テラーノベル
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「……もっと早く知りたかったな」
夜風の中、その言葉だけが少しだけ重く落ちた。
仁人はすぐには返せなかった。
隣を歩く勇斗の横顔は、いつものように分かりやすいくらい真剣で。
冗談じゃないってことだけは分かる顔だった。
「……勇斗さん」
「ん?」
「それ、ずるいです」
「え、なんで」
「今さら感すごいです」
「だってさ」
勇斗は少し困ったように笑う。
「好きになったの最近だし」
「……」
「でも、今考えるとさ」
勇斗は少しだけ目を細めた。
「まさこさんの時から、ちゃんと好きだった気がする」
仁人の心臓が一拍遅れる。
「……それ、反則です」
「なんで?」
「逃げ道なくなるじゃないですか」
勇斗は立ち止まった。
商店街の明かりの下で、まっすぐ仁人を見る。
「逃げてほしいの?」
「……」
仁人は少しだけ視線を落とした。
逃げたいわけじゃない。
でも。
怖い。
ちゃんと向き合うのは。
ちゃんと自分として見られるのは。
「……分かんないです」
正直な声だった。
勇斗は少しだけ間を置いてから、ゆっくり言う。
「じゃあさ」
「はい」
「逃げなくていい方、選べばいいじゃん」
「……?」
勇斗は一歩近づいた。
近い。
いつもより、ちゃんと近い。
「俺はさ」
少し照れくさそうに笑う。
「まさこさんでも、仁人でも、どっちでも好きだと思う」
仁人の喉が詰まる。
「だから」
勇斗は少しだけ視線を逸らして、それでもはっきり言った。
「付き合ってほしい」
夜風が止まった気がした。
仁人は数秒、動けなかった。
「……今、すごい簡単に言いましたね」
「簡単じゃないよ」
勇斗はすぐに否定する。
「めっちゃ緊張してる」
「顔は?」
「顔はもう終わってる」
「ふふ」
仁人は小さく笑った。
それから、少しだけ息を吸う。
「……勇斗さん」
「うん」
「俺、ずっと」
言いかけて、止まる。
勇斗は何も言わず待っていた。
急かさない。
それがまたずるい。
仁人はゆっくり続けた。
「まさこの時も、今も」
「うん」
「ちゃんと見てくれてたの、嬉しかったです」
勇斗の表情が少し柔らかくなる。
仁人は小さく笑って、続けた。
「……だから」
一拍。
「いいですよ」
勇斗が固まる。
「え」
「え?」
「今の」
「付き合うって意味で、いいですよ」
数秒。
完全停止していた。
そして。
「……え、え、え、え、え?」
勇斗が一気に混乱し始める。
「ちょ、え、待って、今のOK?」
「はい」
「ほんとに?」
「はい」
「え、今付き合った?」
「そうなりますね」
「え、やば」
勇斗が頭を抱える。
「やばいやばいやばい」
「落ち着いてください」
「落ち着けるわけないでしょ!?」
「ふふっ」
仁人は笑った。
その笑顔を見て、勇斗はさらに混乱する。
「いや待って……今俺、人生の重要イベント通過した?」
「大げさです」
「いや大げさじゃないって!」
勇斗は一回深呼吸した。
そして、少しだけ真面目な顔になる。
「……じゃあ」
「はい」
「これから、彼氏?」
仁人は少しだけ首を傾げた。
「そうなりますね」
「うわ……」
「何ですかその反応」
「いや……嬉しい」
素直すぎる。
仁人は少し目を伏せる。
「勇斗さん」
「うん」
「一個だけ」
「なに?」
「さっきまでまさこさんだったのに、急に彼氏って忙しいです」
勇斗は吹き出した。
「それはほんとそう」
「ふふ」
「でもさ」
勇斗は少しだけ真面目な声に戻る。
「どっちでも、ちゃんと好きだから」
仁人は静かに瞬きをした。
その言葉は、思っていたよりまっすぐ刺さる。
「……じゃあ」
仁人は少しだけ勇気を出すみたいに言った。
「手、繋ぎます?」
勇斗が固まる。
「え」
「彼氏なんですよね?」
「いや、そうだけど……え、今?」
「ダメですか」
「ダメじゃないけど!」
勇斗は真っ赤になりながら手を差し出す。
「ちょ、心の準備が!」
仁人は少し笑って、その手を取った。
指先が触れた瞬間。
勇斗は一瞬だけ息を止める。
「……やば」
「またそれ」
「いや無理、これ普通に無理」
「何がですか」
「好きすぎる」
仁人はぽかんとする。
「ストレートすぎます」
「今さら?」
夜の商店街。
二人の影が並んで伸びていた。
少しだけ距離が近くなって。
でも、まだぎこちなくて。
それが妙に、ちょうどよかった。
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹
#ご本人様には関係ありません
コメント
1件
うわああああああ!!つ、ついにきたーー!!😭💕 「まさこさんからずっと好きだった」って勇斗の告白、重すぎてずるいよ!!そして仁人の「いいですよ」の返しがまた……完全に王者の風格だったな…!勇斗が「え、え、え?」ってなってるのめっちゃかわいかったし、「好きすぎる」連呼されるとこも最高すぎるw 商店街の明かりの下で手繋ぐシーン、ぎこちない感じが逆にリアルでドキドキした…!この2人の距離、少しずつ縮まってくのが本当にいい…続きが楽しみすぎる!!🔥