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「私ねぇ〜最近タイプ変わったっぽい」
「マジ?ただ気変わりやすいだけじゃね?」
「違うから!最近は俳優の竹上さん」
「竹上さんって竹上幸平さんのこと?」
「そうそう」
「うわっ。大人の魅力にやられてるじゃん」
「前はアイドルの山田くんだったよね?全然違うじゃん」
「だから変わったんだって」
「ねぇ、真風菜(まふな)は?」
そう聞かれると真風菜(まふな)は毎回困った。タイプというものがわからなかったから。だから毎回
「私も大人っぽい人が好きかなぁ〜」
と直前に友達が話していたことに合わせていた。短い春休みが終わり、新学期が始まる。
なぜか通い慣れたはずの学校もクラス替えがあるというだけで新しい学校に通うかのようにドキドキする。
学校の下駄箱のある玄関の扉の横に張り出されたクラス分けの紙を眺める。
自分の名前を発見して下駄箱へ向かう。自分の名前の貼られた下駄箱にスニーカーを入れ
持ってきた上履きを履いて見慣れた校内を進む。今年から高校2年生。
高校生活の中で最も楽しいと言われる学年。
部活に青春を捧げる者も2年生になれば後輩もでき、指導する立場になる。
そして3年生が引退したら部活では天下だ。恋する者、恋人がいる者はこの高校2年生がチャンスだ。
いろんなところへ遊びに行ったり、告白祭りだったり。
教室に入る。見慣れないクラスメイト。黒板の周りを囲んでいる。
席が書いてあるらしい。真風菜(まふな)も例に漏れず黒板の周りに行く。
前同じクラスだった女の子と会い、少し盛り上がる。席は五十音順。自分の席に座る。
ぼちぼち席が埋まってきたところで今年度お世話になる担任の先生が入ってきた。
「はいぃ〜。んん〜まだ空席があるな」
まだちらほらと空席がある。ここは黄葉ノ宮高校。偏差値はすこぶる低い。
そのため、少しやんちゃな生徒もいたりする。
「遅れましたー」
金髪ピアス。始業式だというのにネクタイも緩々。こういう生徒もざらにいる。
しかし反対にいうとそれほど自由なのだ。
「一州茗楽(イスミラ)。遅いぞ」
「遅いってったてまだ大丈夫でしょ」
「はい。全員揃ったところで」
1席空席がある。全員?と恐らく真風菜(まふな)も恐らくクラスメイトも思った。
「これから始業式だから。ちゃんと男子はネクタイ。
女子はリボンをしっかり絞めて。ブレザーもちゃんと着る」
こんな自由な校風の高校でも入学式、卒業式、始業式、終業式はきちんとする生徒が多い。しかし中には
「あ、ヤベッ。先生ーブレザー持ってきてない!」
という生徒も現れる。
「はあ…仕方ない。他にブレザー忘れた人は?」
いない。先程の金髪ピアスだけのようだ。みんなでゾロゾロと体育館へ向かう。
黄葉ノ宮高校はその校風の自由さ、偏差値の低さで人気で生徒数がかなり多い。
1年生と2年生で体育館は埋まり、3年生は教室で映像で始業式を見ながら参加するらしい。
校長先生のありがたく長いお話が始まる。スマホをいじり注意される生徒も目立つ。
校長先生の話が終わり、それぞれ先生方からの連絡事項が話され終了。
2年生の後ろのほうからゾロゾロと教室に戻る。
「えぇ〜ということで今日から新学期です。皆さんの担任を1年させていただく渋谷です」
「よっ!」
渋谷先生が金髪ピアスに視線を送る。
「えぇ、皆さんとは1年生の頃にも担任だった人
担任じゃなくても地理担当なので見覚えのある人も多いと思います。1年間よろしくお願いします」
拍手が起こる。渋谷先生は地理担当の先生で電車好き。
日本の地理を教えるときも、よく電車の話を挟んだりする生徒から人気の高い先生だ。
「ねえねえ、一州茗楽(イスミラ)くんじゃん。同じクラスなんだ」
「一州茗楽(イスミラ)くん有名だよね。めっちゃチャラいって」
「見た目通りじゃん」
「あぁ〜、でも私意外とタイプかも」
「マジ!?」
近場の女子が新クラス始まってすぐ恋バナを始めた。真風菜(まふな)は
私は未だに自分のタイプどころか、そもそもタイプってことすらわからんしなぁ〜
と思いながらプリントの裏に大きく「へのへのもへじ」を描いた。
「ふっ」
鼻で笑う。
私のタイプはこれです〜なんて
と思っていると風が吹いてプリントが飛ばされてしまった。みんなは拾える位置に落ちたが
真風菜(まふな)のプリントだけ運悪く廊下のほうまで飛んでいってしまった。
廊下にヒラヒラと落ちたプリント。廊下にはズボンを履いた子が立っており
その子の足元にヒラヒラと落ちた。そのプリントを拾う手。
「あ、窓際の子。窓閉めて」
窓際の子たちが窓を閉める。
「えぇ〜、これから皆さんにも軽い自己紹介をしてもらおうと思うのですが」
と言った後、渋谷先生は扉のほうに向かっていき、一度扉を開けて、廊下を見てから
「その前に皆さんに紹介したい人がいます」
「お!奥さんですか!」
教室がクスクス騒めく。
「違うから。じゃ、入って」
と渋谷先生が扉を開ける。入ってくる足。スラッっとした脚。綺麗な手。
黄葉ノ宮高校のブレザーをまとっている。綺麗な唇にスラッっと通った鼻。鼻筋の中央には絆創膏。
大きな目に縦長の瞳。への字の曲がった眉。
綺麗な白髪。左側の髪を黒いピンで留めている。真風菜(まふな)は思った。
どっかで見たことある顔
「今年度からこの黄葉ノ宮高校に転校してきて私たちのクラスメイトとなります」
「平野(への)です。よろしくお願いします。あ、このプリント廊下まで来たんですけど」
平野(への)はへのへのもへじの描かれたプリントを自分の胸の辺りに持ってくる。
「あ、それ私の…で…す…」
と言うのと同時に真風菜(まふな)は思った。
へのへのもへじ?
