テラーノベル
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「今度からモバイルオーダーしなくても僕に電話してくれたらいいよ、電車に乗った時点でね!僕がいなくても必ず誰かに作らせるから、いつでも言ってね! ハイ!お仕事頑張って!」
学が紙袋の持ち手を両手で掴んで桜に差し出してくれる、桜は紙袋を受け取って学に向かって満面の笑みを向けた
「ありがとう!学君!」
学に手を振りながらガラス扉を押し開けると桜のバッグがドアに軽くぶつかり、書類がさらに飛び出しそうになる、店内のお高くとまった客がチラリと振り返り、慌ただしいわねとばかりにクスッと笑う
桜はそんな視線も気にせず、バタバタと御堂筋の大きな歩道をパンプスの踵を鳴らして走って行く、彼女の背中はまるでコメディ映画のヒロインが時間と戦うように必死で愛らしかった
その直後・・・ 信号待ちの交差点にジンが現れた、マウンテンバイクに跨った彼の姿は、朝の光に照らされ、まるで都会の戦士のように映える、信号が青に変わると、ジンは軽やかにペダルを踏み込み、ハマーバックスの前を颯爽と通り過ぎた
この都会の喧騒の中で彼らは同じ目的地を目指す、ハマーバックスの看板のロゴの女性は、まるでそんな二人の物語を見守る、静かな観客のように輝き続けた
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御堂筋の中心部にそびえるガラス張りの高層ビル、その30階にITアプリ開発会社「WaveVibeウェィブバイブ」のオフィスはあった
朝8時50分、自動ドアが滑るように両側に開くと、桜は息を切らしながらロビーに飛び込んだ
彼女のバッグが肩からずり落ちそうになりながら受付カウンターに駆け寄る
「10分前!遅っ!」
受付嬢の奈々が桜を見て鼻に皺を寄せ、咎めるように言った、桜は腕時計をチラリと見てほっと胸を撫で下ろした
「間に合った! 今日こそ遅刻するかもって焦っちゃった!」
受付嬢らしく紺色の制服にピンクと紺のストライプネクタイをきりっと締め、一昔前の女優の様なカーリーヘアに斜めに被った小さな帽子の姿の奈々が、カウンターの向こうで微笑んだ
「話は後よ! 早く行って! あと7分で『ターザン』が来るわよ! いつもぴったりなんだから」
「ありがと、奈々!」
桜はバッグを肩にかけ直し、ハマバの紙袋を持って、朝の混雑でごった返すエレベーターに滑り込んだ
スーツ姿のサラリーマンや、カジュアルな服装のエンジニア達に囲まれながら、彼女は30階のボタンを押した、エレベーターが静かに上昇する中、今日のスケジュールを頭の中で反芻した
―7分後―
ロビーの自動ドアが勢いよく両側に開き、ジンが颯爽と現れた
社長専用更衣室でサイクルファッションからダークグレーのビジネススーツに身を包み、鋭い眼光で前を見据える
彼の後ろには部下達がぞろぞろと続いて、まるで小さな軍隊のようだ
コメント
1件
ジンさんのあだ名ターザンなんだ🤣