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生徒が1人1人クジを引いていく。黒板に書かれたアルファベットと数字を頼りに席に座る。そう。席替えだ。
「よろしくねぇ〜」
「よろしく〜」
「あ!ゆかちゃんじゃん!ヤバ!近くで見ても顔ちっさ」
「よろしく」
「よろしくね!」
「ニー宅寺(にたくじ)さんだよね?よろしくね」
「あ、うん。よろしく」
真風菜(まふな)、子那恋(しなこ)、優佳絵(ゆかえ)、華音(はなお)が近くの席になった。
「鏡くんよろしくね」
「あ、うん」
「あ、礼王(れお)よろしくね」
「うん。礼王(れお)くん。よろしく」
「よろしくお願いします」
「お。転校生の」
「あ、うん。平野(への)です」
「平野(への)くんね。名前はとき…」
「時守(ときもり)」
「おぉ。鏡くんよく覚えてたね。時守(ときもり)くん。よろしく」
「うん。えぇ〜っと」
「オレが礼王(れお)」
「オレは鏡」
「礼王(れお)くんに鏡くん。よろしくね」
「よろし」
「テレッテッテレッテッ!プーン!」
鏡の方に腕を回す空楽王(ソラオ)。
「スーパーソラオです。ヒアウィーゴー!」
ウザいほどテンションが高い。
「このメンツがご近所さん?おぉ!転校生くん!」
「うん。平野(への)時守(ときもり)。よろしくね」
「トッキー!よろしく!」
「トッキー?」
「うん。トッキー。で?礼王(れお)でしょ?」
「あ、うん。よく覚えてたね」
「いやぁ〜オレの“次”にイケメンだなぁ〜って」
「そんなことないよ」
「で、鏡な」
「あ、うん」
「勉強好きなんて人生で初めて会ったから覚えてた。あ、ご近所女〜子ぃ〜」
空楽王(ソラオ)は近くの女子、真風菜(まふな)、子那恋(しなこ)、優佳絵(ゆかえ)、華音(はなお)の元へ行った。
「よろしく!」
「よろしくね一州茗楽(イスミラ)くん」
「おう!よろしく!大鍵芸常(タケゲツ)さん!
音多木野(オトキノ)さんも灰水部(ハスベ)さんもニ宅寺(にたくじ)さんもよろしく!」
「よろしく」
「よろしくね」
「よろしく」
空楽王(ソラオ)以外の男面子、時守(ときもり)も鏡も礼王(れお)も
真風菜(まふな)、子那恋(しなこ)、優佳絵(ゆかえ)、華音(はなお)に挨拶した。
「よし。これで席が決まりました。えぇ〜これから、えぇ〜最低でも1学期はこの席で決まりなので。
ほんとになにか特別な事情がない限りこれで決定です。目が悪くて黒板が見えないとか
前の人が背高くて見えませんとかあるんだったら今のうちです。
後々好きな人ができて、その好きな人の近くの席になりたいから
後から「黒板見えづらくて」とかは聞き入れられません」
クラス内に笑いが起こる。
「いいですね?はい。ということでまずは時間割の配布…かな」
先生がプリントを配る。
「じゃあぁ〜そうだな。係を決めちゃって、その係の人に教科書を取りに行ってもらいましょうか」
鏡が学級委員長になった。
「じゃあ学級委員長と副委員長。あと他の係の人も私について来てください。教科書を取りに行きます」
「鏡もよく学級委員長とかやるよなぁ〜」
「たしかに」
「灰水部(はすべ)さん体育係になると思ってた」
「いろいろ借り出されそうだし。部活行けなくなりそう」
「なるほどね?」
「平野(への)くんってさ」
真風菜(まふな)が勇気を持って時守(ときもり)に話しかける。
「ん?」
真風菜(まふな)は前日から気になってしょうがなかったようだ。
「どこから転校してきたの?」
「あぁたしかに!気になるわ」
近くの真風菜(まふな)、子那恋(しなこ)、華音(はなお)、空楽王(ソラオ)が視線を時守(ときもり)に向ける。
