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ムツキは首を縦に振って、自信満々の様子である。
「ああ、間違いない!」
今まで外してきたムツキがあまりにも自信満々にしているので、2人のナジュミネが少し不安気味になる。
「旦那様がやけに自信たっぷりだな……」
「ま、まあ、当たり前だ。妾が本物だと分かったのだから、自信もあるというものだ」
やがて、ムツキは2人を見据えてゆっくりと口を開く。
「あー、うん、2人とも、そろそろ戻って、謝った方がいいぞ?」
ムツキは2人のナジュミネの奥の方に手を向ける。自信満々に見せていた彼の笑顔はどこかぎこちない感じだ。
「へ?」
「え?」
2人のナジュミネがゆっくりと後ろを振り返る。そこには笑顔ながらも青筋が目立つナジュミネが仁王立ちで扉の前にいたのだった。そのナジュミネはいつもの軍服ではないものの、白い半袖Tシャツに赤い半ズボンという部屋着に着替えており、露出は少し抑えめだった。
「メイリ……キルバギリー……妾に変身して、旦那様にちょっかいを出したな……。しかも、妾の姿でイチャイチャしようなどと……」
扉前のナジュミネの怒りが沸々とし始める中、最初に入ってきたナジュミネがムツキに抱き着いて、自身の胸を彼の身体に押し付けながら、舌をちろっと出した。
「……積極的な自分を見て羨ましい?」
「あ、メイリさん、それ以上はよしなさい」
ムツキが手で自身の顔を覆う。やってしまったと言わんばかりに、抱き着いてきている本当はメイリであろうナジュミネの方を見る。
「あーあ……」
「っ! よもや……よもや……今、この時に、妾をさらにからかう気概をメイリが持ち合わせていたとはな……。ふふふ……ふははははは……今日と言う今日は軽い説教では済まさんぞ!」
ムツキの部屋の温度が数度上がる。彼は温度を下げようとするが、局所的な操作だと時間がかかるために部屋の温度を下げようとしても上がってしまう。
ナジュミネを怒らせてはいけない。ちょっとやそっとのことでは怒らないことが多い彼女もムツキが絡むと急に沸点が低くなる。
「あー、ナジュ、ほどほどにな?」
この数日でムツキが分かったことは、ナジュミネをほどよくからかえるのはリゥパくらいである。サラフェとコイハはからかう気を起こさず、メイリはコイハの制止を振り切ってしょっちゅうからかって怒られている。キルバギリーは良くも悪くも周りに合わせやすい性格なのか、メイリと結託すると高確率で怒られている。
「あわわ! ごめんなさい! ちょっとした遊び心で!」
最初に来たナジュミネがメイリになった。思ったよりも怖くなってしまったからか、彼女がさらにムツキに身体を寄せるので、よりボリュームのある彼女の胸が彼の身体に押し付けられる。
次に来たナジュミネがキルバギリーになった。キルバギリーは直立不動になる。
「すみません、ナジュミネさん。メイリさんに唆されて……」
「あ! 自分だけ逃げようなんてズルい!」
「いえ、これは経緯の説明です」
メイリとキルバギリーが言い争いを始めたため、ついにナジュミネの怒りが頂点に達する。ナジュミネの髪の毛が逆立ち、まるで揺らめく炎のようだった。
「やった時点で2人とも同罪だっ!」
「ご、ごめんなさい!」
「すみません!」
メイリもムツキから離れて、キルバギリーの隣に立ち、2人して俯き加減で突っ立つ。
「……まあまあ、そんなに怒らないでやってくれ。ほら、ナジュ、おいで」
「む」
ムツキは仲裁のために、ナジュミネを招き寄せる。彼女は怒りの形相から一瞬にして嬉しそうな顔に変わって、そのまま彼の胸元へ引き寄せられる。彼はその後、ゆっくりと彼女の頭を撫で始めた。
「むむむ……仕方ない。旦那様の顔に免じて許してやろう。2人とも旦那様に感謝するのだぞ。んふふ……」
実際のところ、このからかいがコミュニケーションの潤滑油であることも知っているので、ナジュミネも息抜きがてらに付き合っている節がある。ただし、ムツキが絡み過ぎる場合は除く。
「ほら、2人もおいで。そんな悲しい顔をしたままじゃ、俺も悲しい」
「ダーリン、ありがとう!」
「マスター、ありがとうございます」
「む」
ムツキは猫が踏まれないように動かしつつ、メイリとキルバギリーも招き寄せて頭を撫でる。ナジュミネは少し思うところがあったが、真ん中の良いポジションにいることもあり、何か言うにまでは至らなかった。
「しかし、本当によく変身できているな。見た目はもちろん、魔力の質も分からないくらい同じだな」
「うーん。僕の方が変化自体はほんの少しだけ上手なんだけど、戦闘力がないから、キルバギリーみたいに戦いの真似まではできないかな」
「私はだいたいの真似ができますが、真似した人の方が強いものについては私なりの出力しかできません」
「それでもすごいよ、2人とも」
ムツキはナジュミネを撫でつつ、2人を称賛する。
「今度、また2人とも姐さんに変化して、夜に姐さん3人なんてどうかな?」
「……頭が混乱しそうだ。それぞれの回数を間違えそうだ。そうすると、ナジュに怒られそうだ」
「妾は……満足すれば、怒りなどはしないぞ?」
「そうなったら……がんばるか」
想像するだけで大変になりそうだと思うムツキであった。