ある日の夕方__
僕は何かに吸い込まれるようにビルとビルの間の細い道に入った。
其処には昔の洋風な建物だった。
よく見ると其処には
「Antique Shop」
と書かれており不思議な雰囲気に引き込まれて行った。
その店の中には誰も居なく少し暗かった
「あのー、誰か居ますかー、?」
少しの沈黙が続いた後に店の奥から
「はーい、どうなさったんですか、?」
お婆さんのような嗄れた声が聞こえてきた
店の奥から来たお婆さんはびっくりしたような顔をし言った
「この店に若い人が来るなんて珍しいねぇ、
で、どうしたんだい?」
「あ、えっと、店に人が居なかったのでやってないのかな、と」
「おや、そうなのかい
じゃあゆっくり見て行っておくれ」
「あ、はい、」
そのアンティークショップには昔の人形や、椅子、そして机やライトがあった。
「凄く、綺麗…」
そう思いながら見ていると窓辺に一際美しいものがあった
その人形は少し埃が被り、煤汚れていたが汚いとは思わなかった。
窓から見えるのは些細な月明かりだがその人形専用のように人形だけを照らしていた
その人形を見ていると
「おや、それが気になるのかい?」
その声にビビり肩を上げると
「びっくりさせてしまったかい?
すまないね」
「あ、大丈夫です、
あの、その、この人形っていくらするんですか?」
「その、人形かい…」
急にそのお婆さんの声色が暗くなる
「その人形はね、昔からあるんだよ、
何度も持ち主が現れたんだが、その度に此処に戻ってきてもう誰も寄り付かなくなったんだよ」
「そう、なんですか、
何故帰ってきてるんですか、?」
「何か曰く付きらしくてね、
度々持ち主が亡くなったりするんだよ、」
「そう、なんですね、」
「それ、欲しいかい?」
「いくら、なんですか?」
どうしても欲しい、と言うわけではないけれど買えることから欲しかった。
似ている気がしたから。
僕は孤児だった。
僕の母が亡くなった6歳の時に孤児院に入れられた。
僕は生まれつき兄と比べられ大事にされた事がなかった中、母だけが僕を大切に育ててくれた。
だけどその母は僕の記憶の中でいつも泣いていた
父と兄には暴力を振られ
当時雇っていた家政婦にも文句や陰口を言われていた
そして母は身体的にも精神的にも病んでいった
そしてある日突然自殺したのだ
僕が小学校から帰ってきた日、
寝室で首を吊って事切れていた
その母に似ていたのだ。
だから、欲しい。
ただそれだけ、
「いいよ、上げるよ」
「え、?」
「曰く付きのものだからね、
何かあったら返して良いよ」
「そ、そんな、!
お金は払いますよ、!」
「良いんだよ、
折角綺麗なのにこんな窓辺に何十年も飾られるのは可哀想だ、」
「折角だから貰っておくれ」
「わかり、ました、」
貰ったのは良いけど、どう持って帰ろう…
その悩みが頭をよぎる
「この人形、大きいし輸送しようか?」
「良いんですか?」
「あぁ、良いよ」
「有難う、御座います、!」
そうして不思議なアンティークショップで出逢った不思議な人形との生活が始まるのだ。