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大正
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裏五条
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呼ばれていないのにデスターへやって来た最強の監察官。
木原久光は吠えた。
「うぉぉぉぉん!! てめぇらアトミルカこらぁ! 見てんだろぉ!? オレ様の芽衣ちゃまに怖い思いさせやがってよぉぉぉぉ! 許せんぜぇぇぇ!!!」
01番との交戦中だった小鳩とクララ、そして加賀美までもが戸惑いのあまり戦いの手を止める。
標的である01番は、突如現れた高出力の煌気を判定する。
「データベース参照。該当者、アリ。日本探索員協会所属、監察官。木原久光。危険度S。情報分析、完了。迎撃しつつ、司令官の指示を仰ぐ。『パーティクルレーザー』発射」
01番は粒子レベルまで細かく分散させた煌気を含む光線を放つ。
その一閃は極めて細く小さい。
熟練された煌気感知能力がなければ、回避するのも難しい。
その点、芽衣は優れていた。
彼女はとにかく敵と戦う事を避け続けていたFランク探索員時代から、相手の煌気を感知して逃走する術を無自覚に身に付けていたのだ。
それが、本人の意思で戦うようになってから生きる。
無自覚に身に付けた技量ほど戦いの所作に加える事は容易になる。
結果、彼女は回避能力をグングン成長させていった。
たった今放たれた煌気粒子砲を完全に認識できているのは、芽衣の他には加賀美のみ。
見学組を含めると、そこに六駆と南雲も加わるが、経験豊富なメンバーの中において若年の芽衣はやはり傑出した才能の持ち主だと言えるだろう。
「芽衣ちゃまぁぁぁ! 危ねぇ! うぉぉぉぉぉん!!」
そして、庇う必要のない芽衣のために身を投げうつ木原久光。
彼の煌気感知能力も凄まじい。
何が凄いかと言えば、ほとんど0に近いのである。
彼は煌気による視力や聴力の強化を普段から常時発現しており、そのため煌気が感知できずとも問題なく戦闘をこなす。
たまに思い出したように煌気を感知する時もあるが、実のところそれは「野性的な勘」と言う、人を超越した第六感によるもの。
「攻撃、命中を確認。被弾判定、確認。木原久光。ダメージ査定……0。理解不能。再計算開始」
「うぉぉぉぉん! なんかチクッとしたぜぇぇぇぇ!! 芽衣ちゃまに当たらなくて良かったぜぇぇぇぇ!! うぉぉぉぉん!!!」
サイボーグに「意味が分からん」と言わせる男、木原久光。
だが、木原にもエチケットと言うものが存在する。
彼は芽衣に優しく語りかけた。
「芽衣ちゃま? おじ様と一緒に戦ってくれる?」
芽衣は即答した。
「ちょっと具合が悪くなったので無理です。みみみっ。生理的に無理です。みみっ」
木原も即応じる。
「なんだってぇぇ!? 具合悪いの!? 芽衣ちゃまぁぁぁ!! ダメだ、逆神ぃ! 芽衣ちゃま連れてオレ様、本部に帰るわ!!」
「なんで僕に聞くんですか?」
「この場で1番強ぇヤツはお前だろうが!! 戦場では強さこそ正義だ! 強さこそカッコよさだ!! そうだろぉぉぉ!?」
「南雲さん、どうします?」
「木原くんが可哀想だから、君が助けてあげなさいよ。師匠でしょうが、君」
六駆は「うーん」と唸って、頭を悩ませた。
この男をお金以外の事で悩ませるとは、やはり木原久光は規格外である。
◆◇◆◇◆◇◆◇
司令官室では、6番が唖然としていた。
この事実をどう4番に伝えたら良いのかと、彼は狼狽える。
「どうしたよ、ヒャルッツ。なんか悪い知らせか?」
「あ、ああ。たった今、高出力の煌気がデスターに突如出現した」
「突如? ……そう言えば、さっき3番の野郎と戦ってたじいさんも急に反応が出たな。煌気を抑えるのが上手いのかと思ってたが。もしかすると、敵に空間転移スキルを使える者がいるかもしれねぇってことか」
「それは間違いないだろう。この規模の煌気出力をデスターの機器が見落とすはずがない」
4番は「おう。だろうな」と応じる。
それでもなお、6番の表情は曇ったままである。
「なんだ? まだ懸案事項があんのか? 言えよ。オレらの間に遠慮はなしだろ」
