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余の戦いは先制攻撃をモットーにしている。座して窮地に陥るなど愚の骨頂。 黒服は突然目の前に現れた余を見て驚いていたが、言葉を発するまもなく余の回し蹴りを腹に受け吹き飛ばされた。彼の体は空中にきれいな弧を描いたが、最後にくるりと回転して足から着地した。
なかなかやるな!
余は再度瞬時に黒服の目の前に移動し、今度こそ致命傷を与えようと蹴りを繰り出そうとしたが――
「さっきの一撃で体中がしびれて、立っているのもやっとなんです。二発目を食らったら死んでしまいます」
黒服は何のためらいもなく余の前でひざまずいてみせた。
「さっきあなたを一目見てネロンパトラ様かと思いましたが、確かめるには戦ってみるのが一番手っ取り早いと考え、無謀な戦いを挑みました。数々の無礼をお許しください」
「おまえは余の敵ではなかったということか?」
「わたくしは陛下の執事のマコティーでございます」
「マコティー!?」
実はマコティーは余と同じで女だ。執事だった頃も男の格好をしていた。わたくしは男になりたいのですというのがマコティーの口癖。
「転生して男になれたか?」
「また女でした。残念ながら」
今も黒服という男らしい格好をしているから、勝手に男だと思い込んでしまった。顔を見れば転生前のマコティーと同じ顔をしているのに、目の前にいる人物がマコティーだと全然気づかなかった。
とはいえマコティーなら間違いなく味方だ。宮殿では執事だが、国政においても余の腹心として尽力した。味方と思っていた者らがみな裏切ったあとも、マコティーだけは余と運命を共にしていっしょに死んでくれた。その功績に報いるため、裏切り者たちに包囲される中、マコティーにも転生魔法をかけた。
「マコティー、二人で話したい」
「光栄でございます。転生後、毎日寝ている時間以外はずっと陛下を探して歩きました。死の直前、陛下と交わした約束だけがわたくしの生きる支えでした」
約束? 転生させる約束とは別のようだ。マコティーには申し訳ないが、まるで覚えていない。何しろ、裏切りへの怒りと死の衝撃のために、当時の記憶はみなどこかへ吹き飛んでしまったのだ。
いきなりマコティーに吹き飛ばされた徹也たちを呼んで、マコティーに謝罪させた。余も後日必ず稽古をつけるからと謝罪して、快諾を得た。
積もる話がたくさんある。美紅たち八人と別れて、余とマコティーは山下公園に残った。