テラーノベル
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それは、突然の出来事だった。
「私とコイツのこと、どう思います」
……どう、とは?
「確かに、晴明くんは僕達のことどう思ってるの?」
だから、どう、とは??
ただ書類の確認をしてもらいに来ただけというのに、
なんの予兆もなく、そんなことを2人に問われた。
もう一度言おう、どう、とは???
妖怪として好いていますか? という意味なのか、
はたまた今日の服装どう、髪型どう、など。
だが、2人を見る限りいつもと変わった様子はない。
「どう、とは…?」
と聞かざるを得ない。
確認してもらった書類を受け取ればこの場を去れるのだが、
学園長が書類を一向に渡してくれる気配がない。
試しに、書類を自分の方へと引き寄せようと、手に力を込めてもビクともしない。
「だから私とコイツのことですよ」
「いやっ、あの、だからどういう意味ですか⁉」
こんなにも話が通じない人だっただろうか?
ついムキになって書類を奪い取ろうとするも、力の差は言うまでもなかった。
力を込めるたびに、大事な書類がなんとも無残な姿になっていく。
「ですから、私とコイツ、どっちが好きか嫌いか聞いてるんです」
「…学園長と隊長さんのこと…?」
「勿論、晴明くんは僕のほうが好きだよね」
「いいや。私を愛していますよね、晴明くん」
2人から向けられる愛情。
そして、急にどちらかを選べという理不尽。
上司の質問を無視して、この場から逃げることなんて出来ない。
好きか嫌いか考えるまでもない。
「僕はどっちも好きですよ」
真剣な表情で僕はそう答えた。
けれど、その答えは間違っていたのかもしれない。
「…あっちゃん聞いた?」
「ええ、聞いてましたよ…」
僕の答えに二人は驚いたと同時に、
困ったような顔を浮かべている。
何かおかしなことでも言ったのだろうか。
「晴明君には片方だけ選んで欲しいんですが…」
「え⁉ そんなの選べませんよ!」
二人のことは同じくらい好きだし尊敬している。
どっちかだなんて僕には選べっこない。
「僕は学園長のことも隊長さんのことも大好きですよ!」
もちろん、信頼している上司と知り合いという意味での好きだ。
この言葉の思いは、それ以上でもそれ以下でもない。
「えぇ~じゃあ晴明くんのこと独り占めできないじゃん!」
「そんなのやだ~!」
「うぐぇ……隊長さん苦しいです……ッ」
隊長さんはぷんすこと頬を膨らせながら、ぎゅう、と抱き着いて来る。
腹回りに両腕を回されて、思いっきり抱き着かれているため、
体がみしみしと悲鳴を上げている。
明らかに人間には鳴ってはいけない音がすると同時に、盛大な舌打ちが真正面から聞こえた。
「そんなに嫌なら、私と勝負しません?」
「勝負ー?」
「勝ったほうが晴明君のことをものにできる。なんてどうでしょう?」
うん?
なんか話が変な方向に…。
「えぇ! さすがあっちゃん! 賛成~!」
「え、ちょ…」
「で、勝負は何するの?」
「そうですねぇ…」
その勝負に本人の拒否権はないのだろうか。
目の前にいる男達は楽しそうに、話を勝手に進めている。
急な話で2人を一旦止めようとするが、当本人が会話に入る余地すらない。
「『晴明君を堕とした方の勝ち』でいいんじゃない?」
「ああ、それ良いですね」
隊長さんの一言でヒュッと息を呑む。
堕とす?一体何を?
この人たちは何か勘違いをしている。
僕が言った『好き』は信頼という意味の方だ。
けれど、2人は僕の言う『好き』とは違う意味でとらえているようだ。
「場所はあっちゃんの部屋で良い?」
「ええ、もちろん」
「あ、でも。あっちゃん就業中だよね、いいの?」
「いいんですよ、仕事くらいもう片づけてあるので」
学園長がそう告げると、取り合いになっていた資料を手放した。
急に自身の手元に戻ってきた資料は、あまりにもシワだらけで、
見るに堪えない姿形に変わっていた。
だが、資料さえ受け取ってしまえば、僕がここにいる理由はない。
つまり……………
この状況から逃げるチャンスということだ。
「ああ!そういえば、僕とっても大事な用事があるんだった!!」
「じゃあ、学園長!隊長さん!僕はこれで失礼します!!!」
「え! ちょっと…!」
隊長さんの言葉を無視するかのように、早口で捲し立てるながらも、資料を両手で抱え込み、
瞬時に学園長室の扉を開けて全速力で廊下を走る。
(…ごめんなさい……学園長……隊長さん…!)
