テラーノベル
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俺が生きる春が何処から巡り来るのか、知らずに生きた。
分からないまま大人へと化けた。
ふと空を見上げて、自由そうに飛び回る燕が目に象られる。
『 …随分と気のない顔してんなぁ、 』
俺の悩みなんて知らん癖に。
アイツらと俺を、比べたこともない癖に。
俺も燕みたいに翼があればなぁ、
なんて悲観的に且つ呑気に考えて。
ただ考える度、悲しみに暮れて。
それさえあれば100年だって生きれる気がする。
100年先で、報われたなら。
会えることを願って、心配しないで生きれたろうに。
雨の降り始め。
いつの間にか、花瓶に飾ってあった 白い彼岸花 やら ネリネ やら ミヤコワスレ の花が落ちていることに気がついた。
ふと、嘘をつかれたように心が濁った。
強くなる雨。変わらない俺。
土砂降りに変わる頃には、窓を閉めようとしていた。
目についたのは、それらも構わず飛び続ける 燕だけだった。
あ ぁ 、羨 ま し い 力 だ 。
欲 し か っ た 。
一発まともにくらい、酸欠でぼーっとしていた頭から霧が退く。
当たり所が悪ければ、 危うくイかれるところだった。
安心したのも束の間、口からは血が零れ、慣れた鉄の臭いが更に濃く、同時に味がする。
両手を振りかざしてナくなるのを見届けた後、ブキを握りしめた手を一度止める。
空に唾を吐いたあの日の自分を憎む。
こうなったのは全部俺のせいだった。
あの日理想に恋した俺。
叶わずに、やがて記憶から消え去り、離れ離れで終い。
道を選んだのは他でもない自分自身だった。
耳に手を当て、こう話す。
『 こっち終わったでー… 』
声は次の任務を告げるだけ。
〔 次、ⅹⅹⅹさんのところ行けますか ? 〕
『 はいよー、 』
…あんまり好きではないこの感じ。
この状況は暖かくない。 ただ触れるものは温かい。
生ぬるく飛び散ったそれを払い拭う。
影が俺を通り過ぎる。
瞬け、羽を広げ 気儘に飛べ 何処迄もゆけ。
願った言葉は届かなかった。ただ自分には。
代わりに願った。
燕は飛ぶ。
『 100年先まで、憶えとけよ 』
今日も誰かに代わって。
わかっているのに脚を運ぶ。
愚直に指示に従いながら。
俺が通った後、其処彼処で咲く赤銅色を横目に探す。
居ない、居ない、居ない居ない居ない居ない。
あいつが居ない。
基地に戻れば声が刺さる。
したり顔でよってくる一般兵。
触れるなと言えば、無視でもすれば殴りつける的外れな罵声。
人が地獄と曰先にも春はあると信じてる馬鹿が、
『 ッはは、まだおるんかなぁ、 』
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
誰かを、愛したい。
でももう痛みは感じたくない。
雨が降り始め、霰が続く。
泣いていた空はどんより重く、その日がハッキリしないまま蘇る。
繋がれた縄を思い出す。噛みちぎれる程にボロボロだったそれは、俺を愛から解放した。
繰り返さないように。
まだ湧いてくる。次から次へと、〝誰かの大切〟が。
貫く。関係なく。狙いを定め、虎のように強く、何処迄もゆけ。
100年先も、貴方に会いたい。
『 ッまだ消え失せんなよ、っ ! 』
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
また同じなんだ。
また痛い思いで、辛い思い出を作るんだ。
『 もう、辞めてや、ッ 』
『 こんなのあんまりやって ッ、 』
まだ、終わらない。
何時まで続くのだろう。
何時まで生きるのだろう。
何時になれば死んでくれるのだろう。
何時になったら見つかるのだろう。
後ろに素早く振り向こうとして、視界が歪む。
突然、がくりと膝から崩れる。
限界が来た。もう終わりだ。
口の中が鉄苦い。
苦しめる為にしたことは、誰かを苦しめた。
結局は顔を合わさないままだった。
話しかけて置けばよかった、結局は何時も後悔ばかりなのに、どうして今日もしなかった。
見知らぬ顔に囲まれて、濁った赤銅色が目の前を割くように噴き出す。
感じない。恐怖、不安、怒り、痛みさえも。
ただ一つ、冷たいとだけ。
今、羽が広がる。
気儘に飛び、何処迄もゆく。
横たわって、気を失いかけて、目を開いたその時には、目の前に落ちていた。
地面が徐々に染まってゆく。広がってゆく。
生まれた時から羽があったように、生まれた時から決まっていた。
俺は俺でいた。いたかったんじゃない。
知らなかっただろう ?
