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瞳がこぼれるほど
ぺたん、…軽い音が似合うような控えめな崩れ方をする。
膝から力が抜け、 尻もちをついた状態から動けなくなる。
「……、…まな、」
力ない、か細い声は夜風に掻き消される。
……、酸素濃度が薄く、上手く脳に伝達されない。
あーあ、…情けないや、ヒーローじゃないじゃん
酒も含まない状態の夜は嫌な考えがよぎる。
「…だれか、」
誰も居ないのに助けを求めてしまう。
意識が半分ほど落ちかけている中
必死に動こうと手をぶらぶらとする。
でも、意識が半分落ちてる状態じゃ意味なんてなかった。
どんくらい経ったのかな、頭おかしくなってるかも。
床に吸い込まれるみたいに体が地べたに寝そべってる、
手首にも膝にも力が入らなくてまともな体勢は取れないし。
いっそのこともたれかかれるような何かが欲しかった。
「ウェン、どこや!」
「ウェン!」
8割ほど落ちかけていた意識の中に聞き慣れた声が木霊する。
東だけじゃなくて西も居るみたい。
なんで居るのか、とか思い浮かばない。
「…かげつ、きゅん……」
ガッサガサの掠れた声でなんとか喋る。
視界は半分ぼやけてるし、寒いし最悪。
「赤城!」
「カゲツくん、見つけたの!?」
「こっちや!」
テツとカゲツの騒ぐ声が聞こえる。
心配されてる現実に少し、嬉しい感情が湧く。
意識を手放したい欲望と、手放したくない欲望が喧嘩してる。
頼むから寝かせて欲しい、疲れてる、体も心も。
「ウェン、大丈夫か」
今度は低くて落ち着きのある声、こやろうかな。
…皆に心配かけさせちゃった、迷惑、かけないようにって
してたはずなのに、…努力無駄、というか、……皆、ごめん…
目元が熱くなって涙が、にじむ感覚がする。
「ちょ…!?、大丈夫か!?」
ロウの焦る声が鼓膜を揺らす。
「ご、めん……」
辛うじて出せた言葉は余りにも惨めだ、
顔が見たいのに、目を開けられない…、助けて欲しい
思考と欲望が絡まって、なんでか涎が、垂れる。
なんだろう、これ、こんな酩酊状態初めてだ。
酔ったときでもこんなふうにならない。
あれかな、なんか貧血の時みたいな。
だるいというか溶けちゃいそうな感覚。
「ろぉ、たすけて」
僕の情けない声はろうの体温で溶かされた。