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オーバーライド

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2025年03月11日

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バッドランドに生まれた。ただそれだけで、バッドライフがデフォルト。くだらない。でも、それが”理”だなんて言われたら、もう参っちゃうね。
 この街には”出口”がない。生まれた瞬間にレールが敷かれ、そのまま転がり落ちるしかない。上に登る方法なんて、どこにも書いてなかった。


 抗うために、何度もエスケープを試みた。

 蛇のように這いずり、善戦してみせた。

 だけど、最後の逆転の一手だけ、どうしても詰められない。


 ――何故か?

 簡単だ。“そういうもの”だから。


 この世界は二つに分かれている。

 一方は暗く、無頼が支配する社会。

 もう一方は明るく、未来を信じる世界。


「ならちょっと後者に行ってくる」


 そう言ったら、笑われた。

 「大丈夫か?」と。


 うるせえよ。心配してほしくて言ったんじゃねえ。


 この街では、“正しさ”が意味を持たない。

 “生きること”よりも、“生かされること”のほうが価値がある。

 限界まで足掻いた人生は、想像よりも狂っているらしい。


 どんなに計算しても、予定通りにはいかない。

 どんな関数を当てはめても、誤差が生じる。

 だったら、そろそろオーバーライドしたい。


 でも、現実はそうそう上手くはいかない。


 吐いた言葉だけが信条だと思われて、誰もついてこない。

 最後に手を伸ばしたやつも、結局、離れていった。


 「巻き返しに必要な”力”があるなら、別のことを頑張ればいいじゃん(笑)」

 「この地獄の沙汰も金次第でどこまでも左右できるわけだし?」

 「アンタが抜け出せるわけがないよ(笑)」


 そう言われるたびに、胸の奥に何かが渦巻いた。

 それを言葉にするのは簡単だったけど、それじゃダメだった。


「それで話はおしまい?」

「ならばもう来ないからねー」


 豪快さにかまけた人生は、きっと燃やされてしまうらしい。

 じゃあ、ワタシなんていらないと蹴った先にいたのは、結局、何も考えない群衆だった。付和雷同。誰かの意見をなぞって、誰かの言葉で踊らされる。


 ああ、つまんねえ。


 シタイだけ探した冒険TONGUE。

 どうか、消えるまでスタンド・バイ・ミー。


 撒いたエラーすら読んじゃいない。

 人間の考えることなんて、ワタシには知らないね。



[ERROR: SYSTEM OVERRIDE]


 おかしいな。

 この街に出口はなかったはずだ。


 でも、ワタシは今、“外”に立っている。


 視界が霞む。靴の下で、コンクリートが軋む音がする。

 それは知らない世界の、知らない音だった。


 バッドランドの空は、いつも濁った灰色だった。

 だけど、今ワタシの目の前にあるのは、青。


 こんなもの、知らない。

 こんなもの、見たことない。


「……なんで?」


 答えはない。

 ワタシの知っているルールでは、“ここ”に立つことはありえないはずだった。

 それなのに、ワタシはここにいる。


 オーバーライドされたのは、“世界”か、それとも”ワタシ”か。


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