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「そして、その歪んだ精神で見る夢は勿論、恐ろしく偽りの重なりで精神が強引に歪んでしまって、恐ろしい悪夢となる。そこで、死んでしまうと。恐らく本当の現実の世界で、残酷過ぎる死。或いは廃人と言った方がよいか。どちらでもただでは済まない。何故ならそんな体験の中、死んでしまっては……精神が持たないからだ」
「……怖いですねその仮説は。あれ? では今の世界で出会う人達は?」
浮浪者はにっこりして、
「そうなんだ。例えば全人類が同じく精神をもともと歪ませられているとしたら、それならば、何かで共通した歪んだ虚構の中にいる……」
浮浪者は顎を触り、
「それは一人の夢であるが、全員の共通する夢。普遍的な夢の中にいる。その中で、皆んなと出会うのだとわしは考える。つまりは、一人ひとりの夢なのだが、みんな、同じ虚構の中にいるのだ。そのなかで、本当の現実は……」
「ちょっと、待って下さい!つまりは……」
私はかなり考えたが、霧画の話に似通っていることが解っただけだった。
「元々は一人ずつ夢を見ているのだけど、その夢の中でも一人で、でも、夢自体は共通していて……?つまり……?」
私はひどく混乱した。
「つまり、一人の夢(虚構)なんだけど、全員眠っているから、同じ大きな夢で出会う。ですよね? そして、その中で大きな夢自体が今は悪夢になっている。他の人たちも同じ条件で現実のベッドの中にいる……かな?」
安浦が大学の講義を受けているような対応をしている。……初めて見た。
「そうだ。結論は、みんなと同じ夢。虚構の世界にいる。が、本当は全員一人で寝て普遍的な夢を見ている」
ディオはゴミ箱から素早くサイダーを取り出し、
「わしは本当の現実の世界では今は眠っている。だが、今はこのサイダーをこの虚構の世界で手で持っている。はてさて、何故持った感触があるか、それは、現実の世界でも持っているからじゃ。わしの実物は眠っていながら、ベッドから起き上がり、君たちやコンビニの店員と夢遊病のように話したり会ったりしているのだ。答えは、この虚構の世界では全員眠っているのだが、眠りながら日常生活を送っているのじゃ」
私の頭はとても直視できないほどこんがらがった。けれど、不思議と解った感じがする。ここへ来て、小さなテントで苦手な勉強をするはめになるとは……。
「ふんふん」
安浦って、確か理数系だったはずじゃ……。
つまり、この老人は悪夢の世界を虚構と捉えているんだと思う。そして、夢の世界ではなくて、虚構の世界で人々が暮らしている。それも眠りながら。