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⚠年齢操作、時系列などの捏像、ハイパーレーザー×カタナ前提のシュリケン×カタナ、じぽじゃないです、ほのぼの、失恋要素はなし
正午近く、ジーブズデンは中天に上った太陽の木漏れ日と暖かい空気に包まれていた。豊かな緑に包まれる木造の平屋が点々とあり、それもまたこの地域の雰囲気をより過ごしやすいものにしていた。
シュリケン、五歳。
一輪の花を目の前の自分よりもずっと背の高い男に差し出す。片目にガラス玉をはめた彼は対角に見合った大きな影を落としながら茫然と少年を見下ろす。
「…俺に?」
ん、と声を出して受け取れと言わんばかりに花を押し付けるシュリケンは口をへの字に曲げてむすっとしている。初恋をかっさらっていった男に責任を取らせようと躍起になっているようにも見える。花はシュリケンの小さな手の中に茎を据えている。
カタナはそんな彼を見て困ったように小さく笑った。
「ありがとう。しかし、すまないがお前の気持ちは受け取れない。」
お前はまだ子供だろう、とカタナは膝を抱えて少年と視線を合わせた。
諦めの悪いシュリケンは眉をひそめ、ぐいぐいとカタナに花を押し付ける。カタナが困っていたところに、
「あー!いたー!」
甲高い声が助け船を出した。。
木々の間からピンク色の角の少女が現れた。ご立腹のようで、頬を膨らませてずんずんとしゅりけんに近づく。そして彼の腕をつかむと、ヴァインスタッフは来た方向へと引きずっていく。
「なんでおままごとの途中でいなくなっちゃうの!」
「んーーーーーー!!!」
シュリケンはじたばた暴れながらも、花を持った手は依然としてカタナに突き出されていた。強く握られた茎はへし折れ、花はうなだれていた。
カタナは幼い少年少女の愛らしさに優しく微笑んで、去っていく二人に手を振った。
「カタナ、好き。」
シュリケン、十四歳。
仮面で顔を隠すようになり、角の色も変わったカタナへの初恋をシュリケンはいまだにこじらせていた。カタナは来る日も来る日もシュリケンからの思いをぶつけられているが、参る気配は一切ない。むしろその光景を微笑ましそうに眺めている。好きと言われては断って、言われては断っての繰り返しだ。
「俺はお前の気持ちには答えられそうにない。」
しかし、最近になって断る理由も変わってきた。
「俺には心に決めた人がいる。」
もちろんシュリケンが諦めるはずもなく、昔と変わらないしかめっ面でカタナを睨む。
「いーじゃん俺でも!なんで俺じゃダメなの!」
騒いでいると、カタナの家の扉が開く。
「シュリ!ここにいたのね!」
姉のヴァインスタッフだ。幼少期に比べれば大人びた彼女だが、やはり幼いころの面影というものは残るものだ。大股でシュリケンに近づき、彼の腕をつかんで𠮟りつける。
「またカタナに迷惑かけて!」
「迷惑かけてないもん!好きなだけだから!」
口喧嘩をしながらもヴァインスタッフはカタナに頭を下げる。うちのバカ弟がごめんなさい、と。そして暴れるシュリケンを引きずりながらカタナの家を出ていくのも日常茶飯事だ。
シュリケンは再びカタナの家に訪問する。玄関にあるブーツを見つけて眉間にしわを寄せる。それに加えて居間のほうから漂ってくる焼き菓子の匂いに口角を下げる。
シュリケン、二十二歳。
遠慮なしにずかずかと上がり込むと、カタナはいつものように座って本を読んでいた。
「…シュリケンか、よく来たな。」
カタナはシュリケンに気付くと本から顔を上げる。表情は読めないが声色は穏やかだ。少年は無遠慮に正座しているカタナの膝に座る。そして顔を上げてカタナを目を合わせる。
「好き。」
シュリケンは昔と何も変わらない。相変わらずガキっぽくて、相変わらず無礼で、相変わらずカタナが大好き。
「ふふ、すまないな。」
相変わらず、カタナの気持ちは向かないが。
シュリケンがむっとしていると、台所のほうからひょっこりと男が顔を出す。
「あ、やあ、シュリケンくん。」
ハイパーレーザーは嬉しそうに手を振った。対するシュリケンは恋敵をにらみつける。なんせ、彼はカタナの交際相手だ。
「ちょうどよかった。クッキー焼いたんだけど、食べる?」
「食べる。」
嬉しそうにクッキーがたくさん乗った皿を持ってきて机に置くと、ハイパーレーザーは一つを摘んでシュリケンの口元へと持っていった。シュリケンはされるがまま口を開けてクッキーを食べる。素朴な甘さが美味しい。もむもむと口を動かすシュリケンを可愛い可愛いとデレているハイパーレーザー。カタナはそんな2人を優しく見守っていた。
ハイパーレーザーのことは嫌いだが、こうやっているのも悪くないと思いながら、姉が駆けつけるまでのひと時を少年は楽しむのであった。