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「それとね、さっきの話忘れてね」
夜中の3時半。 ふと誰かの話し声が聞こえて目を覚ました。そこには窓際に寄りかかってスマホを
片耳に置き談笑する彼の姿。
恥ずかしいからと、顔を赤面させてそう言った。
誰かと電話してるのだろうか。彼の聞き慣れた声にそっと耳を傾ける。
誰にも言わないでねって言って
「誰かに言わないでね。」
呟くように静かな声で彼は続ける。
「今はねそれなりにね、 幸せに暮らしてるの」
「時々思い出してれば忘れないよね」
無意識だった。
自身より少し小さい身体を抱き寄せる。夜風に当たっていたせいか、彼の羽織っているベージュのカーディガンは冷たくなっていた。
大丈夫だよ
君は君でいいから
「わっ、凛起きたんだ 」
吃驚した様子で振り向く彼。深い海を連想させる青い目がこちらを見開いている。行動すればすぐ反応してくれる。その意識が自分に向いている事が何よりも嬉しかった。
大丈夫だよ
君は君でいいから
「ふふ、俺はどこにも行かないよ」
心の中を見透かされているみたいで気分が悪い筈なのに、何故か安心する。目を細めて微笑む彼に
頭を埋めた。
今日はなんだか余計な事ばかり
話しすぎてしまうわ
「今日は満月だって」
どうでも良い事探してみるけど、 どれもこれも
全部が大事な物ばかりで困ってしまうわ
彼を起こしてしまった。まだ眠たげな顔の中にはどこか寂しそうな表情がある。これはよく不安な時にする顔だ。彼の抱き締める腕を触ると暖かくて安心する。
大丈夫だよ
君は君がいいから
「いさぎ、もう寝よう」
昼間とは違う彼の口から出た柔らかい言葉。その言葉に同意して微かに温かさが残るベッドへと、彼を誘導する。
大丈夫だよ
君は君がいいから
自身より低い位置にある少し乱れた黒髪。 触ると柔らかくて、同じシャンプーの匂いがした。
そんな彼の他者に見せない部分を、自分だけに見せてくれる事が 何よりも嬉しかった。
今日はなんだか余計な事ばかり
話しすぎてしまうわ
「明日は晴れるらしい」
どうでも良い事探してみるけど、 どれもこれも
全部が大事な物ばかりで、 困るわ
あなたの髪が 揺れる
あなたの指が 触れる
あなたのアレが 入挿る
あなたの声が 聴こえる
あなたの歌が 響く
あなたの全てが
大事な物ばかりで困ってしまうわ