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目が覚めると、私は布団の中に居た。
「…ここは?」
「私の家だよ」
横から声がして、ガバッと起き上がったら千夜が居た。
…そうか。私、いつの間にか寝てたのか…
「あの場所から、ここまで運んでくれたの?」
「まぁね!」
「…ありがとう」
ニコッと自信ありげな彼女に、私は優しい笑顔で感謝を伝えた。
「さっ!朝ご飯の準備はできてるから、一緒に食べよ!」
「一緒に…?」
「うん!」
「分かった」
私はそう言って、立ち上がって、千夜に案内してもらった。
「わぁ…」
朝食は、米とお味噌汁と魚。どこにでもありそうなメニューだが、私にはご馳走に見えた。
「いただきます…!」
「いただきま〜す!」
手を合わせ、箸を取り、朝食を食べる。
その瞬間___
「っ…………………」
私は、涙を流した。
千夜が私の様子を見てびっくりし、慌てた様子だった。
「ど、どうしたの!?まさか、お口に合わなかった!?」
千夜がアワアワと焦りながら聞いた。
「違うの…なんか、温かくて……」
「…!」
「私、こうやって人に優しくしてもらえたのが…なんか…初めt…………っ!」
私はハッとし、泣き止んで、何かを思い出した。
「どうしたの?」
「…………………………」
何かがおかしかったんだ。この人と居ると、懐かしい気持ちになる。なんでだろう…こうやって人に優しくしてもらえた事なんて……だが、おかしいと思ったのは今日が初めてでは無かった。
あまり気にしてこなかったが、やっぱり引っかかった部分があった。
実は、私には一部記憶が無い。
私は今は15だ。その15年の中で、13〜14歳までの記憶が無い。
何故だろうか…記憶喪失?だが、それだと…千夜と居る時、懐かしい気持ちになる理由が分からない。
「…………………………」
「麗華!!」
「!!」
私は千夜の声で我に返った。
「大丈夫?なんか難しそうな顔してたよ?」
あ、顔に出てたのか。
「い、いや…その……」
私は気まづそうに慌てた。実際気まづかった。
「……なんでもない」
「そ、そう?ならいいけど…何かあったらいつでも言ってね!」
「う、うん」
笑顔で言う彼女に、私は胸が痛くなった。
「……あ!今日出かけないといけないんだった!」
「そうなの?」
「うん。麗華はどうしようかな…」
「留守番しておくよ」
「分かった。じゃあ、絶対に外に出ないようにね!」
「うん」
千夜は立ち上がって、出かける準備をした。
「じゃ、行ってくる!」
「気をつけて」
「うん!」
私は千夜を見送った。
「……さてと……」
私は、さっき朝食を食べた場所に戻った。
「よいしょっと……」
私は食器を持ち上げ、キッチンに置いた。
ジャーーーーー
蛇口を捻って、水を出し、食器を洗った。
食器を洗った事無いって言えるぐらい、洗った事がある記憶が無いし、見た事も無かった。
なのに、私は食器を落としたり、割ったりしなかった。それどころか、器用に洗って、新品の様に綺麗になった。
なんでだろう…これも、一部記憶が無い事に関係があるのだろうか…
私は食器を洗い終わって、1人部屋で考えた。
私は、千夜と会った事があるのだろうか…
13〜14歳までの1年間、何があったのだろうか…
何故、私には一部記憶が無いのだろうか…
記憶障害?だがそれだと、千夜の事も忘れているし、色んな事を忘れているに違いない。
一体何故…私は何を忘れてるのだろうか…
うーん、うーんと、私は考え、悩んで、時間が経った。
「海羅《かいら》!」
「…っ!?」
誰だ……
「海羅〜!」
誰なの……
姿だけでも見ようと、私は探し回った。
暗闇の中を、探して…探して……
でも、なんでかな…
「っ………」
涙が出てくる。
誰なのか分かんないのに……
千夜では無い。だって私の名前は……
「……海羅…?」
私はハッとした。声の主が呼んでいる海羅は、私の事だ。
千夜に見つけてもらって、拾われる前に…私は一度…誰かに拾われた。
だが、その誰かや、何があったのかなどの記憶が、やっぱり思い出せない。
「……誰なの…!」
私は、何も無い暗闇の中で、声の主に聞いた。
「……まだ、知らなくていいよ。」
「えっ…?」
そう言われ、私は光に吸い込まれた。
「待っ……!!」