注意
・この物語はフィクションです。実在する全てのものとは一切関係ありません。
・淡々とした穏やかな感じの無自覚両思い系🇬🇧🇫🇷です。(主人公は🇬🇧さんです。)
以上をご了承の上でお読みいただけますと幸いです。
あれは、風に吹き倒された横殴りの粉雪が降った夜のことです。
私はワイン色のスカートを靡かせながら、傘も差さずに歩く貴女を見つけました。端正な顔を雪の冷たさで歪めている貴女。それだけならば、私は気にしなかったのかもしれません。
ですが、その姿がなんだかいつもと違う気がして、妙に不安に駆られてしまって、つい声をかけてしまいました。
「こんばんは、フランス。1人ですか?」
「、、、こんばんは。えぇ、1人よ。何の用?」
「いや、特に用は無いのですが、、、なんだか貴女が心配で。」
「心配?貴方が?私を?、、、意味がわからないわ。」
私がただの本音を言うと、貴女は困惑したように言いました。日頃の行いのせいでしょうか。
「こんな夜に女性が傘も差さずにい歩いていたら、紳士であれば誰だって心配しますよ。」
「あはっ何それ、貴方が紳士だなんて!おかしいわ。」
「失礼な、私ほど紳士と言う言葉を体現した男は居ないでしょうに。」
いつも通りの軽口、私にはそれがどうにも恐ろしくて、不安で堪らなかった。けれどそれを貴女に言える訳もなくて、唾と共に思考を飲み込みました。
「、、、ところでフランス、何処に行くつもりなんですか?酷い雪ですから送っていきますよ。」
「、、、別に、行く宛がある訳じゃ無いわ。ただ知らない何処かに向かって歩いているだけ。、、、ところでイギリス、1つ質問があるのだけれど」
「急に話が変わりますね。まぁ良いですが、、、それで、なんですか?」
「貴方は私を女性として認識しているの?」
「唐突ですね。、、、そりゃあ勿論、貴女の事は女性だと思っていますよ。私は貴女ほど綺麗で強い女性は見たことがない。」
「そ、そう。、、、やっぱり、貴方は変な男ね。好きでも無い女にそんな事が言えるだなんて。うっかり勘違いしてしまうかも!」
急な質問で、私はきっと要らない事まで口走ってしまったのでしょう。私を見つめる貴女の顔が、面白いぐらいに歪んでヒナゲシ色に染まっていきました。
「、、、貴女になら勘違いされても構いませんよ私は。」
「そう、、、お世辞のつもり? 」
「まさか、本心ですよ。、、、ところでフランス、やはり私は貴女が心配です。目的も無くこの雪空の中を傘も差さずに歩くだなんて、まるで、、、」
「死にに行くみたい?、、、確かに、そうかもしれないわ。」
そう言う貴女の瞳は憂いを帯びていて、淋しそうでした。かく言う私は、貴女のその姿に何も言えず、ただ傘を差し出す事しか出来なかったのですが。
「、、、その傘は貴方の物でしょう?イギリス。」
「えぇ。、、、このまま貴女を見送ってしまったら、きっと私は夢見の悪さに後悔するでしょう。だから貴女に預けるのです。」
「、、、気が変わったわ。私、今日はこのまま貴方と過ごして帰る事にする。」
「私の都合は無視ですか?まぁ良いですよ。近くにカフェがありますから、そこにでも行きましょうか。」
「えぇ、そうしましょう。ふふっなんだか楽しいわ。」
そう言って笑う貴女の顔がどうにも可愛らしくて、私は柄にもなく鼓動が高鳴るのを感じました。
、、、今思えば、これが私達の関係を変えた出来事だったのかもしれません。
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強くなる粉雪の中、辿り着いた小さなカフェで私達はお互いに紅茶と珈琲を注文しました。見た目のイメージのせいか、反対に差し出されてしまいましたが。
交換して、お互いが一口飲み終えると同時に貴女は口を開きました。
「ありがとう、イギリス。」
「何がです?」
「別に、なんとなくそう思ったか言っただけでよ。意味はないの。」
「そうですか。、、、私の事を変だと言う貴女も、大概不思議な女性ですよね。」
えぇ、本当に貴女は不思議なのです。貴女の一挙手一投足全てが私を気にさせる。こんな感情を私に与えた貴女を、不思議と言わざるとしてなんと言うのでしょうか。貴女は分かっていないようだけれど。
「そうかしら?」
「そうですよ。」
「ふぅん、、、」
釈然としない様子で珈琲に口を付けてから、貴女はぽつぽつと話し始めました。
「、、、私ね、何処かずっと遠くに行きたかったの。 誰も私を知らなくて、私も知らないぐらいに遠い場所。 理由は無いわ。強いて言うのなら、うん、、、ただただ消えてみたかったの。」
「、、、それは、一過性的に?」
「いいえ、多分永久的に。」
「、、、やはり、貴女に声をかけて正解でした。本当に後悔する羽目になるところだった。あの、フランス、、、」
「何?」
何が貴女をここまでさせるのでしょうか。何が貴女を誘うのでしょうか。言ってみれば、私に貴女を引き留め続ける権利をくれるでしょうか。、、、なんて考えが溢れてきてしまったので、私は紅茶に口を付けて全て流し込みまし た。
「、、、なんでもありません。、、、強いて聞くのなら、何故貴女はここにいるのでしょうか?わざわざ海を、トンネルを渡ってきたでしょう。」
「それは自分でも分からないわ。、、、もしかしたら、期待していたのかも。」
「期待?」
「えぇ、貴方が助けてくれるかもって。実際、助けてくれたわ!」
「助けてなどいませんよ。、、、貴女はまだ、遠くに行きたがっているのに。」
笑う貴女の目の奥はまだ変わらず憂いを帯びていて、目を離したら消えてしまいそうなのです。
どうすれば、それを取り払ってしまえるのでしょうか。
「、、、寒くて寒くて淋しくて仕方がないの。」
「え?、、、私のコートでも羽織りますか?気休めにしかならないと思いますが。」
「ありがとう、そうするわ。、、、ふふっ暖かい。」
「、、、この後、予定はありますか?よろしければ、一度私の家に行きましょう。」
「予定なんて、ある訳ないでしょう?勿論行くわ。」
そう言いながら笑う貴女の目は、いつの間にか普段通りの綺麗な目に戻っていました。
「、、、何故かわかりませんが、貴女が元気になったようで何よりです。」
「貴方のおかげよ?イギリス。」
「、、、そうですか。」
私達は何故か頬が薄く染まっていくのを感じながら、紅茶と珈琲をそれぞれ飲み干し店を出ました。
雪の日も、偶には良いものですね。
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おまけ:軽い設定
🇬🇧さん:お散歩中に見かけた🇫🇷さんに話しかけたMVP。🇫🇷さんに対して無自覚な愛がある。お家に連れ帰ったけど別に何もしていない。紳士なので。
🇫🇷さん:冬季うつでメンタルがヤバいことになっていた。🇬🇧さんの事が好きな事を薄っすら自覚し始めている。お持ち帰りされたと思ったら何もなかった。
コメント
2件

🇬🇧🇫🇷補給ありがとうございます!フランスの口調大好きすぎる!!!
投稿者は過去形からいつの間にか現在形になってる奴をやりたかった等と供述しており、、、