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第19話「告げられた、期限」
診察室の前。
名前を呼ばれて、全員が立ち上がった。
ドアの向こうは、静かすぎるほど静かだった。
医師は、ゆっくりと椅子に座るよう促す。
「……落ち着いて聞いてください」
その一言で、空気が固まる。
「現在、処置は終わっています」
「呼吸は安定していますが——」
一瞬、言葉を選ぶ間があった。
「……根本的な改善は、難しい状態です」
なつの指先が、きゅっと白くなる。
「……それって……」
声が、かすれる。
医師は、目を伏せずに続けた。
「正確なことは言えません」
「ただ……」
深く、息を吸ってから。
「もって、1週間。」
その言葉が、
部屋に落ちた。
「……え……?」
みことの声が、遅れて出る。
「……1週間……?」
「……」
すちは、何も言えず、ただ唇を噛みしめた。
「……そんな……」
こさめの肩が、小さく震える。
「……さっきまで……」
「……話して……」
いるまは、俯いたまま、低く言う。
「……意識は……?」
「今は、眠っています」
医師は答える。
「刺激を減らすためです」
「目を覚ます可能性は、あります」
「ただ……体力的に、長時間の会話は難しい」
沈黙。
時計の音が、やけに大きい。
「……本人には……」
なつが、やっとの思いで口を開く。
「……いつ……伝えるんですか……」
医師は、少しだけ考えた。
「ご本人の状態と、ご家族・ご友人の意向を見て」
「無理のない形で」
「……時間は……」
なつは、続きを言えなかった。
「……ありますか……」
「……限られています」
その一言で、全てが理解できてしまった。
診察室を出たあと、
誰もすぐには動けなかった。
「……1週間……」
みことが、かすかに呟く。
「……短すぎる……」
「……でも……」
すちが、静かに言う。
「……“まだ”ある……」
その言葉に、全員が顔を上げる。
「……会える……」
こさめが、小さく言った。
「……話せる……」
「……触れる……」
なつは、目を閉じた。
(……残された時間じゃない……)
(……一緒にいられる時間だ……)
「……行こう」
いるまが、低く言う。
「待ってる」
その先にいるのは、
眠ったままの、らん。
期限を告げられても、
名前を呼ぶことだけは、やめなかった。
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