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船の中で俺はどうやって北の海の方に行くべきかを考えていた。この世界は東西南北、4つの海があるのだが、それぞれの間で交流はあまりないと思っている。わざわざマリージョアに確認と了承を取り、船を出してもらうなんて面倒なことこの上ない。
だけどまあ、俺は海賊じゃないからな。でもこの船で行けるとも思ってないしな……。うーん……。
「商船にでも潜り込むか?」
その間船は誰かに預かっててもらわなきゃいけないからちょーっとばかり面倒臭いが……仕方ない、船を預けよう。俺は面倒ごとや犯罪ごとに首を突っ込む気はあまりないが、俺はそうでもして北の海に行きたい理由があるのだ。
クソッタレの城にいる間、優しくしてくれた戦闘力激高おっさんが北の海に隠居しているらしいのだ。その人に稽古をつけてもらうというのが目的だ。ちょっとしか会ってないけどあの人が強いってのは分かってるしな。稽古つけてもらおうと思ってたら帰ってたんだ。酷いよな。
心の中であの人に対する文句をぶつくさと言いながら近くの町に行って、適当に金を渡して船のことを頼んだ。これで大丈夫だろ。
「そんで、北の海行きの商船は~っと? ……お、あれだな」
大きめの商船を見つけた俺はそこに乗り込んだ。事情を説明して乗るのもいいが、断られたら面倒臭いので忍び込むことに。密航だって? うるさいうるさい。バレなきゃいいんだよ。
船員たちに見つからないようにこっそりと積み荷のあるところまで行き、積まれている木箱の影に隠れた。ここで息を潜めて北の海に着くまで待つか。着くまで深い眠りにつくことはできないなぁ……。
俺は目を閉じた。
「ん……」
船が止まるのを感じた。いけない、このままここでのんびりしてりゃあ密航がバレる。適当な木箱の中にでも入っとくか。木箱の中に入ってしばらくすると、俺の入っている木箱が浮き、どこかに運ばれていく。タイミングをちゃんと伺わないとな。そのまま木箱は動き続け、やがてゆっくりと止まった。それから再びどこかに動かされていく。
人の気配は……うん、しないな。俺は木箱から出て、辺りを見回す。どうやらここは倉庫のような場所のようだ。さっさと出て行かないとだなー。
積み荷から適当な紐を取り出して倉庫の高いところにある窓に投げる。よし、上手く引っかかった。俺は窓から縄を垂らし、するすると登っていく。そしてなんとか登りきり、縄を回収した。
さすがにここの警備が厳重だったらアウトだったが、そこまでではなさそうだ。俺は窓から飛び降りて外に出て、そこから脱出した。
外に出た俺は帽子を深く被った。一応念には念を入れてだ。顔を隠しておいて損はない。
港を出て、船から見えない位置に来たところで、俺は歩き始めた。とりあえず目指すは北の海のどこかにあるという村。そこであのおっさんを探す。
「……早く会いたいもんだ」
そう呟いてから、俺は歩き続けた。