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夫とだけはしたくありません

37 - 第37話 舞花の裏垢?

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2024年11月15日

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「あー、いや、アレだ、ほら、なんていうか……噂?」


雅史はぽりぽりと頭をかきながら、誰とも目を合わさずボソボソと独り言のように呟く。


「噂ってなに?なんのこと?舞花ちゃんの何を知ってるの?」


「なんですか!きちんと説明してください、岡崎さん」


「俺も知りたい、俺たち夫婦の何を知ってるのか、言えよ、雅史!」


みんなから詰め寄られた雅史は、覚悟したように自分のスマホを取り出して、何かの画面を見せてきた。


「ほら、これだよ、舞花ちゃんの裏垢ってやつ」


雅史のスマホにはSNSの写真とコメントがあった。


「え?ちょっと見せてください、私の裏垢ってなに?そんなのないのに」


雅史のスマホを奪うように取り上げると、スルスルと画面をスクロールして確かめている舞花。


「これ、私じゃない、私のフリをしてる誰かです。っていうか、なんでこれを私の裏垢だと思ったんですか?!」


「え?だってほら、そこに写ってる男の手は佐々木だろ?その独特の腕時計とカフスボタンに見覚えがあるし」


どんな書き込みなのか知りたくなった私は、雅史のスマホを覗き込んだ。


横から佐々木も一緒に覗き込む。


そこには、『優良物件ゲット!』と題して、ことの次第をサラリと書いてあった。


コンドームに安全ピンでこっそり穴を開けておき、妊娠する時期を見計らって誘ったこと。


もちろん彼氏にはそんなことは言わず、デキタから結婚してくれと迫って婚約したと。


_____なに?これ。舞花ちゃんがこんなことを?


いくら佐々木の事が好きでも、ここまでするのだろうか?


横で同じようにスマホを見ていた佐々木を見る。


まるで無表情で、感情が読み取れない顔をしている。


「偶然これを見つけたんですか?そして、私が本当にそんなことをしたと思ってるんですか?」


「いや、だって、そう書いてあるじゃん?舞花ちゃんはどうしても佐々木と結婚したかったんだろ?だから子どもをネタに結婚を迫った、なのにさぁ、ちょっと帰りが遅くなったくらいで離婚とか言うのが、俺にはわからないな」


話題を自分のことから舞花の裏垢にすり替えようとしている。

そんな雅史に違和感を覚えた。


_____SNSなんてやってたっけ?



「うっ……ひどい…」


舞花が泣き出した。


「舞花、大丈夫。俺はこんなこと信じてないから。誰かのなりすましだろ?な、大丈夫だから」


「うわーん、私、こんなことしない」


佐々木が舞花を抱きしめて、背中をさすっている。


「ね、雅史はなんでそのアカウントを、見つけたの?それやってたっけ?」


_____SNSで浮気相手と連絡をとっていたんじゃないか?


そんな疑いを持った。


「え、あ、いや、偶然だよ。こんなのやってないし」


「じゃ、どうやってそれを見つけたの?誰かに教えられたとか?」


雅史の顔が、ハッとしたのがわかる。


「ぐ、偶然だって言ってるだろ?」


_____嘘だ


「偶然見つけたおかしなアカウントで、佐々木さん夫婦に波風立てるってなに?何が目的?自分が責められたから、話をそらした?」


「別にそんなつもりじゃ。じゃあさ、これがなりすましって証拠は?」


なんだか逆ギレしてくる雅史に、腹が立ってきた。


「も、もうっ、もしも裏垢だったら…私だったら、そんな見え見えのアカウントにしないっ!これが私のやつだから」


舞花は自分のスマホで、自分自身のアカウントを見せた。


そこには同じ写真があって、コメントは『大好きな彼と結婚します』そんな結婚報告だった。


「ほら、同じじゃん?」


雅史がドヤ顔で言う。


「あのさ、まったく同じ写真を使うかな?裏垢って見え見えになるよね?あ、ちょっと待って。ね、舞花ちゃん、他の写真も見せてくれる?」


舞花のアカウントの写真とその裏垢らしい写真は、全部同じだった。


コメントだけが、書き換えられている。


「あ、ここ、おかしいよ、ほら、この写真見て」


画面をスクショした写真を使ったのか、縁《ふち》がわずかにズレて二重になっている。


「ホントだ、わざわざスクショして使ってるんだ、なんでこんなこと……」


「舞花ちゃん、こんなことしそうな人に心当たりない?多分、わりと近くにいる人だと思うんだよね」


「……あ、でも、まさか!」


「なに、何か思い当たるの?」


「この、隼人君を罠に嵌めたっていうコメント、もしかしたら京香かも?」


「えっ!どういうこと?」


___あの、京香!!


ずっと心の奥に抑えてた名前が出てきて、心臓がドクンとなった。


雅史を見たら、雅史の顔も何かに驚いているみたいだ。

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