「ふぁーーおはようございます」
朝が来た。伸びをしながらゆっくり起き上がる
不健康な生活をしてはいたけれど、朝には強い方で起きろと言われたらすぐに起きれるくらいだ。
布団を片付けて今日は何をしようかと縁側に座る
その時だった
縁側から見えるゲートが突然発光しだすのが見えた
もしかしたらゲートが開いたのか!?出られるかもしれない!とか思いつつ縁側から立ち上がりゲートの方向へ走っていく。
ふとゲートの下の方を見ると何か小さなものが動いているのが分かった。目を凝らしてじっと見ると
「あぁ!!!」
そう、ここに来る前に助けた狐だった
相手も私に気付いたのか最初はん?という感じだったが「あの時の!!!!」と叫んだ。ん?叫んだ?
「待ってなんで狐が喋ってるの」
ロボットとも思ったけど違和感の無さすぎる造形や動きで脳が否定している。
脳をフル回転させてなんなのか考えていたその時その狐が口を開いた
「あの時はこのこんのすけを助けて下さり誠にありがとうございました…!貴方もご無事で何よりです」
「あぁ…うん」
私は考えるのをやめた
「私より貴方も相当傷を負っていたでしょう?大丈夫だったの?」
「えぇ幸いにも貴女が止血をしてくれたおかげでダメージが少なく済み、回復も早くできたのです」
「それなら良かった…」
「そうです、すっかり忘れておりました!!」
こんのすけというこの狐さんはそう言って私に端末のようなものを渡してきた
「これは?」
「詳しい事は離れの屋敷でお話致します、この場では少々話すのは難しいので」
そう言って目をキョロキョロさせている。
私もチラッと見たのだがなるほどそういうことかと納得した。
母屋の方から何やら視線を感じるのだ。これは早く去った方がいいだろう。
駆け足で離れの方へ走っていく
刀剣の皆様も手を出す気はないのかたまに視線は感じるけれどそれ以外は大丈夫だった
「ふぅついたよ」
「お疲れ様です主さま」
「主さま?」
なんだか聞き慣れない呼び方だな
「えぇこのこんのすけの主さまは貴方ですよ 」
「そんな大層なもんじゃないと思うけど…」
まぁまぁいいのですよとグイグイ言ってくる
「えっとこんのすけさん」
「貴方は私の主さまなのでさんなんて付けなくてもよいのです!どうぞ呼び捨てで呼んでくださいませ」
「じゃあこんのすけ…ね、うんよし」
なんだか嬉しそうだが気にしないでおこう
「で、この端末はなんなの?」
先程受け取ったこの端末はスマホに近い形をしていて少し分厚いが持ちやすい
「はい、詳しく説明させていただきますね」
「まずは横に付いているボタンを押して下さい」
そうしてこんのすけによる端末の説明が始まった。
画面にはスマホと同じような感じでアプリが入っている
ショッピングやミニゲーム、その他にもあるのだが、圏外で回線が繋がらないのか開くことはできない
「どうして圏外になってるの?」
こんのすけに聞いてみると
「…貴方をここに連れてきた黒服の奴らを覚えていますか…」
「うん」
「そいつらがせめてもの情けだと回線を断ち切ってショッピングだけ使えるようにした端末を渡して来たのです」
「ショッピングなどで使う金はあちらが振り込んでくれてるのでお金は気にしなくても大丈夫だそうです」
「ありがたいんだけどな…なんか複雑だね」
こんのすけがイラついてるのか肉球で地面をぺちぺちと殴っている。きゃわ
「あってかショッピングできるなら食材も買えるの?」
「そうですね、頼めば1時間以内にはお届けされると思いますよ」
「じゃあご飯買おう!!お腹空いた!」
こんのすけは複雑な顔をしていたがまぁなんせ私はもう3日はまともに食ってないのだ。死んでしまう
「カートに沢山ぶち込んでいこうか」
幸いお金は沢山振り込んでくれているようで5000万以上ある。
これだけあれば1年は余裕だろう
何を買おうかと悩んでいると玄関の方からノック音が聞こえてきた。
「僕だよ、燭台切光忠」
来てくれたのか救世主、と早足で玄関に向かうドアを開けるとそこには少しボロボロ…というか所々傷のある彼がいた
「燭台切光忠さん!?どうしたんですその怪我!!!」
驚き過ぎて転けそうになったが抑えて傷を確認する
「あはは…ちょっと母屋の刀達と喧嘩してしまって、格好悪いよね」
喧嘩でできる怪我なのだろうか、明らかに刀傷だ…
奥から心配そうにこんのすけも覗いている
そんなこんのすけに気付いたのか燭台切光忠さんも「こんのすけ!?」と声をあげた
とにかく部屋に入ってもらいあいも変わらず水を出す。茶は無いのだ許せ
「そっか、こんのすけくん戻ってこられたんだね。」
ほっとした顔で笑っている彼は傷が付いてもイケメンだ流石
「ところで燭台切光忠さん」
「なんだい?」
「その傷手当したいんですが…」
あまりにも刀傷が痛々しいし、血を垂れ流したままなのも目に優しくないのでどうにかしたい
「あぁ、ごめんね。この傷は普通に手当しただけじゃ治らないんだ」
「なんですと」
こんのすけが説明してくれたのだがどうやら彼らは人間ではなく刀なので【手入れ】をしなくてはならないらしい。
「その手入れはどうやるの?」
「本当なら手入れ部屋を使わなきゃいけないんだ」
だけど…と黙る燭台切光忠さん、そうかその部屋は多分母屋にあるんだ
「ここでもできますよ主さま」
「「え?」」
それはどういう事だ?ここには手入れ部屋というものはないが
こんのすけ曰く改築とやらをするらしい。改築…???
