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「ほな、行こか」
「え、一緒に帰るの?」
「うん、一緒に帰ろな?」
「わ、わかった」
下校時刻になり、僕はいつも通り一人で帰ろうとした。それなのに今、僕は転校生のイケメンくんに一緒に帰ろうと誘われている。
普段の僕ならあまり乗らない誘いなのに、観月くんに誘われると少し嬉しい。だから僕は観月くんと一緒に帰ることにした。
僕が賛成の返事をすると観月くんはとても嬉しそうな顔で笑っている。
「響くん!一緒に……」
観月くんと一緒に帰りたい人はたくさん居る。もちろん、誘っている人の中にはお昼休みに誘いに来ていた立川さんも居た。
でも、観月くんはその誘いを華麗にスルーし、僕の手を強く握り、教室を出た。
「無視しちゃっていいの?」
昇降口が出たところで僕は聞いた。観月くんは振り返り握ってあった手を離す。
「うん、大丈夫や、それとも俺には他の人と一緒に帰ってほしかったんか?」
「いや、そんなことないけど……」
「なら、大丈夫や」
観月くんはそう言いながら、一度離れた手をもう一度握り歩き出した。
校門を出てからも迷わず歩く。
歩くのが早く、手を引っ張られているので腕が少し痛い。
「ねぇ……!どこに…向かってるの……?!」
僕は少し大きな声を出して聞く。
その声を聞いて振り返った観月くんは少し焦った顔をしていた。
「ごめん、俺もどこに向かっとるか分からんわ」
そりゃそうだ。今日、転校してきたんだから、ここら辺に詳しいはずがない。
僕は耐えきれずフッと吹き出した。
観月くんにはとても失礼だが、最近あった出来事の中で一番面白くて、僕は壺にあっさりハマってしまった。
「もう、いつまで笑うん?」
観月くんのやれやれとした声が聞こえる。
「あと、ちょっとだけ……笑…わせて…」
僕は観月くんの顔を見ながら言った。
そうした瞬間、観月くんは僕に近付き僕の顔を優しく撫でる。
「笑った顔、可愛ええな」
急にそう言われ僕の笑いは止まり、頭の中は真っ白になる。そして、慌てて否定する。
「そんなこと…ないよ…」
「そんなことないんやったら、俺はそんなこと言わんけどな」
観月くんは僕の顔にぐんと顔を近付ける。
鼻息が当たる。もう少しでキスが出来そうな距離。
イケメンな顔で見つめられ、僕の心臓は激しく動く。心臓のドキドキが最絶頂になった時、観月くんはスっと離れた。
「奏、俺公園に行きたい」
さっきの言葉遣いとの違いで驚きながら、僕は「こ、公園か……」と嘆く。
そして、僕は観月くんの手をそっと握り、少し離れた公園に向かった。
観月くんへのお返しと言わんばかりに早く歩いているのに、観月くんは足が長いからか、余裕で追い付いてくる。
観月くんの身長は僕の身長(169cm)プラス拳1.5個分くらいだ。羨ましい。
「奏って趣味とかあるん?」
「しゅ、趣味?…」
「うん」
「…あー…えっと……」
僕はこの質問が苦手だ。
別に特殊な趣味という訳では無いし、趣味じたいはありきたりなものだ。
でも、その後の質問が怖くて言うことが出来ない。
「…ね、寝ること……かな」
だから、こういう時によく使うテンプレートな答えを言う。
「ふーん、そうなんや」
真面目に理解してくれている観月くんを見ると少し複雑な気持ちになる。
僕は観月くんに聞き返せばいいのに、そこまで気が回らなく僕たち二人の間には気まずい空気が流れた。
「…あ、着いたよ」
「ほんとや、桜田公園か、ありがとうな」
桜田公園はここら辺の中では少し大きな公園だ。そんな公園に入り、人目に付かなそうなベンチへと向かう。
見つけたもののそこにはスーツを着た二人の男性が座っている。
二人は二人だけの世界観に入っていて、隣のベンチに座るのも気が引けた。だから、僕はそこから少し遠いベンチへ観月くんと向かおうとした。
「あっここいいですよ」
僕たちが他のところへ向かおうとした時、スーツを着た男性が喋りかけてきた。
その男性は隣のベンチを指差している。
「ありがとうございます、では」
僕が困惑していると、そんな僕とは違う様子の観月くんが落ち着いて答えた。
本当は離れたかったが、そのまま流されてしまい、僕は隣のベンチに座った。