テラーノベル
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💎「……おはよ」
教室に入った瞬間、
いつも通りの声が飛んでくる。
🐰「おー、いむくん!今日も眠そうやな」
🐤「また夜更かししたの?」
笑って返す準備は、もう体が覚えてる。
💎「まぁね。いつものことでしょw」
口角を上げて、
“大丈夫な自分”を貼り付ける。
——ほんとは、全然大丈夫じゃないのに。
席に座ると、スマホが震えた。
母からのメッセージ。
「今日も遅くなるから。
ご飯は適当に食べて」
短い文。
それだけ。
💎「……そっか」
誰にも聞こえない声で呟く。
隣の席のいふが、ちらっとこっちを見る。
🐱「なんかあったんか?」
💎「え?いや、なんも」
即答。
考える前に、嘘が出る。
いふは少しだけ眉を寄せたけど、
それ以上は聞いてこなかった。
——それが、逆に苦しい。
昼休み。
机を囲んで、いつものメンバー。
🐤「ねぇ聞いて!昨日さ〜」
🦁「それ前も言ってたやつやんw」
笑い声が弾む。
ちゃんと楽しい。
ちゃんと笑えてる。
……はずなのに。
🍣「ほとけ、今日静かじゃない?」
ないこが言う。
💎「え、そう?」
🍣 「うん。なんか…上の空」
一瞬、言葉に詰まる。
💎「そんなことないでしょw」
「ほら、ちゃんと聞いてるし」
そう言って、また笑う。
——“ちゃんとしてる”アピール。
りうらが、ふと真面目な声になる。
🐤「無理してない?」
空気が、少し止まった。
💎「……してないよ」
💎 「無理ってほどじゃない」
“ほどじゃない”。
その言い方が、
自分でも曖昧だって分かる。
りうらは何か言いたそうにして、
でも結局、何も言わなかった。
放課後。
部活もない日。
帰り道、ひとり。
イヤホンから流れる音楽が、
今日はやけにうるさい。
家のドアを開けても、
当然、誰もいない。
💎「ただいま」
返事はない。
冷蔵庫を開けると、
コンビニの袋と、メモ。
「ごめんね。
体に気をつけて」
謝られるほどのこと、
してもらってないのに。
💎「……気をつけるって、なにを?」
誰に言うでもなく、呟く。
自分の部屋に入って、
ベッドに倒れ込む。
天井を見つめながら、
頭の中だけが騒がしい。
——なんでこんなに苦しいんだろ。
殴られてるわけでもない。
怒鳴られてるわけでもない。
ただ、
「当たり前」みたいに放置されてるだけ。
💎「これって……甘えなんかな」
声に出すと、
余計に胸が締め付けられる。
スマホが鳴る。
いふ:
「さっきの、気になってさ」
画面を見つめて、
指が止まる。
——言っていいの?
——こんなこと。
数秒、迷って。
ほとけ:
「ごめん、ちょっとだけ疲れてるだけ」
送信。
また、嘘。
ベッドの上で、
丸くなる。
💎「……誰にでもある話、なんだよな」
そう言い聞かせるみたいに。
でも、
誰にでもあるなら、
なんでこんなに孤独なんだろう。
目を閉じても、
眠れない。
——この気持ちに、
名前がつく日は来るのかな。
「ちゃんとしてるね」って言葉が、
いちばん苦しかった。
第3話
“ちゃんとした子”
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