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メイが道場で一人練習していたその時、蓮が通りかかった。ふとメイの真剣な表情に目をとめ、
病院での出来事を思い出した。
あの目の輝き……「強くなりたい」と言ったメイを思わず
抱きしめてしまった感触が、今も鮮明に蘇る。蓮は深呼吸し、メイに声をかけた。
「メイ、待機中だろ。」
「蓮隊長……すみません、ボク……練習してみんなに追いつきたいんです。」メイの瞳には決意が宿っていた。
その瞳にドキッとしながらも、蓮は木刀を手に取り、
「よし、少しだけ相手をしてやるか」と木刀を振り降ろした。
メイは嬉しそうに「はい!」と答え、二人の練習が始まった。
メイは大きく息を吸い込み、構えた。蓮の木刀が静かに、しかし有無を言わせぬ速さで繰り出される。
メイはそれを必死に受け止め、あるいはかわし、自分の攻撃へと繋げようとする。
最初こそ、蓮はメイの力量を見定めるように軽くいなしていたが、
メイの全身から放たれる「強くなりたい」という強い意志と、
食らいついてくるひたむきさに、蓮の目つきが変わった。
「来い、メイ!」
蓮の掛け声と共に、打ち込みの速度と重みが増す。
木刀がぶつかり合う甲高い音が道場に響き渡る。
蓮の動きは速く、そして的確だった。
メイはついていくのがやっとだったが、その中でも蓮の動きから何かを吸収しようと必死だった。
一度、蓮の木刀がメイの横腹を掠めた。
寸止めだったが、風圧で息が詰まる。メイは怯むことなく、体勢を立て直し、反撃に出た。
その一瞬の隙を突いたメイの突きに、蓮はわずかに目を見張った。
「悪くない」
蓮の短い称賛に、メイの顔にわずかな笑みが浮かぶ。だが、すぐに表情を引き締め、再び構える。
打ち合いは続いた。息が切れ、額には汗が滲む。体の節々が悲鳴を上げ始める。
それでも、メイは足を止めなかった。蓮もまた、メイのその粘り強さに感心していた。
激しい打ち合いの最中、メイの足がもつれ、体勢を崩した。
その隙を見逃さず、蓮の木刀がメイの頭上に振り下ろされる。メイは反射的に目を閉じ、身を固くした。
しかし、衝撃は来なかった。
恐る恐る目を開けると、蓮の木刀はメイの額の寸前で止まっていた。
そして、蓮のもう片方の手が、メイの体を支えるように肩に触れていた。
至近距離で、蓮の真剣な、しかし優しい瞳が見つめていた。道場の静寂の中に、二人の荒い息遣いだけが響く。
時間が止まったように感じた。あの病院での、温かい腕の感触が、メイの脳裏をよぎる。
蓮の肩に触れた指先から、体温が伝わってくるような気がした。
「大丈夫か、メイ。」
蓮の声が、鼓膜を優しく揺らす。いつになく穏やかな響きだった。
メイは、支えられている肩の蓮の手に、自分の手をそっと重ねたかった衝動を抑え込んだ。
「……はい。ありがとうございます、蓮隊長。」
メイはか細い声で答えた。蓮はふっと力を抜き、メイの肩から手を離した。
「よく食らいついてきた。根性は十分だ。」
蓮は木刀を下ろし、メイに背を向けた。道場の外の光が、蓮の横顔を照らす。
「ただ、力任せになっている部分がある。力の使い方、体の捌き方……基本をもう一度見直す必要があるな。」
蓮の言葉は厳しかったが、そこには確かな指導の意図があった。メイは真剣に頷く。
「はい! もっと、蓮隊長に教えていただきたいです!」
思わず口に出た言葉に、メイは自分の頬が熱くなるのを感じた。
蓮は振り返り、メイの顔を見た。その瞳に、先ほどとは違う、期待のような光が宿っているのを感じる。
そして、蓮は小さく、しかし確かな声で言った。
「……いつでも相手をしてやる。強くなりたい、その気持ちを忘れるな。」
その言葉は、メイの心に深く響いた。蓮の言葉は、強さへの道を示してくれるだけでなく、
メイの存在そのものを肯定してくれているように感じられた。
道場に再び静寂が戻る。メイは蓮の背中を見つめながら、胸の高鳴りを覚えた。
強くなりたい。その気持ちと共に、蓮という存在が、メイの心の中で、以前とは違う特別な