どこかで見たかも?というのはへのへのもへじだった。軽く腰を上げた真風菜(まふな)の元に来て
「はい」
と平野(への)が机にプリントを置いてくれた。
「ありがとう…」
不思議な感覚だった。
「じゃ平野(への)はあの空いてる席で」
「はい」
平野(への)の登場に女子も男子も小声で盛り上がっている。
「綺麗な白髪」
「カッコよくない?」
「あの絆創膏なんだろ」
「ハーフとかかな」
「それでは。ここから皆さんには軽い自己紹介をしてもらおうと思います。…どっちからにする?」
と廊下側の席の子と窓側の席の子に聞く。
「じゃ、じゃんけんでー勝ったほうから」
じゃんけんの結果、廊下側から、つまり「あ」からとなった。
「一州茗楽(イスミラ) 空楽王(ソラオ)ですっ!気軽に空楽王(ソラオ)でもソラでも呼んでくださいっ!
あ、趣味って趣味はないっす。服は好きかな?前同クラだった人もそうじゃない人もよろしく!」
本日遅れて登場してきた主役みたいな面をした彼は一州茗楽(イスミラ) 空楽王(ソラオ)。
1年生の頃から「おい、めっちゃチャラいやついるらしいぞ」と有名だった。
チャラいにはチャラいが黄葉ノ宮高校にはその校則の緩さから
青髪や赤髪、緑やピンクなんかも存在するため、髪色が金髪というのはそんなに目立たない。
ただとにかくチャラくてテンションが高い。
ピアスは両側の耳たぶに1つずつ。両側の軟骨に1つずつ。よろしく。
「音多木野(オトキノ) 子那恋(しなこ)です!テンション高めのバカです!
私は「JEWELRY BOYS」のファンでライブとかにも行ってます!
好きな子がいたらぜひ仲良くなりたいです!よろしくお願いします!」
とにかく笑顔が輝くテンション高めの彼女は音多木野(オトキノ) 子那恋(しなこ)。
1年生の頃の彼女は「移り気の多い女」として有名だった。
こう聞くとすごく「ビ○チ」のように思えるがそんなことはない。
彼女の好きな「JEWELRY BOYS」のメンバーに似ているところを
学校の男の子に見つけると「あ、あの人カッコいいね」となる。
しかし、その似ているという点が、ほんと一瞬、いろんな奇跡が重なって似て見えた場合
その似ている部分が見えなくなるとすぐ冷めるのである。そういう意味での「移り気の多い女」なのだ。
「須木弁(スギべ) 鏡(カガミ)です。…勉強が好きです。趣味は…特にありません。よろしくお願いします」
このどこか緊張し、堅苦しい男子。彼は須木弁(スギべ) 鏡(カガミ)。
埼玉のとある神アニメのツインテールを彷彿とさせる名前だが、そんな頭は良くない。
勉強が好きと言ってもここは黄葉ノ宮高校。偏差値は低い。
そんな中でも別に1年生の頃に学年1位を取ったわけでも、クラス1位を取ったわけでもない。
世間的にいうと下の上といったところか。
「大鍵芸常(タケゲツ) 真風菜(まふな)です。えぇ〜…運動をするのも好きだし、勉強も…まあ。
マンガもアニメも好きで…いろいろ好きです。
皆さんと共通点を探して仲良くなれたらと思ってます。よろしくお願いします!」
この子がこの物語の主軸のヒロイン、大鍵芸常(タケゲツ) 真風菜(まふな)。
特にこれといって特徴はないし、秀でて得意なことも好きなこともない。
周りに合わせがちな女の子。ミドルヘアーの明るい茶髪。
自分の自己紹介が終わり、人の自己紹介のときも聞いてはいるものの
自分の机の上に置かれたプリントに描いたへのへのもへじと
転校してきた平野(への)くんを何度も見比べている。
「ニ宅寺(にたくじ) 華音(はなお)です。趣味はぁ〜…動画鑑賞です。
映画とかドラマとか…MyPipeも見てます。
特にこれといってなにもありませんが仲良くしてくれたら嬉しいです。よろしくお願いします」
