机の上には、あたたかい湯気がゆらゆらとのぼっていた。お粥の匂いが、静かに鼻の奥にしみてくる。
蘭丸「はい、あついから気をつけて〜」
晴明の前にそっと椀が置かれる。
晴明は、スプーンを持つ手が少しだけ震えた。
“たべていいのかな”
ちらりと道満を見ると、
道満は腕を組んだまま、むすっとした顔で言った。
道満「……いちいちこっち見んな、さっさと食え」
怒っているわけではない。
でも、声が低いから少し怖い。
晴明は、そろりと一口すくって口に入れた。
あたたかさがひたひたと広がって、
胸の奥まで溶けていくようだった。
蘭丸「おー、ちゃんと食べられるねぇ。えらいえらい」
その明るさに、また少しだけ胸が軽くなる。
静かな台所に、スプーンのかちゃっという音が響いた。
やがて椀が空になったころ、
蘭丸が手をぽんっと叩いた。
蘭丸「よし、じゃあ行こっか。ね? ちょっと診てもらうだけだから」
晴明はスプーンを握ったまま、
不安で体を縮めた。
すると、道満がぼそっと言う。
道満「……そんな顔すんな、怖くねぇから」
それは励ましではないのに、
なぜか “だいじょうぶ” に聞こえた。
蘭丸がひょいっと抱き上げる。
晴明は胸元をぎゅっと掴んだ。
―病院―
古い木の扉は、ぎぃ……と音を立てて開いた。
中はしんとしていて、澄んだ匂いがする。
白衣を着た男が、書類をぱらぱらとめくりながらこちらを見た。
明「あっ。来たね。昨日 倒れてた子ってその子?」
蘭丸「そうそう。よろしくね、明君。」
晴明は、じっとその男を見た。
大人らしい優しい笑顔ではあるのに、
どこか得体の知れない怖さがあった。
男は晴明に近づき、
椅子に座らせるよう手で示す。
医者「じゃあ、ちょっとだけ見せてね」
晴明は言われるまま、ちょこんと椅子に座った。
男は、ひと通り診察をした 。
そして、
明「うーん、少し熱は高いね。でも、風邪だから大丈夫。多分今もヒートがおきてると思うから一応薬だけ出しとくね。」
明「あと、最後に採決だけさせて。健康状態とかも気になるし、ね?」
ニコっと笑ったその目が、どこか 、怖かった。
蘭丸「あー、、……」
道満「……」
明「……静かにしててね。すぐ終わるから」
そう言って、無言で手袋をはめた。
説明もなく、必要以上の会話もなく。
晴明は、何をされるのか分からないまま、
腕をそっと掴まれ、椅子に座らされた。
蘭丸が隣で笑っているけど、
その笑顔は少しだけ引きつって見えた。
医者が机から細長い銀色のものを取り出す。
晴明はそれが何か知らない。
けれど――嫌な予感だけは分かった。
明「じゃあ、動かないでね」
アルコールの冷たさが腕に触れる。
ぞくっと震えが走る。
医者は何も言わないまま、医黙って針を構えた。
晴明「やっ……」
明「大丈夫。すぐ終わるから」
そして――
ぷつっ…
細い痛みが、皮膚のなかへ侵げてくる。
晴明「……うぁっ……!」
涙がぶわっとあふれる。
逃げたい。
でも腕が動かない。
医者は冷たい顔のまま、
吸われる血をじっと観察していた。
明「わぁ!綺麗な血だね。うん……いい状態だ」
針が抜かれた瞬間、
晴明はひゅっ、と息を吸い込んだ。
明「はい、おしまい。 」
晴明は腕をぎゅっと押さえたまま、
涙でにじんだ視界の中で、
蘭丸の手がそっと頭を撫でるのを感じた。
蘭丸「よしよし……怖かったよね。大丈夫、大丈夫」
道満も小さくため息をつきながら言う。
道満「……帰るぞ。」
その声が不思議とやさしく聞こえた。
晴明は、まだ泣いた跡の残る目のまま、
うなずいた。
うーん、もう少し明をサイコ味にすれば良かったなーって少し思っちゃった
コメント
4件

優しい明くん最高! 晴明くん頑張ったの偉すぎる!!

明が優しいの逆に怖い はい、もう天使可愛いすぎる♡