テラーノベル
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休日の昼下がり。
「このあと、あっちのカフェ行ってみる?」
「……うん」
並んで歩きながら、
ないこは小さく頷く
「ないこ、今日はちょっと顔柔らかいな」
「……そう?」
「うん。ええ感じ」
そう言って、軽く笑う。
その空気が、心地よかった
はずだった。
「……あれ、ないこ?」
聞き覚えのある声に、足が止まる。
振り返った先にいたのは
「……久しぶりだな」
お見合いで会って、
結局、婚約破棄になった相手
一瞬で、空気が冷える
「……どうも」
短く返す。
それ以上、話すつもりはなかった
でも
「いや〜、ちょっと聞いてくれよ」
その男は、勝手に話し始めた
「こいつさ、ほんとやばくてさ」
「……」
「何話しても反応薄いし、 笑わないし、つまんねーし」
ないこの指が、少しだけ強く握られた
「こっちがどんだけ気使っても、 全然感情出さねーの」
笑いながら続けるその声が、
やけに耳に残る。
「正直さ、よくこんなのと結婚しようと思ったよな俺」
「……」
「ま、結果的に破棄して正解だったけど」
その言葉に
(……やっぱり、そうなんだ)
分かっていたはずなのに。
「……面白みもないし、 一緒にいても疲れるだけだわ」
胸の奥が、じわっと痛む。
(……俺は、やっぱり)
「……もうええか?」
低い声が、割って入る。
まろだった
さっきまでの柔らかさはなくて、
静かに、でもはっきりとした声
「……あ?」
男が少し苛立ったように見る。
まろは一歩前に出て、
俺の前に立つ。
「言いたいこと、全部言ったんやろ」
「……あぁ、」
その視線を、真っ直ぐ受け止めて。
まろは、淡々と言った。
「ないこはな」
「俺と結婚する人や」
空気が止まる
「……は?」
男が呆れたように笑う。
「やめとけって。こいつほんと」
「知っとる」
被せるように、言い切る
「感情出すの苦手なんも、 不器用なんも、全部」
「それでも、一緒におりたいって思ったんは俺や」
「……お前、後悔するぞ」
「せぇへん」
「むしろ」
「こんなええ人、手放したあんたが損やろ」
男は一瞬黙って、
舌打ちして去っていった。
「……ないこ」
優しい声に戻る。
でも、さっきより少しだけ近い距離
「大丈夫か」
「……」
ないこは、少しだけ俯く
「……俺、やっぱり」
「……つまらないし、 感情もないし」
「……」
「……まろ、後悔しない?」
まろは、少しだけ間を置いてから言った。
「せぇへんって言ったやろ」
そして、ないこの手を、
今度はちゃんと握る。
「ないこがどういう人かなんて、 俺が一番分かっとる」
その言葉に、
胸の奥が、じわっと熱くなる。
「……それに」
「今、ちゃんと傷ついとるやん」
「……っ」
「それ、感情やで」
否定できない。
「……ありがとう」
小さく、でも確かに言えた。
まろは、満足そうに笑う。
「よし、じゃあ予定通りカフェ行こか」
「……うん」
コメント
1件
好きです(( (唐突な告白)