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見えてきた。あれだ。
大きく聳え立つ城は圧倒的な存在を放っていた。
外装はホワイトでところどころにこの国の紋章であろう印が刻まれていた。
「もしかしたら、あそこに癒姫華が…いるかも、しれない」一度言葉にしてみたら、考えたくない事実に向き合わなければならないことに喉がつっかえた。
それから、暫く歩き城門の前に俺は立った。すると、門番らしき人から声をかけられた。
「お前、ここへ何の用だ」
俺よりも高い身長をしており、剣らしきものを肩に抱えていた。威圧を感じさせる見た目に、今の俺は少し怯みそうになってしまった。
「ここに“鍵の子”と呼ばれている女の子が捕らえられていると聞いて来ました」
「…鍵の子、どこでその名前を聞いたのか分からないが、そいつに何のようだ?もしかしてお前が…」さっきと打って変わってビビる様子に俺はただじっと見据えた。
「どこで聞いたかは言えませんが、鍵の子に会わせていただきたいです」
「…いいだろう。おい、門を開けろ」その言葉と同時に、門の向こう側にいる者が門を開けた。
「有難う御座います」
そして俺は門の中に足を踏み入れた。そこで、現れたのは執事のような服装をした男だった。
「お待ちしておりました。アリン様。この私、ハサアムがこの先の道の御案内を致します」
おいちょっと待てよ…何で俺の名前を知っている?それにお待ちしておりました…ってまるで俺が来るのを楽しみにしていたような。
…これは、油断ができないな。
「…はい、よろしくお願いします」
────そうして俺は大広間に案内された。
そこは天井が見えないくらいに高く、床は赤色のカーペットで染まっていた。
目の前には階段がある。真っ直ぐ伸びた先に俗に言う王の席らしきものがあった。それから左に右にと階段は伸びている。
「では、アリン様。少々お待ちください。もうすぐでこの国の王モールバーク様がいらっしゃいます」国王…その言葉が何より俺に緊張を齎した。
数分後。王の席にその国王は現れた。
黒いコートを身に纏い、髪は肩ぐらいの、色は俺の髪と同じだった。不気味なその威厳を放つ男だった。
「よくぞ来てくれた。この時を俺は楽しみにしてたんだ…!!どれほど待ったか…本当に」不適な笑みを顔に表す。
「…国王陛下。失礼ですが、僕は貴方を知りません。誰かと間違っておられるのでは?」俺は真っ直ぐ見つめて言った。
「いやいや、そんなはずがないだろう」そう言うと、
「アリン…お前、鍵の子、この子を探しているんだろうぉお!」と叫び出したかと思えばそいつの裏の壁にモニターが映し出されそこに映っていたのは紛れもない俺がよく知る癒姫華だった────。