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レイラに酷使されているレビンだったが、持ち前の高レベルな肉体で、与えられた仕事バツを何とか熟していた。

そんな日々を過ごすこと2日。

「ミルキィは飲まず食わずなんだけど良いのかな?」

「あら?知らなかったの?吸血種のヴァンパイアは人族と違って、あまり食べ物は必要ないの。代わりに血が補ってくれるわ」

レビンはここで2日過ごす事により、言葉遣いに気を使わなくなった。

レイラにとってレビンは、将来の義理の息子になるのだから、堅苦しい言葉遣いはやめて欲しかったようだ。

レビンがまんまとそれに乗せられた格好だ。

レビンに結婚の二文字は早過ぎるが……

何せレビンとミルキィは恋人でもない曖昧で周りがイラっとする関係なのだから。

「そうなんだ。ミルキィは何も言ってなかったから…」

本日の仕事を終えたレビンはテーブルに着き、夕食を食べながらの会話をしていた。

「あら。あの子はレビンくんと同じ食事を楽しみたかったのよ。その程度のことに気付かないようだと、ミルキィを奪われるわよ?」

「えっ!?ミルキィ誘拐されるのっ!?」

「……」

流石の自称恋愛マスターのレイラであっても、レビンの恋愛指導は匙を投げたくなった。

「…どちらにしてもミルキィはレベルすら摂取しているわ。普通のヴァンパイア以上に暫く飲まず食わずでもいいはずよ」

気を取り直したレイラは人知れず匙を投げ、話題を戻したのであった。

もちろんレイラは2日の内に何もしなかった訳ではなく、ミルキィの状態の確認を色々と行っていた。それにより、魔力的にも問題なさそうであり、長い生の間に培った医術の知識も使ってみたが、これもまた異常も問題も見当たらなかった。

(こんなに綺麗な上、珍しいヴァンパイアとエルフのハーフなんだ。ミルキィが誘拐されないように気をつけないとね!)

出来るかどうかは置いておくとして、確かにその心配はある。話は一向に噛み合わないが。

「わかったよ。それでエルフの国はどこにあるの?」

レイラは肝心な事をまだレビンに伝えていなかった。

なぜなら伝えてしまうと勝手に飛び出してしまいそうだったからだ。

そして、そんなレビンの速さや力に自身では対抗できない事もわかっていた。

「それはね。魔の森の中よ」

「えっ!?じゃあ近くなの!?」

レビンにとっては嬉しい誤算だった。しかし……

「近い…わけではないわ。魔の森は広大なの。ナキ村があるブルナイット王国より遥かに広いわ。

そして魔の森の中心から見て、こことは反対の位置にあるの」

「それは…詳しくは?」

「ごめんなさい。私も行ったことがないの。あくまでもバーン……バーンナッドという名の、ミルキィのパパから聞いた話なの」

(詳しい位置がわからなくても、国と言われてるくらいの大きさなら見逃さないよね?)

「何を考えているのかわかるわ。多分、普通に探しても見つからないわね」

「えっ?国だよ?そんなに小さいの?」

普通の感覚でいえば、国なんて見逃さない。

どうやら理由があるようだ。

「エルフはあるモノに長けているわ。それは精霊魔法よ。

エルフやダークエルフ達は魔法とは違う精霊魔法を使って、外部から国や村を隠しているの。

だから魔の森でも生きていけるのよ」

「隠すってどんな風に?」

「景色を曲げて見せてたどり着かせないと聞いたわ。私は以前ここに来たばかりの頃に、中心部以外の魔の森を隈なく見て回ったけど、エルフの住処どころかエルフにすら会わなかったわ。

知らないうちに精霊魔法に掛かっていたとしか思えないわね」

「そうなんだ。ミルキィママさんが見つけられなかったのなら、実際すごい精霊魔法なんだろうね」

どうやら一筋縄ではいきそうもない。

レビンはそう思うとため息が自然と溢れた。

「一つだけそれを突破出来る可能性があるわ」

「えっ?!何それ!?」

この問題が急に解決出来そうな話に、レビンは食いついた。

「ミルキィの首飾りよ。あれはバーンがエルフの王族である証として持ってきていたモノなの。

精霊魔法に長けたエルフの王族の首飾りがただの首飾りだと思う?

