名も無かった殺人鬼
私は指名手配犯の殺人鬼。
夜の間に動いて、人を残酷に……
って、まぁ私の仕事内容は大体察するか…
「この殺人鬼!!」
あぁ、今のは何かって?私のあだ名だよ
と言っても…私は名前が無いから、そう呼ばれてるだけだけど。
そんな毎日を送っている私の人生が、いきなり変わった。アイツのせいで___
私はいつも通り人を殺っていた。
その時、後ろに気配を感じた
「(警察だと面倒だな)」
私はそう思い、別の場所に移動しようとした。
だけど……
「な、何しているの…?」
「!!」
私はその優しい声に思わず、声の主の方に振り返ってしまった。
アイツの瞳は、黄緑色で、私には何故かその瞳が輝いているように見えた。
「あ、貴方…こんな所で一体何をして……」
「…………………」
私はアイツの問いには答えなかった。
何故なら、アイツの瞳に見惚れていたから。
「………ハッ」
私はしばらくして、我に返った。
「あ、あの…」
アイツの容姿は、綺麗な白の髪色に、同じ色の狐耳と尻尾
「………待て待て」
狐耳と尻尾…???
「…?どうしたの?」
アイツは首を傾げ、不思議そうに私を見つめた。
「お前…狐耳と尻尾…?」
「うん。私、狐人間だから」
「…………は?」
私は思考停止した。
狐人間…?そんなの、一度も見た事も聞いた事もない。
「あ、あの……?」
あ、アイツの容姿についてまだ途中までしか説明していなかったな。
アイツは、巫女服を着ていた。でも、普通の巫女服では無い。
肩から肘辺りまで腕が出ていて、肘辺りからは着物の袖がある。
そしてスカートなのかは知らんが、スカートらしき物には、上半分が黒色で、下半分は紅葉の模様に、アイツの瞳の色と同じ、黄緑色だった。
「あの……聞いてる?」
「…………あ、すまない」
私は無意識に謝罪した。
身長は150cmは越えていると思うが、私より低い。
まぁ、こんな相手なら簡単に殺せるだろう。
私は持っていたナイフをアイツに刺そうと飛びかかった。
「!?」
「残念だが、お前の人生はここまでだ。私と会った事、後悔するがいい」
「……………………」
「…!?」
私は刺そうとした腕を止めた。いや、腕だけじゃなく、身体全身が止まって、私は膝を地面に付いて、アイツの顔を見上げた。
アイツの表情は、どこか寂しげな感じだが、それでも口元は笑っていた。
「なんで……」
私は、震えた声で聞いた。
その時、私の頭に何か温もりを感じた。
「……………………」
「…!!」
アイツだ。アイツの手だ。
アイツは、表情をさっきまでと変えずに、私の頭を優しく撫でてくれた。
「……辛かったね」
「っ!」
なんでだよ……
なんでそんな事が言えんだよ…なんで分かるんだよ…私の事、何も……
「……知らないくせに……っ」
「…そうだね。私は、君の事はなんにも知らない!」
「……………」
「でも………」
「…?」
私は顔を見上げて、アイツの表情を見た。
「さっき、私に飛びかかった時の顔、辛そうだったから…」
「…!」
「昔の私と同じ……」
最後のセリフは、ボソッと言い、聞こえないように言ったつもりだと思うが、私にはハッキリと聞こえた。
「……もう、大丈夫だよ」
「…!!」
アイツは、ふわりと…私を抱きしめた。
優しい表情をして……
この時、私は、初めて___
人の温もりを感じた___
「……うっ…うっ…」
私は、温かいアイツの腕の中で、泣いた。
ただただ泣いた。
まるで、子供のように___
「…………………」
泣いて、泣いて…アイツの服が濡れていっているのに……それでもアイツは離さなかった。私を、ずっと抱きしめてくれた。
優しい…表情で。
「……もう、離していいぞ。」
私は数分して泣き止んだ。
「分かった」
アイツは私を離した。
「そういえば、名前は?」
「名前は……無い」
そりゃそうだ…産まれてすぐに、名前も付けられず、捨てられたんだから。
「そっか〜…じゃあ、私が名前を付けよう!」
「…え?」
アイツは、さっきの優しい声とは変わらずだが、さっきとは違く、テンション高めなトーンで言った。
「君、性別は?」
「女だけど…」
「女の子か〜…」
アイツは、「うーん」と考えた。
私は、なんか嬉しかった。私の為に、考えてくれてるから。
「……よし、じゃあ君の名前は綺麗の麗と華と書いて、麗華《れいか》!」
「麗華……」
「うん!」
アイツは子供のようにニコッと笑った。
「……ありがとう…えっと……」
「私は、千夜!よろしくね!」
「千夜…よろしく」
アイ………千夜は、私を暗闇の世界から、光の世界へと、連れ出してくれた。
つまり、千夜は私にとって、恩人なんだ。
「……千夜さん」
「ん?」
「………ありがとう」
私は、千夜の真似をして、優しい表情で感謝を伝えた。
「……似合ってる」
「…?」
「麗華は、笑顔がよく似合う」
「!!」
千夜は、優しい表情で言った。
「(あぁ……やっぱり……)」
(温かいなぁ…)
コメント
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素敵なお話だね(*^^*)
ノベルも書けるだなんてやっぱ最高だよお前☆ あったかい☺️