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翌朝、村田家では大騒ぎが始まっていた。
花子の結婚式が前倒しになったため、家中が戦場のようだ。
「着物はどこ!? 帯はどうした!?」
「カメラマンはまだ到着していません!」
親戚や近所の人々が入り乱れ、廊下を駆け回る。
花子は深いため息をつきながら、手に持った花飾りを何度も直していた。
「お兄ちゃん、本当にこれで間に合うの……?」
花子は兄、太郎の無茶な決断を心配する。
太郎は今日も泥だらけになりながら村の道を駆け抜けていた。
「大丈夫だ! オレは絶対に約束を守る! 一朗も花子も絶対守る!」
太郎の足は土にまみれ、汗で服が張り付いていた。
途中、川を渡ろうとして転んだが、すぐに立ち上がる。
村の犬も太郎の後を追いかける。
「ワンワン!」
「おう、ついてこい! 友情と家族のためだ!」
その間、花子は母と親戚に手伝われながら着付けを整え、式場となる広場に向かう準備を進めていた。
村人たちも協力し、簡素ながら温かみのある装飾を施す。
ようやく広場の準備が整った瞬間、遠くから土煙が上がる。
「おおおおおお!」
泥だらけの太郎が全速力で走ってくる。
肩には犬、手には紅白まんじゅう。
花子は驚きと喜びで涙を浮かべた。
「お兄ちゃん……本当に来たのね!」
太郎は息を切らしながら叫ぶ。
「花子ぉぉぉ! 結婚式はちゃんと済ませたぞーっ!」
村人たちは拍手喝采。
「やっぱり太郎は嘘をつかない男だ!」
「わがままだけど、頼りになる!」
その日の夕方、太郎は一朗を救うために再び村を飛び出す。
「一朗、待ってろ! オレは絶対に諦めない!」
こうして、笑いあり涙ありの大奔走が村に静かに伝わった。