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夫とだけはしたくありません

36 - 第36話 雅史の言い訳

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2024年11月16日

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「さてと、揃ったことだし本題に入りますか?」


テーブルを挟んで私の前に舞花その隣に佐々木、私の隣に雅史。


男たちはなんとなく居心地が悪そうに見え、舞花と私は堂々として見えるのは、それぞれの心持ちの違いからだろうか。


「はい、私もわからないことがあるとスッキリしないので、ここでハッキリさせて欲しいです」


まるで学級会のように手を挙げたのは舞花だった。


薬指には、まだ新しい結婚指輪がキラリと光る。


「佐々木さんとこも、あれから何も話してないの?」


「感情的になって問い詰めてもはぐらかされると思って、今日まで我慢してた。妊婦の精神的ストレスは計り知れないんだから」


舞花は大きくなったお腹を、ゆっくり愛しそうにさすった。


「そうよね、ゆったり過ごしたい時期なのにね」


「ハッキリしないのは私、嫌なので。今日の結果次第で離婚するかもって、パパとママには言ってあるから」


「え!待って、舞花。なんで離婚になるんだよ」


カチャンとコーヒーカップが揺れて、コーヒーがテーブルに飛んだ。


佐々木の慌て方が、離婚を予想していなかったとわかる。


「あー、あのさ、わからないことってさ、アレだろ?俺の帰宅時間と佐々木の帰宅時間がズレてることなんだろ?」


「そう。それ!隼人君と雅史さんが一緒だったっていうのは嘘なんでしょ?」


舞花がぐん!と前に出た。


「隼人君は私に言えないところに行ってたから、咄嗟に雅史さんの名前を出したんだろうけど、雅史さんはまだ帰ってなかった、ですよね?杏奈さん」


テーブルに置かれた舞花のスマホが、録音していることに気づいてギョッとした。


まさか、このやり取りを全て両親に聞かせるつもりなんだろうか。


うかつなことは言えない、と思った。


カップを鷲掴みにしてコーヒーを飲んでいる雅史を見ながら、ゆっくりと答える。


「うん、舞花ちゃんから“隼人さんは雅史と偶然会って飲みに行って10時過ぎに帰って来た”って聞いたけど、雅史が帰って来たのは12時を過ぎてた。舞花ちゃんから連絡があって起きて待ってたから、間違いないよ。あの日は会社の退職する人の送別会だったんでしょ?あなたは」


「う、うん、そう!ちょっと離れた居酒屋にみんなで電車で行って、その後カラオケに行って電車で帰って来た時に佐々木とバッタリ。その後また飲んだんだけど、佐々木と別れてから記憶がぼんやりしてるんだよね。。やっぱり飲み過ぎはよくないね。ごめんね、舞花ちゃん、佐々木のことは心配しなくても、大丈夫だよ。なにもおかしなことはしてない。俺が酔っ払い過ぎて帰りが遅くなっただけだから」


普段私から“あなた”と呼ばれない雅史は、それだけで緊張しているようだ。


訊いてもいないことを、ペラペラと喋る。


「記憶がないってこと?2時間も?」


「いや、ないわけじゃなくて、キッパリと言い切ることができないくらい酔ってたってこと。ま、とにかく佐々木とは10時よりも前にわかれたと思う。その後はコンビニに行ったような、通りのベンチに寝転がったような」


目が泳いでいるから、嘘をついているのはバレバレ。


佐々木夫婦のことは、この際私には関係ない。


私は私の話をすすめる。


「そんなに酔ってたっけ?どちらかというといつもより酔ってなかった気がしたけど」


「?!」


_____ほらね


雅史の動揺が見てとれた。

雅史の顔つきが変わった。


いつもより帰りは遅かったけど、記憶をなくすほど酔っていなかったのは確かだ。


ちゃんと会話もしたのに、それも記憶がないと言い張るのだろうか。



「雅史さん、おかしなことってなんですか?」


私が訊くより先に、舞花が口を開いた。


話が戻っているけれど、ここは先に舞花の話をしてもらうことにして、雅史の反応を見る。


「あ、いや、その……浮気とか?風俗とか?」


「絶対してない?隼人君も雅史さんも?じゃあなんで、夜遅くなって変な言い訳して、そんなにうろたえてるの?」


新婚さんだからなのか、若いからなのか、真っ直ぐな感情で男たちに迫る舞花は、どこか眩しい。


_____夫のことをちゃんと愛してる証拠だということかな?


私はそこまで真っ直ぐな感情がない、万が一風俗だったら、それは私にも責任の一端があるから。


そういうことで成り立つ職業もあることは理解できるし、せめて私にわからないようにしてくれれば問題ないとさえ思う。


入れ込みすぎて経済的に破綻しては困るけれど。


でも、浮気は違う気がする。


あんなふうに写真を送りつけてくるような、おかしな女を相手にしているとしたら、雅史の男としての《程度》が知れるし、私の妻としてのプライドもいささか傷つく。


お金も払わず……ということはそこには気持ちが存在するのだろうし。


ふっと父親のことが頭に浮かんだ。


雅史が父親と同じような考えだったら、それは許せない。


ここは、ハッキリさせておかないと私の気持ちが整理できないと気づく。




「私もそれを訊きたい、雅史のその空白の2時間、どこにいたのか、誰といたのかきちんと思い出して!」


また何かおかしな言い訳をしてきたら、あの写真を出して問い詰めることができるから、強気に出た。


「あーっ!もうっ!なんなんだよ、たまに亭主の帰りが遅くなるくらい、どうでもいいだろ?舞花ちゃんもね、あんなことまでしてやっと結婚できた佐々木を、そんなことくらいで離婚とか言い出すのもわけがわからないよ」


「え?」


「…?」


「あんなこと?」


雅史が言おうとしていることが、わからない。


佐々木夫婦のことで何を知ってるというのだろうか?


それとも話題を変えて、自分のことから目を逸らさせようとしているのか?


佐々木夫婦も私も、雅史を見る。


雅史の表情がまたさらに焦っているようだけど。


「なんのことですか?あんなことまでしてって、なんのことを言ってるんですか?!」


「そうだよ、岡崎!俺たちのことで何を知ってるって言うんだよ!」


驚いたような怒ったような形相で、舞花が立ち上がる。


「ちょっと待って舞花ちゃん、落ち着いて、ね?雅史、ちゃんと説明して」


舞花を座らせ、雅史の説明を待つ。


“一つ嘘をつくと、その嘘を正当化させるためにさらに嘘をつく”


夫の雅史は、嘘の上にまた嘘を重ねていくのだろうか?


自分の保身のために、友達のことまで持ち出すとしたら、もう夫婦でいられない。







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