テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「バカに……って、そんなのはそっちの勝手ですよね? カイの気もちを踏みにじってるだけのようにしか、思えないのだけど……」
「黙れよ…」
シュウが、ガッとグラスを叩きつけるように、テーブルに置いた。
「……メンバーのことに、部外者のあんたが口を出すな…」
凄みをきかせた口調に一瞬怯むが、カイの気持ちを考えると黙ってもいられなかった。
「……カイが、かわいそう……」
「黙れっ……!」
シュウがドンッとテーブルを拳で叩いたせいで、グラスが倒れ、溶けかけの氷がウイスキーとともにこぼれ出る。
テーブルの上でじわじわ広がっていく、薄茶色の液体をじっと見つめながら、
「……もう、帰ります……」と、冷めた思いで呟いた。
これ以上、彼の話に付き合いたいとは、到底思えなかった。
「……帰るなら、忠告しておく。二度と、カイの奴には関わるな…」
返事をせずに席を立ち、そのまま店を出た──。
──今まで自分は、彼らの何を見てきたんだろうと思っていた。
周りとの付き合いを持たず、少し接しにくいようにも感じていたヴォーカルのカイは、実は誰よりも繊細で、
人付き合いがよく、愛想がいいとも思えていたはずのギターのシュウは、ドロドロとした憎しみのような感情を、奥底に隠していた。
さっきの彼の口ぶりからしても、メンバーの間には明らかな格差があって、初期メンバーではないカイは、仲間内から精神的な苛めを強いられているようにすら感じられた……。