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夕蝉のやくそく

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夕蝉のやくそく

3 - 第3話

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2025年09月03日

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買い物も滞りなく終わり、俺達はショッピングモール内のフードコートで少し早めのお昼ご飯を食べている。

俺はハンバーガー、みどりはピザ、きょーさんはカレー、レウはパスタ、コンちゃんはたこ焼きを食べている。


「ンマイ」

「よかったねぇ、みどり」

「ン!」


口の端についたトマトソースを指先で拭ってまた口に放り込む。

普段は落ち着いた雰囲気を醸し出しているみどりのワイルドな一面はこういうところで見られる。

ピザが大好きなみどりだが、野菜は大嫌いなので基本的に野菜の盛られたピザはあまり食べないけど…今回はタマネギがいるような気がしなくもないけど、どうなんだろう?


「ン………」


あ、すっごい顔顰めてる。

いつもみたいに俺に食べさせるわけにもいかないもんね、だってピザだし。

ピザの具だけ渡してくるって他人から見たらちょっとアレだしね、まぁ俺はあんまり気にしないけど。


「らだおー…?」

「ん?」

「……やっぱり、何でもない」


頼らずに食べ切るらしい。

えらいね、と頭を撫でると少し緩んだ表情でふにゃりと笑った。

あどけない表情に笑みを返してお茶を飲んだところで視線を感じて顔を向けると、きょーさん達が呆れたような、満腹でご飯を食べきれない時みたいな顔して俺達を見てた。


「え、なに?」

「何でもないよ!」

「れう、アカンで、はっきりせぇへんと」

「そうだそうだー」


両サイドに背中を押され…もとい突き飛ばされたのとほぼ同じような勢いで口を開いたレウが遠慮がちに頬を掻いた。


「えと、そのぉ…付き合って、ない…よね?」


隣の席に座るみどりに配慮してか、重要であろう部分だけ声を小さくして聞いてきたレウに、俺は呆気に取られていた。

付き合ってない?ってことでしょう?

今の一連の流れを見てってことか…それとも今日一日のこと?

おにーちゃん任務を遂行しただけで、変なこと別にしてないのに。


「?」


脳内では広大な宇宙に煌めく星々や天体が天の川と共に流れてくるくると回っている。

どこをどう見たら俺達が付き合ってるなんておかしな発想が浮かぶんだ…?

いや、俺は好きだけれども!

紛れもなくLOVEの方だけど!!


「だめや、レウ、コイツ無自覚や」

「らっだぁってば、罪だねぇ〜」

「らっだぁ…それは無いよ…」


とりあえず、こいつらの中で俺が悪い方向に評価されてることだけは理解した。

急な批判に理不尽を覚えつつ、全員トレーを返却してフードコートを出る。

もうそろそろいい時間だ。

門限という門限があるわけじゃ無いけど、5時前には帰って少し心配性な祖父母を安心させたい。

みどりも暗い時間帯に人とすれ違いたく無いだろうし…


「またねー」

「バイバーイ」


ガラガラ、古い家にありがちな音を立てて家に入るとみどりがぎゅっと袋を抱えた。

表情が見えないから確証はないけど、きっと欲しいものが買えたか喜びが続いているんだろう。


「あの、らだおくん……」

「んー?」

「アー…ナンカ_」


みどりが何か言いかけた時、タイミング悪く祖母の食事の用意ができたという声が重なってしまった。

すぐ支度すると返してからみどりに向き直ると、みどりは不安そうに木枠に曇りガラスが嵌め込まれた玄関の戸を眺めていた。


「えーっ、と…なんて言おうとしてた?」

「ンー……やっぱり、なんでもない!」


ご飯食べよー…あ!ニンジンらだおが食べてね、といつもの調子で話すみどりにまぁいいかと思って、俺は話の続きを聞かなかった。


「…?」


先を行くみどりを追いかけようとして、ふと玄関を振り返る。

なんとなく誰かに見られているような気持ちになったから振り返ったものの、背後には磨りガラスの扉だけ。


「…誰かいますー?」


そのまま手を伸ばして扉を開けるが、違和感の残るものはなく、玄関の戸を開けば見えるいつも通りの風景がそこにあった。


「ラダオー?」

「あ…ごめーん!すぐ行くー!」


もう一度だけ顔を出して、あたりを確認してから戸を閉めて鍵をかけた。

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