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「殿!
王より急ぎの伝達が参りました。
ジーファとの激戦地へ、直ちに出陣せよとのことです!」
「わかった。
全員、早急に支度せよ!」
「はっ!」
命が下ると同時に、城内は一気に慌ただしさを帯びた。
セイカとユイの私室でも、出陣の準備が進められていた。
二人は黙々と鎧を纏う。
「兄様……どうか、俺の傍を離れないでね」
不安を隠しきれない声で、ユイが言う。
その様子に、セイカは一度手を止め、ユイを静かに抱き寄せた。
そして頬に触れ、優しく撫でながら語りかける。
「よいか、ユイ。
本当は、お前を戦場へ連れて行きたくはない。
だが……お前のことだ。止めても聞かぬだろう」
ユイは小さく息を呑む。
「だから約束しろ。
決して、無理だけはするな。
何があっても、生きて帰ることを最優先にしろ。いいな?」
ユイは黙って、強く頷いた。
「では、参るぞ」
「は!」
凛とした声で命じるセイカの後に、ユイが続く。
その姿は、細身ながらも凛々しく、
一見すれば女武将と見間違うほどであった。
やがて全員が騎馬に跨る。
城内に残る者たちは、
城主と兵たちの無事な帰還を、ただ祈るしかなかった。
「セイカ軍ーー出陣!」
号令とともに、騎馬隊は一斉に地を蹴り、走り出す。
だがこの出陣は、
先の見合いによってカンジュ王の怒りを買ったセイカへの
明確な仕打ちでもあった。
向かう先は、
カンジュ軍が壊滅寸前に追い込まれている、
最も苛烈な激戦地—–ジーファ。
それは、
生きて帰れる保証など、どこにもない戦場だった。