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薄暗い森のなかに差し込む一条の光。それを切り裂くナニカ。
『グギャオォッ!?』
魔物ごと一条の光を切り裂いたのは、レビンの神速の剣である。
「うん。段々と強くなっているんだろうけど……僕も倒す度にレベルアップしてるからわかんないや」
魔の森を真っ直ぐに突き進むレビンは、現在中央部に差し掛かかった位置にいる。
博識であるレイラから口酸っぱく伝えられていたので気を引き締めて掛かっていたのだが、レビンには依然脅威とは思えないでいた。
魔物が徐々に強くなっていくペースと同じくらいのペースでレビンも強くなっているからである。
「こんな簡単に強くなって良いのかな?まぁ実際成れてるかは自信ないけど……」
他の人ではこうは行かない。
例えば魔の森の入り口に出てくる魔物を余裕で倒せる普通の人種がいるとしよう。
人種にもよるがそのモノは恐らくレベル60以上はある。
そして余裕で倒せるということは10体20体倒したところで、その者のレベルは上がらない。
しかし、レビンは強さとレベルがかけ離れている。
現在レベル31以上であるが、中央部で人族が生き残る・・・・にはレベル80以上は必要である。
あくまでも生き残るのであって、そこに潜む魔物に勝てるとは限らない。
レイラのレベルは70である。魔法に長けたヴァンパイアは魔法が使えれば同レベル帯の人族よりも強い。
そのレイラですら行きたくないと思う場所なのだ。
レビンが魔の森の奥地へと進めど魔物の脅威を実感できないのは、お手軽なレベルアップの影響だったのだ。
強さとレベルがまだまだ噛み合っていなくて、現在も一体倒す毎にレベルが上がっている。
そして、何もそれはレビンだけの特権ではない。
魔物や他の人種の話を少し紹介しよう。
この世界はレベルというモノで管理されている。
では、レベルが全ての生き物にあるのかというと、それは違う。
魔物と人種以外の動物にはレベルが存在しないのだ。だから狩人がいくら動物を狩ってもレベルは上がらない。
レベルをもつモノ持たないモノの違いは魔石の有無である。
人族も他の人種も例に漏れず、その身体に魔石を有している。
それゆえ歴史に抹殺された研究者の中には『人種も広義的には魔物ではないか?』と唱えた者達もいた。
もちろん歴史に抹殺されてきたことからも、それは異端の考えとされてきたのだ。
では、レベルは常に生まれた時から一緒なのか?
皆この世に生を受けた瞬間は等しくゼロである。しかし例外はいくつか存在する。
その一つはダンジョンである。
ダンジョンの魔物は生まれたところの魔素の濃さからレベルが違う。
濃い(奥の)ところで生まれた(発生した)魔物はその瞬間から高レベルなのである。
では魔素の濃い魔の森で生まれた魔物は?
それは0である。
あくまでも濃い魔素を魔物が好んで集まるからそこに集まっているだけである。つまりここで生まれた訳ではないということ。
そして、その中での生存競争に勝ち残ったモノは必然的に強者になる。つまりレベルが上がるのだ。
簡単に言うと、ゴブリンでさえ魔の森の中心部にいる可能性はゼロではない。
もしいれば歴史的なゴブリンの強者であるが、残念ながら確認されたことはない。
ダンジョンが特別な場所であり、何らかの意思を感じられるのは、この辺りが原因かも知れない。
そこで一つの疑問が生まれる。では魔物の強さは種類ではわからないのでは?と。
それは否だ。
生まれ持った強さはその種により違う。
魔物ではないが獣人族と人族を比べてみよう。
人族は人種の中で全て低く、高いところはない。
人族=フィジカル△魔力△魔法適正△精霊魔法適正×
獣人族=フィジカル○魔力△魔法適正×精霊魔法適正×
が平均的な能力である。
つまり魔法を使わない限り、平均的な人族は平均的な獣人族に同レベルで敵わないのである。
そこに同じ0レベルでの違いがあるのだ。
極端な例で言えばゴブリンと幻の種族ドラゴンで比べれば顕著である。
生まれた時、すなわちレベル0時の比較では
ゴブリンのフィジカル値を10とすれば
ドラゴンのフィジカル値は300である。
敵うはずがない。
もっと言えば、レベル99の素手のゴブリンとレベル0のドラゴンであっても勝負にならないのだ。
ちなみに平均的なレベル0の成人のフィジカル値は15くらいである。
すぐ上にはオーク辺りのフィジカル値20がある。
つまり人族は同レベルのオークには素手では敵わない。
もちろん素手で魔物に挑むようなもの好きは少ないが、例外はどこにでもあるのだ。
この話を纏めると、レビンと同じく元々強い魔物や種族であればレベルを上げやすく、さらに強くなり易いといえる。
人は弱い生き物である。しかし、そこに創意工夫を足せば強者にも届き得る存在でもあることは忘れてはならない。
「でも良かった。剣が丈夫で」
ここの魔物は総じて硬い。
ヒヒイロカネが部分的に使われているとはいえ、レビンの速さが無ければ刃こぼれしたり、最悪折れていただろう。
もちろん普通の黒曜鉄の剣であれば使い物にはなっていなかっただろうが、現在刃こぼれもしていないのはレビンの高レベルな身体能力のお陰なのは紛れもない事実。
出会う……いや、高速ですれ違う魔物達を撫で斬りしていったレビンは、早くも中心部に足を踏み入れていた。
レイラの家からここまで凡そ300キロ。それを2日で辿り着いていた。
普通の人であれば、魔物がいなくとも1日に15~20キロ進めたらいいほうである。
通常辿り着けないほどのレベルアップを繰り返したレビンは、その身体能力と狩猟で学んだ森の歩き方を駆使し、長距離移動を可能にしたのだ。
「流石の僕でもここが異常なのがわかるな」
何が流石なのかはわからない。わからないが、恐らく魔法が使えないことを言いたいのだろう。
「何だかレベルアップとは違う身体の軽さを感じるな」
魔力を持つものは魔法の適正が低くとも、程度に差はあれど身体の補助に魔力を消費している。
それはレビンも例外ではない。そしてここは魔力の素となる魔素が濃い場所。そんな場所では、薄い所と比べて自身に宿る魔力が増える。
つまり、身体を補助する魔力が増えることにより、すこぶる調子が良くなるのだ。
「今なら無限に動ける気がする!」
気のせいである。
やる気とは裏腹に日は沈む。レビンは今日の宿に大木のウロを選んだ。
大木はその名に恥じない立派な木であり、直径は6m程もあり高さは窺えないほど高かった。
ウロ自体も小さな部屋くらいの広さがあり、そこまでの高さは10m程で中は乾いている。
「ここなら安全だなぁ。問題はこの上に敵がいないかだけど……探すのが面倒だからいいや」
魔の森の中心地ですら、レビンに危機感を植え付けることは叶わなかった。
夜の森は色々な音が鳴り響く。
それすらも子守唄に、レビンは移動の疲れを癒す為にグッスリと眠るのであった。
レベル
レビン:31→64(163)
ミルキィ:???