その時、蓮が通りかかった。ふとメイの真剣な表情に目をとめ、
病院での出来事を思い出した。
あの目の輝き……「私、強くなりたい」と言ったメイを思わず
抱きしめてしまった感触が、今も鮮明に蘇る。蓮は深呼吸し、メイに声をかけた。
「メイ、待機中だろ。」
「蓮隊長……すみません、私……練習してみんなに追いつきたいんです。」メイの瞳には決意が宿っていた。
その瞳にドキッとしながらも、蓮は木刀を手に取り、
「よし、少しだけ相手をしてやるか」と木刀を振り降ろした。
メイは嬉しそうに「はい!」と答え、二人の練習が始まった。
道場の中は蒸し暑く、二人の熱気がさらにその暑さを増していた。蓮は思わず上着を脱ぎ捨て、
「よし、来い!」と声をかけた。メイもその勢いに乗り、上半身の服を脱ぎ捨て、練習を続けた。
お互いの真剣な表情と、流れる汗が光り、剣術の練習をする一方でメイは内心ドキドキしていた
(思わず上半身脱いでしまった……)と戸惑いながら、木刀を振る、しかし目の前にいる蓮の男性らしい
胸がどうしても目に入ってしまう。その筋肉の動き、汗で光る肌、そして力強い動きが
彼女の心を乱す。彼女は思わず距離をとり、心の中で自問自答する。
(何を考えているの?今は練習中なのに……でも……)
一方、蓮もまた心の中で葛藤していた(な、なぜ、俺は意識している……?部下だぞ)と自分を戒めるが、
メイの真剣な表情とその汗で光る肌がどうしても気になる。彼の一途な姿勢とその強い意志が、
蓮の心を揺さぶっていた。
お互いが真剣な表情の裏では、なぜかいやらしい想像をしてしまっている
練習の緊張感とともに、微妙な感情が交錯する中、二人はさらに集中して木刀を交えた。
道場の空気はますます熱を帯び、練習は続いていった。
蓮との練習が終わり外に出ると
メイは自分の部屋に戻る途中周囲を見渡しながら、「ここって意外と広いんだな〜」と感じた。
彼女の目に留まったのは、見慣れない道の奥に建つ小さな教会だった。
「教会がある…」メイはそっとその建物に近づき、中の様子を窺った。
目に飛び込んできたのは、美しく彫刻された洋風のデザインが施された室内。
中は静寂に包まれており、誰もいない様子だった。メイは
何かに引かれるように教会の中に入り、椅子に腰を下ろした。
教会の静けさに包まれ、まるで暴行されたことや魔獣の討伐で味わった恐怖と苦しみが
嘘のように感じられる瞬間だった。過去の傷はまだ癒えていないが、
この場所にいると少しだけ心が安らぐのを感じる。
しばらくすると、メイのこめかみに冷たく固い金属の感触が触れた。
「動くな」という声が背後から聞こえ、メイは身動き一つできずに凍りついた。
恐る恐る後ろを振り返ると、そこにはシスターが立っていた。「こんなところでサボっている人発見〜」
彼女の名前はリディア。シスターの格好をしており、目には眼帯をしている。
彼女の手には、見たこともない美しい模様が入った銃が握られていた。
「え、シスター?」メイが驚いた声で尋ねると、リディアは笑顔で答えた。
「教会なんだからシスターがいても可笑しくないでしょ」
メイは「そうだね、でもその銃は?」と尋ねた。
リディアは元気な声で「この銃は対魔獣専用の銃なのよ」と答えた。
この対魔獣専用の銃は、魔獣の鋭い歯や爪、そして固い甲羅から作られている。
これらの魔獣は強力な呪いによって護られており、そのために魔獣の体から作られた銃にも同様の
呪いが施されている。この銃を使うことは一般の人間にとって極めて危険であり、
使用するたびに使用者は呪われ、最終的には命を落とすか、あるいは魔獣へと変貌してしまうことさえあるのだ。
このような銃を扱うには、ただ強靭な体力と精神力を持つだけでなく、
魔力を浄化する能力も必要とされる。メイたち隊員に与えられている銃は、
比較的力の弱い魔獣から作られたものであり、呪いの影響はほとんどない。しかし、
その銃は中級クラスの魔獣には効果が薄い。
リディアが制作する銃は、隊長クラス専用のものであり、霊獣の強大な魔力を秘めている。
部隊長の蓮や副司令官の凌もまた、浄化能力に長けているが、國光はそれをさらに超える別次元の
浄化能力を持っている。彼はその能力を、魔力を籠めた銃や刀を扱うことでさらに発揮する。
この特別な武器は、強大な魔獣との戦いで絶大な効果を発揮し、その持ち主にとっては貴重な戦力となるのだ。
メイがその特別な銃についての説明に耳を傾けていると、教会の重厚なドアがゆっくりと開いた。
その瞬間、美しい光が差し込み、さわやかな風が室内を満たした。
風がメイの頬を撫でるように通り過ぎ、それとともに、そこに立っていたのは國光の姿だった。
リディアは目を輝かせながら「國光さま〜」と叫び、彼に駆け寄り抱き着いた。
國光もリディアを優しく抱きしめ、彼女の高揚した気持ちを受け止めた。
「あ〜浄化されるぅ〜」とリディアは満足げにつぶやき、
メイはその温かなやり取りに微笑みを浮かべた。
その時、國光がメイの方を見て、「もう大丈夫なの?」と声をかけた。
メイは「は、はい!」と緊張気味に答え、國光は笑顔で頷いた。
リディアはその隙に「國光さま、新しい銃ができました〜」と、彼女が抱えていた銃を見せた。
光圀はその銃を手に取り、「ほぉこれはこれは」と感嘆の声を上げた。
彼はその銃から魔力の凄さを感じ取っていた。
「試しに撃ってくださいね」とリディアが促すと、光圀はうなずき、
「そうだね、じゃあ行こうか。メイちゃんも付き合って」と提案した。
メイは少し驚きながらも、「私もいいのですか?」と尋ねた。
國光は「どうせ待機命令中でひまでしょ」と冗談交じりに言い、三人は射撃場に向かった。
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