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カゴメside
寮の廊下は、温かな季節だとは思えないほど、ひんやりと冷え込むように暗い。
カンテラの灯りですら飲み込んでしまいそうな先の見えない暗闇が、私の恐怖心を揺さぶる。
かぁ助「魔物の属性は炎だ。一体はそこそこ、もう一体はかなりの大きさ、気をつけるんだ」
カゴメ「わ、わかってるわ…」
風属性の私が炎属性の魔物に勝てるとは思えない。
慎重に寮から脱出して、教師か他の生徒に合流する必要がある。
ふと、雲に隠れた月が顔を出し、暗闇から解放するように廊下を照らした。
ほっとしたのも束の間、窓の外に赤い炎を纏った白い大きな犬のような生き物が、私たちの方に走ってくるのが見えた。
かぁ助「伏せろ!」
かぁ助が翼で私を覆ってくれなかったら擦り傷では済まなかったかもしれない。
それ程の勢いで割れた窓ガラスが私たちを襲ってきた。
大犬?「が…あぁ…!」
寮に入ってきた動物は、ガラスの破片を浴びたせいか、悶え苦しんでいるようだ。
大犬?「あづ…あ”つ”い”……た”…っ”け”……」
カゴメ「……え?」
違う…全身を覆っている炎に焼かれているみたいだった。
動物は水の魔法で燃えないよう体を守り、熱で苦しんでいる。
かぁ助は巨大化させた体でさらに体重をかけ、私を起き上がらせないようにしている。
カゴメ「か、かぁ助?」
かぁ助「静かに、また来る…」
途端にごうごうと燃える炎が近づくような音が聞こえ始める。
窓から…あり得ないほど巨大な熊が、炎を噴きながら乗り込んできた。
私の全身から冷や汗が垂れ、暑いのに悪寒が走った。
近くのガラスが溶け、石壁が赤く照らされるのがかぁ助の翼の隙間から見える。
大熊は、焼けた金属のような色の眼で苦しむ動物をギョロリと睨み、前足で跳ね飛ばした。
大犬?「ぎゃあっ…!」
飛ばされた勢いで壁にぶつかる動物は、犬とは思えない短い悲鳴を上げ、よろけながらも素早い火の玉のように、寮から去っていった。
しかし、大熊はそれを追いかけず、鼻をヒクヒクとさせた。
人間の…私のにおいに気付いたみたいだ。
カゴメ「はっ…はっ…」
恐怖で鼓動が早まり、呼吸が浅くなる。
暗闇に紛れられる色をしたかぁ助が見つからないことを、ひたすら祈るしかなかった。
般若「打てっ!!」
緊張の糸を切り裂く声と同時に、紅葉色の魔法弾が大熊のこめかみに命中した。
私たちを探すことに夢中になって油断していた大熊は、頭を振り乱しながよろめいた。
般若「今だっ!隈取!」
隈取「おう!」
隈取くんが大斧型の武器杖を、どんっ!と振り下ろした。
すると廊下の一部、大熊のいる床部分がぐらぐらと揺れながら盛り上がり、天井に到達した。
大熊は床と天井に挟まれて身動きがとれなくなったようだ。
般若「カゴメ、もう出てきていいぞ」
そう言われて、私はかぁ助を退けて這い出てきた。
カゴメ「ぷはぁっ、助かりましたわ…」
隈取「うわっ?!んなとこにいたのか」
カゴメ「そんなことより大変よ!今魔物が…!」
かぁ助が言ってた事、さっきの出来事を二人に話した。
般若「ああ、わかってる。俺らんとこも灯が消えて避難するとこだったんだ」
隈取「般若のやつ、おめぇが居なくて必死に探してたんだぜ」
カゴメ「そうだったの?来てくれて助かったわ」
般若「いーってことよ!さ、今のうちにこっから離れようぜ」
隈取「だな、おかめと阿形んとこ行こーぜ!」
「ぎゃあああああー!!」
一安心したと同時に、校舎側から叫び声が聞こえてきた。
カゴメ「い、今の声って…!」
隈取「阿形…!あいつらになんかあったんだ!早く行かねーと!」