テラーノベル
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「M!LKの皆さん、まもなく本番です! ステージ袖へ移動お願いします!」
ADのハキハキとした声が楽屋に響き渡る。
その瞬間、部屋の中の空気が一気にプロのそれへと切り替わった。
テレビ局の廊下は、他の出演者や多くのスタッフが行き交い、独特の熱気と緊張感に包まれている。
💛「よし、行こう。みんな、生放送だからね。楽しんで、バチッと決めよう」
仁人はいつものように、リーダーとしてメンバーの前に立ち、力強く声をかけた。
その背中は凛としていて、誰もが憧れる完璧なアイドルの姿そのものだった。
しかし、そのすぐ後ろを歩く勇斗の目は、仁人のわずかな異変を捉えていた。
🩷(……歩幅が、朝より狭くなってる。やっぱり、昨日の今日で身体に相当無理がきてるんだ)
勇斗はポケットの中で拳を強く握りしめた。
自分の強烈なαのフェロモンで仁人を包み込み、周囲の視線や鼻から必死に隠そうとするが、ここは人の出入りが多すぎる。
スタッフとすれ違うたびに、勇斗はわざと仁人との距離を詰め、自分の大きな身体で彼の小さな背中を覆い隠すように歩いた。
ステージ袖の薄暗い待機場所に到着すると、前のアーティストのパフォーマンスが大音量で響いてきた。
重低音が床を揺らし、否応なしに緊張感が高まる。
💛「……っ」
不意に、仁人が小さく息を漏らし、壁にそっと手を突いた。
ステージ照明の照り返しと、過密スケジュールによる疲労。
そして何より、昨夜あれほど激しく勇斗を受け入れたオメガの肉体が、本番前の極限のプレッシャーによって悲鳴を上げていた。
視界が急激に歪み、足元がぐらりと揺れる。
🩷「仁人……っ!」
勇斗は咄嗟に動き、倒れそうになった仁人の細い腰を後ろからガシッと片腕で抱きとめた。
スタッフからは、本番前にメンバー同士がハグをして気合を入れているようにしか見えない絶妙な角度だった。
しかし、二人の距離は完全にゼロになっていた。
💛「ハァ、っ、あ……勇斗、ごめん……一瞬、眩暈が……」
🩷「無理すんな。俺に寄りかかれ。……ほら、俺の匂い吸え」
勇斗は仁人を抱きすくめたまま、自身の首筋を仁人の鼻先に近づけた。
優性αである勇斗の、深く落ち着いた、包容力のある香りが仁人の鼻腔を満たす。
オメガの身体が、本能的にその香りを吸収し、切れていたエネルギーを充電するように、急速に理性を繋ぎ止めていく。
💛「……ん、ありがと。もう、大丈夫……」
仁人はそっと勇斗の胸を押し、自らの足でしっかりと立ち上がった。
その瞳には、再びリーダーとしての強い光が戻っていた。
💙「ちょっと、二人とも何イチャイチャしてんのー?」
すぐ近くで衣装のチェックをしていた太智が、クスクスと笑いながら話しかけてきた。
💙「本番前だからって、熱烈なハグは楽屋でやってよねー」
🩷「うるせえ太智! 仁人が緊張してるっぽかったから、パワー分けてやったんだよ!」
勇斗はわざとガキ大将のような大声を上げて笑い飛ばした。
太智は「はいはい」と笑いながら、舜太と楽しそうにステージの方向を見つめている。
舜太も「勇斗のパワー、俺にも分けてや!」と無邪気に笑っていた。
しかし、そのやり取りを、少し離れた場所からじっと見つめている男がいた。
柔太朗だ。
彼は腕を組んだまま、一言も発さずに勇斗と仁人の一挙手一投足を見つめていた。
先ほど、仁人が倒れかけ、勇斗がそれを支えた時、二人の間に流れた「尋常ではない空気の重さ」を、柔太朗の鋭い直感が完全に見抜いていた。
それは、単なる仲の良いメンバー同士のスキンシップなどでは断じてない。
まるで、命がけで何かを庇い合っているような、濃密で歪な関係性。
「――M!LKの皆さん、ステージへどうぞ!」
スタッフの合図とともに、5人は眩い光が溢れるステージへと足を踏み出した。
歓声とライトの渦の中、イントロが流れ始める。
仁人は何事もなかったかのように、センターで完璧なダンスと歌声を披露し始めた。
そのプロフェッショナルな姿に、勇斗は胸を熱くしながらも、自分のポジションから一瞬たりとも仁人から目を離さなかった。
ステージの上では、完璧な5人のM!LK。
しかし、足元に開いた秘密の亀裂は、柔太朗という存在を介して、確実に広がり始めていた。
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コメント
5件
続き気になります!

最高すぎて一気に読んじゃいました! つづきたのしみです!!
気になりますね...
雫
32
🎀もちたん🎀
5,424