『 ッな゛ぁ、ゲホッ、来世ではまた、゛ッ
俺の為に、飛ん゛でくれ゛やっ、ゴホッゴホ 』
紺色の翼。黒く染まった目。動かない身体。
全てが相応しい。
彼の声をもう一度聞きたい、
まだ、…
『 …… 』
ナくなってるといいなぁ、全部。
また会うかも知れないのに。
今迄の全てに、
過去の過ち、人との出会い、俺と燕。
最期は死別でくっきりと。
v』
【 F国、某ニュース番組 】
《 続いてのニュースです。 》
《 昨日、約4年という年月に渡って、続いて
いた、N国とW国の戦争が〝N国の勝利〟
という形 で終戦しました。 》
《 死人は第一次、二次世界大戦に次ぐ程の
数だと言います。 》
《 技術的先進国と言われていたN国では、
国民が大多数死亡する情報が見受けられました
が、 戦争では負け無し国家と呼ばれていた
W国では、国民の 死人、犠牲者はほぼゼロに
等しいそうです。 》
《 N国は多大な被害を受けながらも、
歴史に大きな名を刻むであろう、NW大戦争
に爪痕を残しました。 》
《 〜〜~~~…… 》
【 引用元:W国出身新聞記者著作
週刊ニュース新聞 「 swallow flies 」 】
W国、NW大戦争にてN国に敗戦。
国民 ( 軍関係者含めず ) 約5億2016万人中、
軽傷者約190万人、 重傷者約20万人 、
死者数約163人の計 約210万人 で、
過去最少犠牲者数だった にも関わらず、
NW大戦全体での死者数は 第一次世界大戦、
第二次世界大戦に次ぐ程の人数となっている。
技術的先進国であるN国に戦争国家であった
W国が負けた大きな理由として、〝幹部の死〟
が挙げられる。
数で負けたと言うとわかりやすいだろう。
N国は人口の多さで有名であることは周知の
事実。最初から勝てないとわかっていて、
人を集めに集めた。 だがW国は鍛え抜かれた
幹部、一般兵ばかり。
穴埋めとして即集められた一般人達から
したら、とても敵う相手ではないのは確かだ。
だからこそ数で一人一人確実に潰していく 。
総勢およそ1214万人にもなる一般兵、
軍基地内所属者は約506万人という
軍の約半分の隊員が犠牲となった。
それに含まれない幹部14人中、内2人の幹部の
死亡が確認された。
一人は情報本部長・指揮官である
〝クライン・ロボロ〟。
司令官な為、前線に立つ必要はないと
考えたが、人員不足もあったのだと考えると
不思議では無い。
そしてもう一人は近距離部隊隊長である
〝トイフェル・シャオロン〟。
最前線で戦っていたであろう近距離部隊隊長。
数にはやはり勝てない部分もあったのだろう。
両国大きな損傷を得、大して何も変えなかった
この戦争は、何を成したのだろうか。
誰にとって得であり、幸であったのだろうか。
失った命は戻って来ない。
帰ってきてくれはしない。
それでもまだ、人は戦争を続ける。
燕は飛ぶ。人に伝える為に。
人の願いを運び、100年先まで繋ぐため。
私達は、色とりどりの生命と
この場で共に生きている。
またいつか、会うことが、あるかもしれない。
では、次週の新聞で会いましょう。
*発行日:10月 17日*
戦争終戦 9月 22日
クライン・ロボロ 、トイフェル・シャオロン
両者命日
9月 20日 。
【 Fin . 】
コメント
1件
読了しました……これは、もう涙が止まらないですね。「燕」のモチーフが全体を貫いていて、自由への憧れと、叶わなかった願いが痛いほど伝わってきました。"さよーならまたいつか"という最期の言葉が、すべてを引き裂くように効いています。幹部の死亡が戦争の結果として淡々と報じられるラストも、彼の生を切り取るようでやりきれない。第1話でこれだけの情感を詰め込めるのはすごいです。素晴らしい作品をありがとうございました。