テラーノベル
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「自殺の名所、喚問橋で行方不明者1名」そうニュースが流れていた。「朝っぱらからこんなニュース…」そう親父がコーヒーを片手につぶやいた。確かに、朝からこんなニュースを聞いたら一日中憂鬱な気分になりそうだが、僕はそんなことはない。知らない人の最後なんて知ったところで何とも思わない。冷めた人間だとよく昔から言われていたが、これが僕。仕方がない。僕特製のハニートーストを嚥下し、重い足取りで学校へと向かった。
僕は中学3年生の世良。部活も入らず、ずっと勉強に専念していた面白みの欠片もない極普通の中学生。一学期も終わりに差し掛かり、もうすぐ地獄の夏休みが始まる。正直勉強なんてしたくないし、将来なにをしたいかなんて考えても思い浮かばない。遠いようで近い僕の大人の姿は、まるでファンタジーのように思えた。「どうしよう…」そう悩んでる時に幼馴染みの光太がひょいっと現れ「どうしたんだよ。そんな暗い顔をしてさ」とニヤニヤしながら話しかけてきた。こいつは運動神経抜群で勉強もできる。どの分野でもセンスを発揮し、いつも大人を驚かしてきたようなやつだ。要領がいい上に優しくて、昔から悪意のない刃で僕のことをボロボロにしてきた。正直なんでもできてしまうこいつのことは苦手だ。「うるさいなぁ、放っておけよ」そう突き放したが、離れる気配など微塵も感じ取れなかった。「もしかして将来のことか?」魔法使いなのではと一瞬疑ってしまうぐらい綺麗に図星をつかれ、言葉を失った。「実は俺、なりたいもん見つかったんだよ!」と目をキラキラさせながら僕に言ってきた。「それは…」そのときチャイムが鳴り、ホームルームが始まってしまった。
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