「あぁ〜。北海道から」
「あ、えぇ〜北海道から」
「北海道か!極寒の」
「北海道…熊穴(ゆうけつ)高等学校…」
優佳絵(ゆかえ)が呟く。北海道 熊穴(ゆうけつ)高等学校はスポーツの強豪校として知られる。
女子バスケも例外ではない。全国大会常連校のうちの1校である。
「やっぱ東京って暑い?」
アホみたいな質問。
「まあぁ〜暑いね」
「暑いよなぁ〜」
「でも北海道も最近割と暑いから。涼しい割合が少ないなって感じ?」
「あ〜なるほど?」
真風菜(まふな)は興味が止まらず「なんで転校してきたの?」と聞きたかったが
もしかしたらの事情かもしれないとやめておいた。
教科書を取りに行ったメンバーが段ボールを抱えて戻ってきた。前から教科書がどんどん回ってくる。
「名前書く欄あるから。昨日のプリントに書いてあったから
ネームペン持ってきてると思うから、ちゃんと名前書くように。
後々、教科書忘れた人に貸したとき、わかんなくならないように」
みんな筆箱、ペンケースからネームペンを出して、キュッキュ鳴らして名前を書いている。
「あれ?…入れた…はず…」
真風菜(まふな)が筆箱、ペンケースの中を探す。
「使う?」
子那恋(しなこ)がネームペンを差し出す。
「あ!いいいい!ありがと!先書いて?その後で借りる。ありがとね」
「うん。わかった」
真風菜(まふな)の机の上にネームペンが置かれる。
「えっ?」
引っ込んでいった腕のほうを見る。時守(ときもり)だった。
「え、いいよ。悪いよ。先使いなよ」
「2本あるから。使って?」
と笑顔で言う時守(ときもり)。
「あ、そう?じゃあ。ありがと」
「うん」
真風菜(まふな)はネームペンを取り、少しネームペン自体を人差し指でトントンとして
ポンッっとキャップを取って教科書に名前を書き始めた。時守(ときもり)も先程の続きを書き始める。
平野とネームペンの太文字で書き、続きは細い。ボールペン。バランスが悪い「平野時守」が完成した。
「ということで。教科書は一通り配り終わったかな。ということで、本日は以上です。
明日から授業が始まりますので忘れ物をしないように。では学級委員長お願いします」
「起立」
鏡が言う。
「おぉ、そうだ。鏡だった」
「礼」
全員礼をして、その後教室内が騒めき始める。帰る準備をしているのだ。
「鏡ー」
空楽王(ソラオ)が鏡の机に近寄る。
「なに?」
「なんでー学級委員なんかになったの?めんどくね?」
「いや。内申にプラスになるから」
「なるほどね?」
鏡の机によっかかり
「トッキー、礼王(れお)この後暇?」
「ん?まあ、特に予定はないけど」
「オレもない」
鏡がバッグを持って立とうとすると空楽王(ソラオ)が鏡の肩に手を置く。
「おうおうおう。鏡ちゃんもよ?」
「オレも?」
「もち。ご近所さんなんだから」
「席の話ね」
「そそ。で。この後ワックとかオケどうですか?ってお誘い」
「まあぁ〜オレはいいけど」
「まあ、オレも予定ないし」
「鏡は?塾とかない?」
「ないね。塾行ってないし」
「なら!行ける?」
「行けるけど」
「うっしゃー!なら!」
華麗に、ミュージカルのように回転しながら自分の席に戻り、バッグを手にする空楽王(ソラオ)。
「ワック?オケる?」
「まずはワックじゃね?」
「うん。とりあえずそっちで」
「うん」
「オケまる水産!!」
「古っ。いつのギャル語?」
「さあ?姉ちゃんがよく言ってたから」
「え、そらのお姉さんもギャルなの?」
「“も”ってなによ“も”って。私ギャルちゃうしー。ほら!行くぞ!」
空楽王(ソラオ)が満面の笑みで嬉しそうに教室を出る。