「主さまの霊力を沢山使う事になりますが1部屋ならできるはずです」
なんと便利な
まぁできるならばやらない手は無い
端末のショッピングアプリの方から見れるらしく先にアプリを開いて食材を選んでいると燭台切光忠さんが覗き込んできて不思議そうにしていたから「何か買う?」と聞いてみるとぱぁっと目を輝かせて「これとか良いんじゃないかな」と専門的な調理道具を買おうとしていた。野菜とかお肉にしてください
なんやかんやあって一応1週間分の食材は買い占めてみた
そして本題の手入れ部屋。かなり霊力を抜き取られるらしいので覚悟してほしいとの事
ちなみに霊力は普通にご飯食べたら戻るらしい。単純だな。
「それではいきますよーー!!!」
とこんのすけが声をかけた瞬間だった。
「…っ!?!?」
いきなり体に大量の鉛を抱えているような感覚になった。耐えきれず膝から崩れ落ちる。そしてそのまま気絶。
目が覚めると全て終わっていた。自分は布団に寝かされていて起き上がろうとするけど体が死ぬ程痛い。
こんのすけが見守っててくれたのか
「おはようございます主さま」
と優しく声をかけてくれた。
そして何処からかいい匂いもする。お腹空いた
「お待たせ、光忠特製たまご粥だよ。」
やばいちょー美味そうただのたまご粥なのに
食べれそうならと他にも漬物っぽいものや魚の骨を綺麗に抜き取り、綺麗に焼いてくれたらしい。そして暖かい茶まであるよ
配慮の鬼だと思う本当にちょっと泣きそうになった。
「わざわざありがとうございます…」
そう言ってスプーンを持ちたまご粥から食べてみる。
やっべぇやっべぇよこれ。この間貰ったおにぎりとかも美味しすぎてビックリしたんだけど、今回も桁違いな美味さでびっくりしてる。味が薄すぎず濃すぎずさらに胃を刺激するような味付けで手が止まらなくなってしまう。天才か?天才なのかこの人は
あっという間に粥を平らげてしまって燭台切光忠さんもびっくりしながらもあっはっはと笑ってる。ちょっと恥ずかしい
焼き魚も同様に美味しい。こんな家で食べれて良い品物じゃない。料亭並だよ。優勝。
「そういえば燭台切光忠さんはご飯食べたんですか?」
「いや、食べてないけど…」
「食べないんです?」
そう言うとなんだか悲しそうな顔をして
「普段は食べなくても平気だし、母屋の方でも主から許可が出ないと食べれないんだ。食材もあまりなかったし」
「え」
じゃああの日のおにぎりとおかずはわざわざ少ない食材を使って作って来てくれたってことマ?嘘でしょ?聖人なの?
「神なんですか…」
思わず心の声が漏れてしまった
燭台切光忠さんはふふっと笑いながら
「付喪神だよ」
そう言いながら微笑む燭台切光忠さんは相変わらず顔が良い。性格も良い。逆に何がダメなんだい貴方…
「あれ、そういや怪我は?」
目覚めてからご飯に夢中になっていて忘れていたが燭台切光忠さんは傷が付く前の綺麗な状態に戻っていた
「あぁ、君が寝ている間に終わったんだよ」
どうやら手入れは本来審神者自身がやるらしいのだが、ここの場合改築する際に吸い取られた霊力が少し多かったようで式神さんが一時的にレベルアップして審神者がいなくても手入れできたらしい
「そうだったんだね…とにかく傷が治って良かったです」
「本当に色々とありがとう、わざわざ手入れまで…」
「礼を言うのはこちらの方です。利用する為とはいえ助けていただいて美味しいご飯まで沢山食べさせてくださってもういっぱいいっぱいです。本当に感謝しています…」
お互いにアワアワと頭を下げ合うというよく分からない状況になってしまっているがそんな事はどうでも良い。
「最初、君を信用してないって言ったよね」
「あー確かにそんなこと言ってましたね」
「今は違うんだ、まだ少し信用しきれないけど君は信頼してもいい人だって分かってる」
「そうですか…ならそのあと少しの信用を得れるようにわたくし、頑張らせていただきますよ」
突然始まったこの本丸での生活、何も分からなくて不安しかないけれど、そんな中で助けてくれた貴方と仲良くなれたらとそう思う。
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