嘘をついている彼女はニ宅寺(にたくじ) 華音(はなお)。
彼女の嘘とはなにか。趣味が映画やドラマを見ることだということだ。
本当に彼女が好きなのは2次元。そう、マンガやアニメが彼女の生きがいなのだ。
しかしなぜそれを隠すのか。それは彼女が本当にヲタクだから。
ほら、彼女のリュックにもヲタクにしかわからないニッチなアニメのニッチなアクリルキーホルダーがチラリ。
「灰水部(ハスベ) 優佳絵(ゆかえ)です。バスケ部です。スポーツは全般好きです。1年間よろしくお願いします」
立ったときに周囲が少し騒ついた彼女は灰水部(ハスベ) 優佳絵(ゆかえ)。
騒ついた理由は彼女のスタイル。モデル並みのスタイルの良さ。
顔は小さく、手も脚も長い。少しクールな彼女。バスケ部では1年生の頃から才能を爆発させ
1年生のときから2年生を差し置いて、次期エースの呼び声が上がった。髪色は真っ赤。
とあるバスケマンガの主人公が好きだかららしい。
「あ、えぇ〜転校してきた平野(への) 時守(ときもり)です。趣味は…絵を描くことですかね。
あ、スポーツも割と得意なほうだと思います。
転校してきてなにもわからないし、友達もいないので皆さん仲良くしてください。よろしくお願いします」
彼が真風菜(まふな)と同じくこの物語の主軸となるもう1人、平野(への) 時守(ときもり)。
北海道から転校してきた。絵を描くのが好きというのは
アニメやマンガのような可愛いものではなく、美術的なかっちりしたほうだ。
スポーツ全般が得意なのは北海道時代、外で体育ができないことが多く
よく体育館でバスケやバレーなどをしていたお陰。
「六蓋守(ムコウモリ) 礼王(レオ)です。趣味はプロレス鑑賞です。
あ、アメリカンプロレスなので、好きなの。よろしくお願いします」
クールな感じのメガネの彼、六蓋守(ムコウモリ) 礼王(レオ)。
プロレス鑑賞が趣味らしいが運動神経はイマイチ。
ハイフライヤーのプロレスラーのアクロバティックな技を頭の中で自分でシミュレーションしている。
襟足を青く染めている。YEETである。
「はい。ということでま、覚えられなかったでしょうが
この1年間このメンバーでやっていきますので。あ、一応五十音順で席決めましたけど
明日席替えしようかと考えているんですけど、どうでしょう?このままでいいならこのままでいきますが」
「するする!したい!」
空楽王(ソラオ)が元気良く手を挙げる。
「わかった。じゃ明日一番に席替えするので。
ということで、とりあえずはいいか…な?えぇ、ということで初日はこれで終了です」
「ヒャッホー!」
世紀末かな?
「明日も授業はありませんが、席替え、教科書の配布、時間割の配布
あと委員会やクラスでの係決めもしますのでよろしくお願いします。
じゃ、まあ、クラス委員も決めていないので今日は私が。はい起立!」
生徒がシャキッっと人によりダラダラと立ち上がる。
教室特有の床に学校特有のイスの滑り止め部分が引っかかりながらもズレる音が教室内に響く。
「礼!」
みんな礼をする。その後は各々解散。バスケの自主練に行く者、そそくさと帰る者
転校してきた白髪に飛びつく金髪ピアスの者、その白髪が気になってしょうがない者、様々だ。
これは転校してきた平野(への) 時守(ときもり)と大鍵芸常(タケゲツ) 真風菜(まふな)を主軸とし
これから仲良くなるクラスメイト、一州茗楽(イスミラ) 空楽王(ソラオ)
音多木野(オトキノ) 子那恋(しなこ)、須木弁(スギべ) 鏡(カガミ)
灰水部(ハスベ) 優佳絵(ゆかえ)、六蓋守(ムコウモリ) 礼王(レオ)
ニ宅寺(にたくじ) 華音(はなお)の6人、合わせて8人の恋と青春の1年間を覗き見した物語である。