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【第2部】最強転生者はもふもふスローライフにしがみつく!

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【第2部】最強転生者はもふもふスローライフにしがみつく!

51 - 【第3章】2-38. 新しい仲間もいるので生活スタイルが少し変わってきた(3/4)

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2023年08月05日

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ムツキが1階に降りると、リゥパがかなり早めの朝食をとっていた。その横でケットが彼が起きて来たのを見て、台所へ料理を取りに行く。


「おはよう、ムッちゃん」


「おはよう、リゥパ。ん。リゥパ? この時間にリゥパはちょっとだけ珍しいな」


 リゥパは既に寝間着から着替え終わっており、樹海に入るための長袖長ズボンという無難な出で立ちだった。


「ごちそうさま。見れば分かると思うけれど、今日はちょっと帰省しないといけなくなって。ルーヴァにばかり行かせ続けたから、パパがお呼びなのよ」


「そうか。気を付けて。アルやルーヴァは一緒か?」


 アルはここのところ、樹海内の魔物警戒で働き詰めになっている。以前の大きな魔物騒ぎ以降、魔物の出方が少しおかしいようだ。


 ルーヴァはここ最近、樹海にあるエルフの里もしくはエルフの村と呼ばれているリゥパの故郷とここを往復し続けている。


「そうよ。もう、いくら、私が可愛いからって、そんな過保護じゃなくてもいいのよ?」


「魔物を見かけたら、勝手に倒しに行くんじゃないぞ?」


「待って。その心配の仕方は、やんちゃな子どもに対する心配の仕方じゃない? これじゃ、妻に対する心配じゃないわよね?」


 ムツキの言い方に引っ掛かったのか、リゥパは少しギロリと彼を睨み付ける。思わず、彼は目を逸らす。


「……そんなことはない。リゥパは頑張り屋さんだから心配なんだ」


「ムッちゃん、少し上手になったようだけど、その言葉がすぐに出ないとダメよ? 後、顔にも一瞬出ているからね? ナジュミネはともかく、私には分かるから」


 小さく溜め息を吐きつつもリゥパは表情を笑顔に変えて、何事もなかったかのように楽しそうに喋る。


「ごめん。でも」


「心配してくれているのは分かっているわ。ありがとう。本当はここでぎゅーってしたいところだけど、今日は急ぐから、また今度ね♪」


 リゥパは踵を返し、ムツキの方を見ずに手を振り、洗面所へと向かおうとする。


「さすが姉さん女房だ」


 リゥパは踵を返し、ムツキの方に至近距離まで近寄り、彼の両頬に手を当てる。


「今、何て言ったのかしら? 私の幻聴かしら? んー?」


「な、何も言ってない……です……」


 リゥパに年齢を感じさせることを話すのは、ムツキでさえも許されない。おそらく、彼女はユウでさえも許しはしないだろうが、ユウもまた年齢を気にするタイプなので、お互いに暗黙の了解ができている。


「……よろしい♪」


 今度こそリゥパが洗面所へと向かい、代わってサラフェが現れた。


「……ムツキさん、おはようございます」


「おはよう、サラフェ」


 2人はまだぎこちない。正確には、サラフェがぎこちないので、ムツキも出方を窺っている。彼女は気持ちの整理がついていないのか、まだ彼としていない。彼は初々しい恋愛感情を育むような気持ちになっているのか、今今それでもいいと思っている。


「キルバギリーを見ませんでしたか?」


「キルバギリーなら、さっき会ったけど?」


 サラフェは口に指を当て、何かを考えるように瞳を上に向けた後にムツキを見つめる。


「そうでしたか。朝も早くからメイリさんに連れて行かれていたので……。何か急用だったのでしょうけど、今日は何人かを連れてくる予定ですから支度もしないといけません。なので、見つけ次第回収しようかと」


 メイリの急用がナジュミネをからかうためと分かったら、メイリがサラフェからも怒られるだろうと思い、ムツキは喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。


「まあ、もうそろそろ戻ってくるんじゃないか」


「そうですか」


 そのようなやり取りをしていると、ケットと猫たちが朝食を運んできた。


「ご主人。ここにご飯を置いておくニャ」


 ケットはそう言うと、猫たちと一緒にささっと台所へと戻っていく。


「あ、ありがとう」


 ムツキは誰に食べさせてもらおうかと考えていると、サラフェが小さな咳ばらいをする。


「こほん。さて、では、ムツキさん、そこに座ってください」


 サラフェが急にムツキの椅子を指し示し、彼に座るように言い放つ。


「ん? どうした?」


「今日の朝食は……サラフェがムツキさんにご飯を与えましょう」


 サラフェが少し顔を赤らめる。


「…………」


 ムツキは無言でサラフェをまじまじと見る。あまりにも彼が凝視するので、彼女は胸をドキドキさせながらも口を開く。


「……な、なんですか?」


「メイリやキルバギリーが変身しているのか?」


 サラフェの表情が一瞬で冷たくなった。ムツキはその表情の変化に気付き慌てる。


「……失礼な」


「あ、いや、その、すまん、本物か。いや、面倒くさがりのサラフェが珍しいと思って」


 サラフェはその一言に少しカチンと来るも、話が一向に進まないので、その感情を捨て置いた。彼女は無表情でいる。


「皆さんがきちんとなさっているのに、サラフェだけしないのは協調性に欠けてしまっていると思っただけです。嫌ならいいです。あげません。ご自分でどうぞ」


「えーっと、自分じゃできないんだ。悪いけど、お願いできるかな?」


 ムツキはそう言うと、自分から椅子に座り込んで、サラフェを待ち始める。彼女もそこまでされては、一度提案したこともあってか、断ることもなく彼の隣に座る。


「初めからそう言えばいいのです。あーん」


 サラフェはスプーンを手に取り、ムツキの目の前にある冷製スープを彼の口元へと運ぶ。


「あーん」


 ムツキがそのスプーンをパクっとした瞬間、サラフェは母性に似た新たな感情が芽生えたような気がした。彼女はもっとあげたいという気持ちになると同時に、彼のスキルの影響でおかしくなっているだけという気持ちも保つ。


「美味しいですか?」


「美味しいよ」


 ムツキが笑う。サラフェはドキッとする。彼女はスキルの影響だと自分に言い聞かせるも、彼への愛しさが滲み出始めていて、ごくごく自然な笑顔を彼に向ける。


「それはよかったです」


 そんなムツキとサラフェの仲睦まじい光景を見つめる3対の目があった。ナジュミネ、メイリ、キルバギリーが台所から覗いている。


「今日は姐さんの番だったんじゃ?」


 ナジュミネは首を縦に振った後に、首を横に振る。


「そうなのだが、これでいい。あのサラフェが昨夜自ら申し出たのだ。その意志を汲まずして、格上の妻とは名乗れまい」


「さすがナジュミネさんですね」


 ナジュミネの言葉に感動したキルバギリーは素直に彼女を称賛する。


「もちろん、妾がしたくなくてサラフェに押し付けたわけじゃないぞ!」


「誰もそんなこと思いませんよ……」


 変な心配をするナジュミネに、キルバギリーは少し呆れたような声色で返す。


「それはともかく、覗きは良くニャいと思うニャ……。あと、一緒にご飯を食べてくれた方が片付けも楽ニャ。ついでに、コイハさんも呼んできてほしいニャ」


 その3対の目の後ろで、ケットが呆れた目で彼女たちを見つめていた。

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