その後に続いて鏡も時守(ときもり)も礼王(れお)も教室を出た。
4人でワク・デイジーへ行き、それぞれ注文して4人席に座った。
「かんぱーい!」
「「「かんぱーい」」」
紙のカップで乾杯する。もちろんジュースである。
「まずは同クラということで!」
「だね〜。よろしく」
「よろしく」
「よろしく」
「よろぉ〜」
「んで席近ね」
「駅近みたいに言うね」
「たしかに」
4人が笑う。
「みんななにが好きなの?あ、みんなとは言ったけど
礼王(れお)と鏡は覚えてる。礼王(れお)はプロレス好きね」
「アメプロね」
「で鏡が世にも珍しい勉強好きという」
「そんな珍しくもないだろ」
「いやいやいや。コーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)ぞ?」
「「たしかに」」
時守(ときもり)と礼王(れお)がハモる。
「よくそんな勉強好きでコーミヤ来たね。他にも入れるとこたくさんあったでしょ」
「…勉強好きと得意は別だからね」
「「「あぁ〜…」」」
他3人は察した。
「あぁ〜やめて?」
4人で笑った。
「しかもここほど校則緩いとこ他にないから」
「それはそうな。てかならワンチャン鏡よりオレのほうが頭良い説」
「ない」
「ないね」
「それはない」
「おい!」
4人で笑った。
「そうだ。LIME交換しようぜ。てか3人とも1年の頃同じクラスじゃないんだね」
「オレは1年の頃北海道だしね」
「時守(ときもり)は当たり前だね」
「トッキーはね」
「そうだね。合同でもないよね」
「ないね」
「鏡が学年トップとかなら名前轟いてただろうに」
「ねえ。早速頭悪いイジりですか?」
「なことないよ」
だいぶ4人は相性が良いらしい。ワク・デイジーを出た後
カラオケに1時間だけ行って歌いに歌いまくって大いに盛り上がった。まだ陽も落ちていなかったが
「じゃーなー」
空楽王(ソラオ)だけは少し不服そうな顔である。
「こーゆーときの「じゃーなー!」って手振るときってさ、大概夕暮れとかじゃない?
ドラマとかアニメとか」
「あぁ〜。まあそうね」
「でもしゃーなくない?こんなことあるって思ってないから、財布に金全然ないし」
「たしかに」
「バイトもしてないし」
「え、してないの」
「いや今年はしようって考えていろいろ探してはいるけど」
「マジか」
「え、そらはなんかしてん?」
「してるしてる。コンビニ」
「チャラいな」
「なんでだよ」
4人で笑う。
「ま、つーことでまた明日」
「マジー?」
「ま、遊ぶときは事前にLIMEしてくれ。金積むから」
「それな」
「たしかに」
「オッケー。じゃ、また」
「また」
「うぃ」
「またねぇ〜」
それぞれ帰路についた。優佳絵(ゆかえ)は相変わらず体育館にて自主練に取り組んでいて
子那恋(しなこ)は部屋で「JEWELRY BOYS」のライブ映像をテレビで流しながら
スマホでメンバーのポツッターやニャンスタグラムの投稿に全て“いいね”をしている。
華音(はなお)は一旦自宅に帰って私服に着替えてから
古本屋へ行き、エプロンを着けて乾いた雑巾で本棚を拭く。
真風菜(まふな)は自分の部屋でベッドに寝転び、天井を見ながら天井にネームペンを掲げる。
「「平野(ひらの)」って書いて「への」…」
と返すのを忘れて持って帰ってきてしまったネームペンを天井に向かって投げる。キャッチ
「痛っ」
できずにおでこにぶつかる。
「へのへのもへじ…」
勉強机の上には“へのへのもへじ”の描かれたプリントが。男子4人は仲良くなったようだが
この物語の大事な4人の女の子たちはまだ仲良くなっていないようだ。
それもそのはず。8人の物語はまだ始まったばかりなのである。