私は思わないわ。

もちろん結界のような精霊魔法を突破出来る効力があるのかはわからないけれど、何かしらの効力はあるはずよ」

「確かに……でも、それは僕が預かって良いモノなの?」

ミルキィが肌身離さず大切にしていた首飾りである。

親子どころか顔も知らない赤の他人にそんな大切なモノを預けても、父親は良い顔をしないだろう。

レビンはそう思うが。

「いいわよ?あの人が私にくれて、私があの子にあげたの。

ミルキィならレビンくんに預けるのを反対なんてしないわ」

(それに未来の息子なんだからバーンも良いって言うわよ)

もしバーンナッドが親バカなら許されない事だろう。

レビンも『いいのかな…?』と懐疑的ではあるが、他に方法もないので受け入れることにした。

「あっ。それで一つ気になったんだけど…」

「ん?何かしら?」

「なんで魔の森の中央には行かなかったの?」

レビンの疑問にレイラはアホの子を見る目で答える。

「はぁ…魔の森は中央に行くほど魔素が濃くなるわ。魔素が濃いと強い魔物が寄り付くのよ。

つまり、魔の森の中央は、化け物のような強さの魔物がいるってことよ」

「そうなんだ!いつか化け物を見てみたいなぁ…あっ!ミルキィが起きたら誘ってみよっと!」

可愛い我が子を地獄のような場所に連れて行こうとしている。

そんなレビンを怒ろうかと思ったが、レビンも同じ化け物強者だと思い直し、言葉にする事を堪えた。

自身より格上のモノを止める事など叶わないのだ。

ただでさえ厳しい世界。その世界でもそれが如実に現れる魔の森で暮らしているレイラは、素直に諦めることにした。

「行くとなるとレビンくん一人ね。流石にこの状態のミルキィを辿り着けるかわからない旅に同行はさせられないわ。

それに一人ならかなり早く探せるわよね?」

「うん。僕もそう思う。必ず見つけてくるから、それまでミルキィをよろしくお願いします」

レビンは座ったままであるが、深々と頭を下げた。

「私はこの子の母親よ?安心してやるべき事をしなさい。

後、バーンに手紙を書くから明日渡すわね」

「うん。よし!そうと決まれば今日はゆっくり休むね!」

レビンはそう伝えると、急いで夕食の片付けをするのであった。

(ミルキィが料理上手になるわけだ…)

もう一人の吸血鬼の手料理に慄いていた。

この吸血鬼母娘の手料理に、レビンの胃袋は人質に取られていた。



翌朝。家の前にて。

「これが首飾りと手紙よ。バーンによろしくね」

「うん。必ず戻ってくるね!」

ミルキィとはすでにお別れを済ませている。

レビンは今生の別にするつもりもなく『行ってきます』の一言で済ませた。

「方角は大丈夫かしら?」

「うん!行ってきます!」

レビンは駆け出し、レイラの視界からすぐに消えた。

「はぁ。本当に真っ直ぐ行くのね…」

レイラは中央部を避けるルートを提案した。

レイラ自身も禍々しい魔素を前に通らなかったから、何がいるのかは知らない。

しかし、レビンは興味よりも早さの意味でそちらを選択したのだ。

それがわかっていたので、レイラは何も言えなかった。

可愛い我が子を救おうとしているのだ。世界がレビンの敵になろうとも、自分だけは理解者でいなくては、とレイラはレビンの危険を甘んじて受け入れることに。

「必ず生きて帰ってきなさい。じゃないと、私がミルキィに怒られるわ……」

麗しの魔の森の住人は、恐らく自分より強くなっているであろう娘に若干怯えていた……




レベル

レビン:31(130)

ミルキィ:???

混血の吸血姫と幼馴染の村人

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