上目にキッと睨み返した。
「どうもしないさ……。ただ、あいつは俺たちが見つけたんだ……。俺たちがスカウトして、引き入れたヤツを、どうするか決めるのは、俺たちだろう……?」
「それって……、」
こないだ話した時のカイの、今にも泣き出してしまいそうな哀しげな姿が、脳裏に浮かんだ。
「それって、カイの思いを無視して、飼い殺しにしてるってことじゃないの……」
思わず口からこぼれ出た本音に、
「……人聞きが悪いこと、言うなよ……」
シュウがまた冷ややかな目で睨み据えてくる。
「……だいたい、あいつがデビューできたのだって、俺たちのおかげだろうが……」
カイがかつて言っていた──
『あいつらとは、いろんな意味で、合わないから』
という言葉の意味が、唐突にわかった気がした──。
「……あいつをヴォーカルにスカウトしたことで、俺はヴォーカルを降りたんだ……。
……なのに、なんで勝手に、あいつがやめられるんだよ……」
グラスの残りを煽るように一気に飲んで、
「バカにすんじゃねぇ…」
と、シュウが吐き捨てるようにも口にした──。