テラーノベル
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春。
校庭を吹き抜ける風が、新しい季節の匂いを運んでくる。
高校一年生になった俺は、体育館へ向かう廊下を歩いていた。
「今日から部活見学か……。」
小さい頃から続けてきたバレー。
高校でも続けると決めていた。
体育館へ向かう途中、廊下の角を曲がった瞬間だった。
「わっ……!」
誰かとぶつかりそうになり、とっさに足を止める。
「ごめん、大丈夫?」
優しい声。
顔を上げると、一人の男子が少し困ったように笑っていた。
首にはバドミントン部のタオル。
制服の袖は少しまくっていて、爽やかな笑顔がよく似合う人だった。
「……あ、はい。」
思わず見惚れてしまう。
「怪我してないならよかった。俺、急いでて。またね。」
そう言って軽く手を振り、走っていく。
その背中を、俺はしばらく見つめていた。
「……誰、あの人。」
体育館へ着くと、隣にいた二年生が教えてくれた。
「ああ、あの人? バドミントン部の主将だよ。後輩にも優しくて、結構人気ある。」
主将。
その言葉だけで、なんだか遠い存在に思えた。
「……そうなんだ。」
それだけ返したのに、胸は妙に落ち着かなかった。
部活見学が終わり、帰ろうとしたとき。
「君、さっきぶつかりそうになった子だよね?」
また、あの声。
振り向けば、さっきの先輩が笑っていた。
「これ、落としてたよ。」
差し出されたのは、俺の学生証。
「ありがとうございます……!」
「気をつけてね。」
その笑顔だけで、胸が苦しくなる。
なんでだろう。
今日初めて会った人なのに。
家に帰っても、頭に浮かぶのはあの笑顔ばかりだった。
「……先輩。」
名前も知らない。
なのに、もう忘れられない。
その日から俺は、気づけば毎日、バドミントン部の練習場所へ足を運ぶようになっていた。
──この恋が、こんなにも苦しくなるなんて。
このときの俺は、まだ知らなかった。
コメント
3件
おいいねぇ
おお、第2話で一気に恋の予感が来たね! 廊下でぶつかりそうになった出会い方、めっちゃ王道で胸がときめくわ。学生証を届けに来てくれる優しさに、主人公が一瞬で惹かれていく感じがすごく伝わってきた。まだ名前も知らないのに「忘れられない」ってなる気持ち、わかるなあ。バドミントン部の主将って設定も、遠い存在感が出てて良い。続きが気になる!
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蒼音
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