場所を占め始めていることを、メイは自覚し始めていた。そして、蓮もまた、
メイのひたむきな瞳と、触れた肩の温もりを、しばらく忘れられそうになかった。
二人の間の空気は、先ほどの緊張感から、微かな期待と温かい予感へと変わっていた。
蓮との練習が終わり外に出ると
メイは自分の部屋に戻る途中周囲を見渡しながら、「ここって意外と広いんだな〜」と感じた。
彼女の目に留まったのは、見慣れない道の奥に建つ小さな教会だった。
「教会がある…」メイはそっとその建物に近づき、中の様子を窺った。
目に飛び込んできたのは、美しく彫刻された洋風のデザインが施された室内。
中は静寂に包まれており、誰もいない様子だった。メイは
何かに引かれるように教会の中に入り、椅子に腰を下ろした。
教会の静けさに包まれ、まるで暴行されたことや魔獣の討伐で味わった恐怖と苦しみが
嘘のように感じられる瞬間だった。過去の傷はまだ癒えていないが、
この場所にいると少しだけ心が安らぐのを感じる。
しばらくすると、メイのこめかみに冷たく固い金属の感触が触れた。
「動くな」という声が背後から聞こえ、メイは身動き一つできずに凍りついた。
恐る恐る後ろを振り返ると、そこにはシスターが立っていた。「こんなところでサボっている人発見〜」
彼女の名前はリディア。シスターの格好をしており、目には眼帯をしている。
彼女の手には、見たこともない美しい模様が入った銃が握られていた。
「え、シスター?」メイが驚いた声で尋ねると、リディアは笑顔で答えた。
「教会なんだからシスターがいても可笑しくないでしょ」
メイは「そうだね、でもその銃は?」と尋ねた。
リディアは元気な声で「この銃は対魔獣専用の銃なのよ」と答えた。
この対魔獣専用の銃は、魔獣の鋭い歯や爪、そして固い甲羅から作られている。
これらの魔獣は強力な呪いによって護られており、そのために魔獣の体から作られた銃にも同様の
呪いが施されている。この銃を使うことは一般の人間にとって極めて危険であり、
使用するたびに使用者は呪われ、最終的には命を落とすか、あるいは魔獣へと変貌してしまうことさえあるのだ。
このような銃を扱うには、ただ強靭な体力と精神力を持つだけでなく、
魔力を浄化する能力も必要とされる。メイたち隊員に与えられている銃は、
比較的力の弱い魔獣から作られたものであり、呪いの影響はほとんどない。しかし、
その銃は中級クラスの魔獣には効果が薄い。
リディアが制作する銃は、隊長クラス専用のものであり、霊獣の強大な魔力を秘めている。
部隊長の蓮や副司令官の凌もまた、浄化能力に長けているが、國光はそれをさらに超える別次元の
浄化能力を持っている。彼はその能力を、魔力を籠めた銃や刀を扱うことでさらに発揮する。
この特別な武器は、強大な魔獣との戦いで絶大な効果を発揮し、その持ち主にとっては貴重な戦力となるのだ。
メイがその特別な銃についての説明に耳を傾けていると、教会の重厚なドアがゆっくりと開いた。
その瞬間、美しい光が差し込み、さわやかな風が室内を満たした。
風がメイの頬を撫でるように通り過ぎ、それとともに、そこに立っていたのは國光の姿だった。
リディアは目を輝かせながら「國光さま〜」と叫び、彼に駆け寄り抱き着いた。
國光もリディアを優しく抱きしめ、彼女の高揚した気持ちを受け止めた。
「あ〜浄化されるぅ〜」とリディアは満足げにつぶやき、
メイはその温かなやり取りに微笑みを浮かべた。
その時、國光がメイの方を見て、「もう大丈夫なの?」と声をかけた。
メイは「は、はい!」と緊張気味に答え、國光は笑顔で頷いた。
リディアはその隙に「國光さま、新しい銃ができました〜」と、彼女が抱えていた銃を見せた。
光圀はその銃を手に取り、「ほぉこれはこれは」と感嘆の声を上げた。
彼はその銃から魔力の凄さを感じ取っていた。
「試しに撃ってくださいね」とリディアが促すと、國光はうなずき、
「そうだね、じゃあ行こうか。メイちゃんも付き合って」と提案した。
メイは少し驚きながらも、「私もいいのですか?」と尋ねた。
國光は「どうせ待機命令中でひまでしょ」と冗談交じりに言い、三人は射撃場に向かった。