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「パパー!!」
星川がそう声をかけると、くるりとパパは振り向いて、此方に手を振る。
嬉しくなって小走りでパパの方に向かう。
「パパじゃねぇわ、なんで此処に?収録?」
「いや、星川打ち合わせがあって、パパは?」
「あたしも打ち合わせ、パパって叫びながら来るの社会的に死ぬからやめない?」
「じゃあ終わったら一緒にご飯行こ!!」
パパのツッコミは無視してそう言うと、先程まだの冷静なツッコミは何処へ、驚いたように視線を彷徨わせる。いや男子中学生かよ。33歳にしては反応がウブなんだよなー、おもろ。
「なに?星川とは行きたくないって事?」
わざと怒ったように頬を膨らませればあわあわと手を動かして必死に早口で弁明をする。
「いや、違くて、その星川さんが僕とご飯に行くって中々にその、犯罪味があるんじゃないかって言う、本当、あの社会的に怖いだけで決して嫌とかでは…」
よくそんな口回るなあ…星川の三倍くらい、いやもっと話してるでしょ。一文で此処まで面白い回答が返ってくるなんて、さすパパ。
「で?来てくれるの?来てくれないの?」
「い、行かせていただきます…」
「じゃ、打ち合わせ終わったらパパの方向かうから!」
パパの返事は無視して小走りで会議室へと向かった。
「ええ…俺の事ガン無視?」
本当、嵐みたいな奴だな…と思いつつも、此処でいつまでも考え込む訳にもいかず、諦めて会議室へと向かう。
「…あー、怖、なんで受けちゃったんだろ」
断る事も出来たけど、断らない選択をしたのは僕だ。それは気まぐれか、押しに負けたのかは自分でもよう分からんけど。
うんうん唸っていると、もう会議室についたようで、案外すぐだな、と思い扉を開ける。
「失礼しまーす」
「あ、夢追さん、早いですね、まだ10分前ですよ」
「割と社会の常識じゃない?にじさんじのライバーがあまりにも遅刻しすぎてるだけじゃ…」
他愛も無い話をしながら、打ち合わせをする。
…後一時間ちょっと。本人の前ではあぁ言ったものの、実際楽しみではある。財布が心配だけど、まぁなんとかなるだろう。
早く終われよ、打ち合わせ。そんな事を思いながら、口を開いた。
「遅れてすいませーん」
マネージャーにそう言って会議室に入ると、
まだ大丈夫ですよ、星川さんにしては早いですね、と言われた。
「…あれ、なんか良い事ありました?」
口元がにやけていたみたいで、マネージャーにそう聞かれる。
「パパと打ち合わせ終わったらご飯なんで〜!」
「パ…あぁ、夢追さんと?」
一瞬パパという言葉に動揺するも、すぐパパはゆめおさんだと気付いた様子で、うんうん、星川のパパがゆめおさんって認知されて来て良かった。
「そーそー、何奢ってもらおっかなあ」
椅子の背もたれに体重をかけて、天井を見上げる
星川の打ち合わせが終わるまで約一時間、楽しみで笑みが溢れる。パパも楽しみにしてくれてると良いな、なんて思った。