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今日は俺の11歳の誕生日である。え? お前10歳に城出るって言ってたじゃないか、だって? ライアネルがウザくて城出られなかったんだよ。察しろ。
でも今日という今日は出てやるのだ。この忌々しい城を出る記念すべき日! やっとだ、長かった……!! この日が来るのをどれだけ待ち望んだことか。両親や使用人たちには申し訳ないが、本来の予定より1年も遅れているんだ。こんな窮屈な場所からは一刻も早く、何が何でも早く抜け出したい。
今は早朝。まだ使用人も寝ているし、太陽だって昇っていない。そんな中、俺は静かに動き出す。まだ誰も起きていない。使用人たちは全員眠っている。
部屋の窓から外へと出て港の方へと向かう。すでに船の金は払っている。好きな時に勝手に船を出してもいい、とも言われている。こういう融通が利くところは王族万歳って感じだな。まあ、船に食料やらを詰め込んだのは昨日だから、きっと今日出るってのは港で働いている人間にはバレていることだろう。
船に乗り、帆を広げ、錨を上げる。ゆっくりと船が離れていく感覚。俺は船首に座って海を眺めていた。まだ暗い。少しずつ太陽が昇り、海面がキラキラと輝いていた。
「キレーだな……」
ぽつりと、半ば無意識に出た言葉。それは俺の心からの本音だったと思う。
しばらく朝日が昇る様子を見つめてから、俺は船内に戻った。
キッチンで朝食の準備に取り掛かる。パンを焼いて、ベーコンエッグを作って……。簡単な料理だけど美味しくできた。スープもあった方がいいかな。野菜スープを作る。
「外で食べちゃお」
料理を持って外に出て適当なところに座った。料理を口に運びながら、これからのことを考えてみる。
俺バラティエに行きてえんだよな。切実にサンジの飯が食ってみたい。あーでも、流石にまだいねぇか……。何歳ぐらいでバラティエのコックやるんだろうか……。わからんな……。新聞見てたら自ずと時系列やらもわかるだろうか…? 最新のニュースは何だったか……そうだ、確かアラバスタ王国関連で何かあったはずだ。
俺はこの船の自室にあたる部屋に戻り、新聞を手に取る。
「アラバスタ王女、ネフェルタリ・ビビ、誘拐未遂事件発生……あ、年齢書いてる。5歳か……。原作始まったときのビビって確か……16、いや17? くそ…ちゃんと覚えてねえ……」
己の貧弱な記憶力に泣きを見ることになる。ワンピースの物語自体もあやふやなところあるしなぁ、俺……大丈夫かなぁ。
……いや、大丈夫だよな! 別に俺原作の物語をどうにかするつもりなんて毛頭ないわけだし! こうなんか、会えたらいいな~くらいだしな。
海賊になるつもりだってないしさ、ただ世界を見て回るだけの……そう、旅人! 俺は旅人になりたい! ただそれだけ! 物騒なことは基本なし! よくある死人救済とかもなし! それによって世界が大きく変わってより悪い方向に行ったら元も子もないしな。バタフライエフェクトってやつだっけか?
朝食を食べ終えて片付けをして、それからしばらくは舵を握り続けた。船は進む。俺を乗せて、ただ真っ直ぐに進む。
「……あっそうだ! あそこに行こう」
最初の行先を決めた俺は、早速そこに向かって舵を切った。