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「……本気で逃げ切れると思ったの?」
次の瞬間には体勢を崩されて床へと押し倒される。きつく掴まれた手首からは骨がきしむような痛みが走り、ライは息を呑んだ。
「勝手にいなくなろうとする子は、ちゃんとしつけないとね」
表情ひとつ変えずに、けれど瞳の奥底だけを黒く澱ませたロウが、逃げ道を塞ぐように覆いかぶさる。
ただの怒りではない。執着と冷たい独占欲を孕んだその低い声に、ライの背筋にぞっと悪寒が走った。
「は、なせ……っ、ちかっ……よるな……っ…!」
「逃げ足の早い足首も、二度と動けなくなるまで固定してあげようか。それとも……」
冷たく微笑んだロウの指先が、震えるライの顎を容赦なく捉え、有無を言わせず顔を上げさせる。逃げ場を完全になくした絶望と、言い知れない恐怖に、ライの瞳がみるみる涙で濡れていった。
「おしおきから逃げられると思わないことだね」
ロウはそう言うと、床に組み敷いたままライの両手首を片手でまとめて頭上に押さえつけた。もう一方の手が懐から取り出したのは、細い鎖のついた革の首輪。カチリと音を立ててライの首に巻きつけると、そのまま鎖を引いて強引に立ち上がらせる。
「歩け。足を踏み出す度に、自分の居場所を思い知るといい」
首輪を引かれるまま、ライはロウの後ろをよろよろと歩かされた。館の廊下は冷たく、裸足の足の裏にひやりと石の温度が染みる。逃げ出した末に捕まったのだと、その足音のたびに思い知らされるようだった。
「乗れ」
短い命令。逆らうことなど許されない。ライが少しでも躊躇えば、首輪を引かれて台のほうへと引き寄せられる。逃げる隙など最初からなかった。
「ロウ……、お願い、話を……」
「話は後だ。まずはその逃げ出そうとした体に、教え込むことが先だ」
ロウの手がライの服を乱暴に剥ぎ取り、汗ばんだ素肌を冷たい空気に晒す。
手首を枷に固定され、足首にも重たい金属の輪がはめられる。カチリ、と無機質な音が響くたび、ライの逃げ道はひとつずつ塞がれていく。
「……怖がらなくていい。」
ロウがゆっくりと器具を手に取る。無機質な金属のそれが、冷たい光を放つ。セットしていく指先は整っていて、目を奪われるほど美しい。けれど今その指が何をしようとしているのかを思うと、ライの背筋を冷たい汗が伝った。
「ッぇ゙♡♡ あ゙♡ ぁあ゙~~ッ♡♡」
与えられる快楽はいつもと変わらない。薬で敏感になった体を、器具が容赦なく責め立てる。拘束台の上でライは涙と唾液でぐちゃぐちゃになった顔を晒し、喘ぎ声を上げ続けた。
ロウは白狼の里にライを連れて行く前にもうすでに西で一通りライの体を調教していた。
頭の中は快楽で白く塗り潰され、逃げ出したいのか、もっと感じたいのか、自分でも分からなくなる。
けれど今日は、何かが違った。
セットを終えたロウが、一歩下がってライの痴態をじっと見下ろしている。
汗で張り付いた前髪の下、ぼやけた視界でもはっきりと分かるほど、ロウの顔は整っていた。道具を扱う指先も、伏せられた睫毛も、薄く開いた唇も、すべてが造り物のように美しい。
その男の瞳が、確かにライの痴態を舐めるように見ている。
「ッお゙っっ……??♡♡」
瞬間、体がぶわりと熱くなった。心臓が跳ね、腹の奥がきゅうと疼く。薬のせいでも器具の刺激のせいでもない、ただその視線に貫かれただけでライの全身が火がついたように燃え上がる。頭の奥で何かが弾けて、目の前が白くスパークした。
「……今日は、やけに感じるな」
ロウがわずかに口元を歪める。綺麗な顔に浮かんだ、薄い笑み。怒りも嗜虐も浮かべていない、ただライの反応を値踏みするような視線。それだけで、また体が跳ねる。
「視線を向けるだけで、ここまで感じるのか。……逃げたライが、俺の顔に欲情するなんてな」
「ちが……っ、ちがう……♡ そんなんじゃ……ッ♡」
「違わないよな?ライの体は俺の視線にすら飢えてる。逃げ出したくせに俺を見て濡らしてる…笑」
冷たい言葉が、耳の奥に直接流し込まれる。違う、と否定したいのに、体は正直で、ロウに見られているという事実だけで腹の奥が勝手にひくつく。与えられている刺激はいつもと同じ。それなのに、その視線が自分を捉えているだけで、ライは脳みそがスパークするような快楽に溺れた。
「〜〜〜ッッ♡♡ あ゙ぁあ゙あ゙っっ♡♡!!」