二人の気持ちを無視して逃げてしまい、悪いことをしてしまった。
そんな風に罪悪感を感じていると、廊下の曲がり角で
ドン!、と誰かとぶつかってしまった。
「わ! ごめんなさ………え…」
「な、なんで……」
「貴方、私がぬらりひょんってこと忘れてません?」
逃げた先でぶつかったのは………先ほどの部屋に居た人物。
学園長とぶつかってしまった。
この人が瞬間移動のような能力を持っているのを、完全に忘れていた。
廊下へ逃げるのではなく、いっそのこと窓から飛び降りて着地した方が確実だったろうか。
そんなバカなことを考えていると、
後ろの方から足音と同時に、聞きなれた声が耳に入った。
「晴明くんったら、逃げるなんてヒッド~い!」
おちゃらけた声の主は、コツコツと足音を立てながら
どんどん近づいてくる。
逃げようにも、目の前のぬらりひょんに腕をガッシリと掴まれて
僕には抵抗することも逃げることも許されなかった。
今の状況で僕にできることといえば、
この先何をされるか分からない恐怖で、アホ毛を垂らしながら体をガクガクと震わせるくらいだ。
怖がっている様子すら愛おしいのか、
2人はただひたすらにクスクスと頬を桃色に染めながら、笑っている……
…そう、笑っている………笑っているはずなのに、目の前の瞳はまったくもって笑っていない。
いっさいの光を宿していないその瞳が、まるでガラス玉のように僕を捕らえて離さない。
きっと後ろの男も同じような瞳をしているのだろう。
「ほら、貴方も連れてくんですから、さっさと来てください」
「はぁ~い♡」
その声色と瞳のギャップに、ゾっとするような寒気が背筋に走る。
「いや、でででも…! 僕用事が!」
「用事なら後でいいでしょ~?」
「ひっ…」
不意に背中を熱い体温に包まれ、息をのんだ。
耳元に囁かれた甘い声が、背中に回された腕の強い力とあいまって、
得体の知れない恐怖となって全身に震えを走らせる。
強く、しかし丁寧に抱きすくめられた腕の中で、思考を停止させた。
もはや逃げ出すという選択肢など僕にはないと心の中で悟った。
「チッ…、さりげなく抱き着いてんじゃねぇよ」
「キャー、あっちゃんったら怖い~」
「お前マジで置いてくぞ」
「えぇ~やだぁ~」
2人がそんなことを悠長に話していると、ぬらりと視界が暗くなり始める。
この二人の言っていることや行動に理解が追い付かず、
恐怖で乾いた喉に血を滲ませながら、必死に答えを探した。
なんで?どうして?
けれど、いくら考えたって出ない答えに、言葉を失い、
絶望的な恐怖に襲われた。
そして、
これから始まるであろう最悪の出来事を、僕はまだ知る余地もなかった……………。
コメント
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続きが気になりすぎて何回も確認しにきちゃうぅぅ最高の続き待ってます‼️頑張ってください‼️
晴明くん堕とすとか神すぎるじゃないですかやめてください惚れちゃいます🙇🏻♀️💦 まじで尊死しすぎて召されかけましたよ👼🏻 てか学園長様って瞬間移動的なの出来るから一生晴明くん逃げれなさそうで神✨💕 もうなんですか主様は何回うちを〇せば気が済むんですか❓ それとまじで絵上手いですね‼️尊敬できます🙏✨ 次回も楽しみに待ってます🥺💗 長文失礼しすぎました😖🙏🏻
好きすぎます!! めっちゃ絵うますぎる✨✨✨