「……そうだな。今、01番から敵の煌気解析値が送られて来た。厳密に言えば、解析結果らしきものが送られて来た」
「イマイチ何が言いてぇのか分からんが。お前がそんなに狼狽えるほどのことか?」
「01番の煌気検知器は、3番が作ったアトミルカで最新の、高性能のものだ」
6番は「ふぅ」と息を大きく吐いて、司令官に伝える。
「計測不能とエラーが報告された。対象は日本の監察官。木原久光」
「エラー? そりゃ、01がガチでエラーを起こしてるんじゃねぇのか?」
「そう思って再計算の指示を出したら、たんぽぽのイラストが送られて来た」
「マジかよ。そりゃ震えるわ。01がぶっ壊れるほどの煌気を検知したってのか」
01番は、3番が「1桁ナンバーと同程度の戦闘力」と「自分と同じレベルの分析力」を搭載させたサイボーグである。
その人工知能が考える事を放棄して、たんぽぽのイラストを提出する。
3番の頭脳をよく知っている6番と4番にとって、それは脅威以外の何物でもなかった。
「…………! グレオ! 見てくれ! 下柳のデータに木原久光の記録がある!」
「マグマアニマルを素手でぶん殴ってんな。このモンスター、確か摂氏100℃超えるだろ」
しばらく黙り込んだ2人。
4番がぼそりと呟いた。
「自爆させっか」
6番も同じボリュームで呟いた。
「それもやむなしだ」
彼らが逆神六駆と対峙した時、一体どのようなリアクションをするのだろうか。
敵ながら、いささか気の毒になって来た。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「うぉぉぉぉん! 芽衣ちゃまぁぁぁ! おじ様の後ろに隠れておいてねぇぇぇぇ!!」
「みみっ。『幻想身・三重』! 危機回避です。みみっ」
芽衣が500人に増えた。
ここまでしっちゃかめっちゃかになると、もはやまともな編隊では戦えない。
「塚地さん、椎名さん。ここは木原監察官に任せよう。自分たちがこの戦いに加わると、巻き添えを喰らって無為なダメージを受けるだけだ」
加賀美の発案を否定できる材料がある者は、是非名乗り出て欲しい。
今すぐにでも1つ空いている監察官の席が五楼によって用意されるだろう。
「了解だにゃー。芽衣ちゃん、可哀想ですぞなー」
「何と申したら良いのでしょうか……。芽衣さん、日頃からすごいストレスに苛まれておられるのですわね……」
こうして、戦場はサイボーグ01番対木原久光と木原芽衣の構図となった。
なってしまった。
「うぉぉぉん! 芽衣ちゃまに囲まれて、オレぁ幸せ者だぁぁぁぁ! いくぜ、機械のヤツ!! ダァァァァイナマイトォォォォォ!! うおっ、いけねぇ!!」
木原久光、『ダイナマイト』を繰り出すも01番に触れる寸前で方向転換。
近くにあった壁に巨大な穴を空けた。
「逆神くん。私に分かるように解説してくれる? 木原さんは何やってんの?」
「今のはですね。ほら、見て下さい。あそこに芽衣の分身がいます。反射的に芽衣を避けちゃうんですね」
六駆の指さす先には、確かに芽衣が『幻想身』で出した分身が1体佇んでいた。
「へへっ! 汚ぇまねしてくれるぜ! 芽衣ちゃまを防御に使うとは! 今度こそいくぜぇ! ダァァァァイナマイトォだめだぁぁぁぁぁ!!!」
今度は反対側の壁に大穴を作る木原監察官。
理由はもう説明したくない。前述のとおりである。
「一応言ってみようかな。芽衣! 分身を解除したら?」
「みみっ。それはいくら六駆師匠の命令でも無理です。おじ様に芽衣の本体が捕まります」
「じゃあ仕方ないや!」
「ダァァァァイナマイあかーん!!」
木原監察官は、1分おきにデスターに穴を空けていく。
「状況分析、不可能。解読、不可能。戦局、理解不能。たんぽぽ、きれい」
01番に同意して、事の顛末は次話に譲ろう。
ホント、それな。
コメント
1件
うわっ、第342話、めっちゃカオスだったわ!w 木原久光の「うぉぉぉぉん!」連発が頭から離れないんだけど、あのノリで監察官ってマジで規格外すぎるよ。芽衣ちゃんの「♡♡♡的に無理です」に爆笑したし、分身で本体隠して防御に使うの、地味に賢い戦術で笑った。六駆が呆れながら解説してるところも含めて、このバトルコメディのバランスが絶妙すぎるー。01番がたんぽぽのイラスト送って思考放棄するのも含めて、全員の個性が爆発してて最高だった! 続きが気になるわー🔥