背中が弓なりに反り、鎖が激しく鳴る。目の前が白く弾け、自分が何を叫んでいるのかも分からない。快楽の波が引いたあと、ライはぐったりと拘束台の上で痙攣し、荒い息を繰り返した。
「これで終わりだと思ったか?」
ロウがゆっくりと拘束台に近づき、ぐったりしたライの顎を持ち上げる。涙で濡れたライの瞳を覗き込みながら、冷たくけれどどこか甘い声で囁いた。
「お前が逃げた分の代償、今夜中に払ってもらう。ライの体が、俺なしでは生きられなくなって、俺の顔を見るだけでイけるようになるまで、な」
その言葉に、ライの体がまた、びくりと跳ねた。違う、と言いたかった。言いたかったのに、口から出たのは、か細い吐息のような鳴き声だけだった。
ロウが手を離し、今度はゆっくりとライの首元に巻かれた革の首輪を指先でなぞる。カチリ、と小さな金属音がして、鎖が少しだけ短く繋ぎ直された。
逃げ場など最初から無いと示すように、ロウはわざと拘束台のすぐ横に立ったまま、ライの反応を観察し続ける。
「ライが逃げた理由なんて、どうでもいい。その足で俺の手の届かない場所へ行こうとした事実は、きちんと後悔させる」
「やめ……ぁっ♡ やめて……っ、おねが……♡」
「お願い? お前、今、やめてほしいんじゃなくて、もっと欲しがってる顔をしてるよ、ライ♡」
ロウの指がライの涙で濡れた目元を拭い、そのまま耳の裏をゆっくりと撫で上げる。薬で敏感になった体は、そのたった一度の愛撫だけで、また背筋を震わせた。
「ほら、俺の指に擦り寄ってる。無意識だとしても、ライの体はこうして俺を求めてる」
指摘されて初めて、自分の体がロウの手に縋るように揺れていたことに気づく。羞恥と悔しさで、ライの瞳からまた涙が溢れた。
「……泣くな。泣き顔も悪くないが、今はライの声が聞きたい」
ロウが拘束台の横に手を置き、覆いかぶさるようにしてライの顔を覗き込む。あの整った顔が、すぐそこまで近づく。綺麗だと思ってしまう。恐ろしいのに、美しいと思ってしまう。視線を奪われ、息を呑んだライの唇に、ロウがそっと触れるだけの口づけを落とす。
「ん……っ♡」
唇を合わせただけで、ライの体がぶわりと熱くなった。くちゅと濡れた音がして、ロウの舌がライの唇を割って入ってくる。舌を絡め取られ、上顎をなぞられるたびに、ライの頭はまた白く塗り潰されていく。
「んぅ……ッ♡ ふ……ぁ…っ♡きも、ちわるい!」
「……口づけだけでここまで感じるのか」
唇が離れた瞬間、銀色の橋が糸を引き、切れる。ライは涙で潤んだ目でロウを見上げ、ただ首を振った。違う、と否定したいのに、体が熱い。心臓がうるさい。頭がとろけて、何も考えられない。
「逃げ出したお仕置きとして、ライの体には俺の顔を、声を、指を、全部刻み込んでもらう。そうすれば、もう二度と、俺の前から逃げようなんて思わないよな?」
ロウの指が、ライの腹をゆっくりと下りていく。まだ終わっていない快楽の火種が、その指先に導かれて再び燃え上がる。ライはびくんと身を震わせ、かすれた声でまた喘いだ。
「あ……っ、やめ……、それ以上……っ」
「やめない。ライの体が素直になるまで、何度でも続ける」
ロウの声は、氷のように冷たいのに、耳の奥ではひどく甘く響く。その声を聞いているだけで、体の芯が溶けていく。ライはもう、自分の体が自分のものではないような感覚に陥っていた。
「ライが俺のものだと、その体に教え込んでやる。……今夜は長くなるよライ」
囁くように、けれど有無を言わせぬ口調でそう告げると、ロウは再び器具の設定を変え、ライの反応を楽しむように少しずつ、少しずつ、責めの強度を上げていく。薄暗い部屋の中、ライの泣き声にも似た喘ぎと、鎖の音だけが、いつまでもいつまでも響き続けていた。
#剣持刀也
みそすーぷ
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#ディティカ
コメント
2件

読んだよ〜!!😭💕 もうね、ロウの執着が重すぎてやばい…!「逃げた分の代償」って言葉にゾクゾクしたんだけど、あんな綺麗な顔で冷たく言われるの反則でしょ…!! ライの体がロウの視線だけで感じちゃうとこ、めっちゃエモかった…🥺「違うのに体が言うこと聞かない」みたいな、もどかしさが伝わってきて切なくなる〜! 次どうなるか気になりすぎます!朔夜さん、続き楽しみにしてますね🌸