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side.若
藤澤「若井ー?」
若井「ん、どうした?」
藤澤「元貴知らなーい?」
若井「さっきなんか出てったけど…うん笑」
藤澤「はは…行こっか」
今日はボーカルのレコーディングなんだけど、珍しく長引いてる。
涼ちゃんも合わせがあって、俺も元貴とギターのセクションをしに来た。
で、さっきうちのボーカル様がスタジオを出て行った。
顔面蒼白で、目をウルウルさせて…と、いうことは。
さあ、ひっぱり上げに行こう。
元貴は階段下には来ない。調子がいい時も悪い時もいつも屋上で、空を見ている。
屋上のドアを開けると、ビンゴ。
フェンスに背中を預けて、三角座りをしている。
若井「元貴、おいで」
藤澤「頑張ったね。ほら、こっち」
涼ちゃんと一緒に元貴から少し離れたところに座って、声をかける。
肩がびくっと震えて、真っ赤になった目をこちらへ向けてきた。
大森「あのね、今日ね、声が変なの」
藤澤「そっかあ…んー、ハグする…?」
若井「元貴は頑張り屋さんだからなあ…笑」
大森「も、無理かも…」
抱き着いてきた元貴は少し体温が低くて、たまにひくっとしゃくりあげている。
普段上手くいかないのは俺とか涼ちゃんの方だから、怖いんだろう。
小さい体から、大きな不安が伝わってくる。
大森「俺、どうしよう…もう、」
若井「元貴。聞いて」
大森「ん…?」
若井「元貴が歌えなくなっても、楽器が弾けなくなっても、ずっとそばにいるよ」
藤澤「うん。だからね、ゆっくりでいいよ。待ってるから」
びっくりしたように目を見開いて、にっこり笑った。
自分が歌えなくなったらみんな離れていくって思ってるんだろうな。
若井「どうなっても、ずっと隣にいるよ」
大森「うんっ…!俺、頑張る」
藤澤「ふはっ!もういっぱい頑張ってるでしょ~?」
若井「今日は、楽器のレコだけにしよう」
大森「うん…ごめんね」
藤澤「じゃなくて?」
大森「…?あ…ありがと」
俺たちは人間なんだから、なんでもすぐにできるわけじゃない。
できないことを、認めてあげよう。
いつか君が「夢」を失ったら
心の手を取り思い出させてあげるよ
三人で一つなんです
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