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千景の正体と、千景への気持ちに気付いてしまった僕には清算しなくてはいけない事が出来てしまった。昔の僕だったらヒステリックに相手に喚き散らす事しか出来なかったと思う。僕も大人になったのかな…。それとも周りに支えられていたからいつの間にか行き場の無い怒りの様な感情をコントロールする術が身に付いたのかな…。上手く自分と向き合う事も誰かと深く関わる事もまだ苦手だ。外野から自分の考えや行動を眺めて客観視する。
それと同時に自分がこれからしようとする事も自分を納得させてから行動に移した。
再度自分の気持ちと向き合う。前に進む為なのか、それとも自分を守る為になのか…。答えは分からない。僕はジュリと壮一に別れを告げに行く。
ジュリが働くキャバへ来た。場所は知っていたけれどここに来るのは初めてだ。入り口にナンバーのポスターが貼ってあり、ジュリの顔がデカデカとこちらを見ている。
「ふっ、やっぱりNo.1か。さすがジュリ。」
ジュリの活躍が素直に嬉しい。いつか言ってたっけ、「派閥なんて興味無い。この仕事は自分との戦いだから!」って。僕には自分とどんな戦いをしているのか全然ピンと来なかったけど、多くの客を相手にしてきて稼いでいるジュリにしか分からない境地なんだろう。カッコ良いな。と、思った。
店内に入ると黒服が僕に気付いて近寄ってきた。
「ご新規ですか?ご指名は御座います?」
「はじめてなんですけど、ジュリさんはお願い出来ますか?ツキって言ってもらえれば分かると思うので。」
インカムで中に声を掛けている。
「少々お待ちください。…はい。わかりました。お待たせしました。こちらへどうぞ。」
そう言うとVIPルームへ通された。
「お飲み物はいかがいたしますか?」
「水で大丈夫です。」
「今、ジュリさんを呼んで来ますので、もう少々お待ち下さい。」
「分かりました。」
ジュリがすぐに来れない事は分かっていた。被っている帽子を深く被り直してジュリを待つ。
「はじめまして。こちらご一緒してよろしいですか?」
チラッと顔を上げると女の子がしゃがんでこちらに手を差し出していた。
「はい。どうぞ。」
差し出された手に軽く触れて挨拶をした。聞かれた事にだけ当たり障り無く答えながら、ジュリが来てくれるのを待った。10分程すると黒服にエスコートされながらジュリが入って来た。
「ユウちゃんありがとー♡」
「はい、ありがとうございました。」
軽くお辞儀をしてその子は席を離れた。
「ツキ?ここに来るの初めてだね。すっごく嬉しかったけど、どうしたの?って聞いて欲しい感じ?」
「…ジュリ。話したい事がある。」
「うん。聞くよ。」
僕は今までの経緯と今の自分の気持ちを全てジュリへ伝えた。
「セフレの関係は解消して欲しい。」
「…わかった。で、私達はこれからどんな関係になるの?」
「え?」
「セフレって名前から親友にはなれない?」
「ジュリ、君って本当に凄いよ。僕は君を尊敬してる。そうなれたら嬉しい。でもまだちょっと待って。まだ時間を頂戴。必ず連絡するから。」
ジュリの優しさに泣きそうだった。
「僕、もう行くよ。ジュリのお客様を待たせてごめん。」
「みんなわたしの事大好きだから大丈夫だよ♡」
「ふふ、そうだね。こんなに可愛いんじゃ好きになるよ。」
「今更言うな!」
ジュリはエレベーターの前まで送ってくれた。
「ジュリ、ありがと。またね。」
「ツキ、大好きだよ!またね!」
エレベーターの扉が静かに閉まった。
◆◆◆◆
壮一へ連絡をして家へ向かう。マンションのインターホンを鳴らすとロックが解除された。
「いらっしゃい。入れよ。」
「いや、今日はここで良いよ。」
「何で?」
「壮一、話しがあるんだ。」
「話し?…いや、聞かない。」
「え?」
「聞くつもり無いから帰れ。」
「ちょっと待ってよ!」
「どうしても話しを聞いて欲しいって言うなら入れよ。」
「…わかった。」
部屋に入り、いつもの場所へ座る。壮一は僕の隣に座った。
「で、話しって?」
「ねぇ、何で怒ってるの?」
「別に、怒って無いよ。」
「そう。なら話すね。壮一、もうセフレはうっ!!」
壮一に抑え付けられて無理矢理キスされた。
「ちょっ、やめて。」
体格が良い壮一に力で勝てる訳が無い。それでも抵抗すると無理矢理服を脱がそうとしてきた。
「壮一!話しを聞いてよ!」
僕の言葉を無視したまま止まらない。最後までする気でいる様だ。こんなに乱暴な壮一は初めてだった。怖い。だけど、僕達はセフレだ。それに抵抗しても壮一相手では意味が無い。
「最後まですれば満足?いーよ。」
抵抗するのをやめて壮一の好きな様にさせた。すると抱えられてベッドへ連れて行かれた。自分で洋服を脱いで壮一に全て任せた。
もういつもの優しい壮一に戻っている。気持ち良い時間の中、壮一を受け入れ続けた。ぐちゃぐちゃになって行為が終わると壮一が口を開いた。
「ツキ、もう終わりにしよう。」
「…わかった。」
シャワーを浴びてから身支度をして玄関へ向かう。振り返ると壮一がこちらを見ている。
「壮一、今までありがとう。元気でね。」
僕は壮一と別れた。
・・・・
もう空はとっくに明るくなっている。疲れた身体のまま自分の家へ戻った。部屋に入り、ベッドへ横になる。自分で決めた事なのに、結局二人の優しさに甘えてしまった。ジュリは笑顔受け止めてくれて、壮一は自分から関係の解消を切り出してくれた。ずっと変わらないジュリと壮一の優しさに涙が止まらなかった。